第231話
次の階層に降りるとそこは他のダンジョンと同じように洞窟の広場、セーフティエリアになっていた。
壁際には数組の探索者たちが休憩を取っている姿があった。
私たちはそのままセーフティエリアを抜けて奥へと進んで行く。
通路を抜けると、再び視界が開けて森林が広がっているエリアに出た。
木々の合間から差し込む光が足元の草を柔らかく照らしている。
「また探すねー」
シルフィが再び風のサーチ魔法を使い階段の場所を探り当てる。
そして「こっちー!」と声をあげて走り出し、私とイルがその後を追う。
階段を見つけては降り、また次の階層でサーチ魔法を使う。
そんなことを続けて中層、下層と進んで行く。
下層まで来ると探索者は少なく、危険と言われる下層なのにセーフティエリアで休まずに走り抜けて行く私たちを見て驚いた顔をしている人たちもいた。
ボスだけを倒して進んで行き、私は下層最後のボスエリアの前で足を止め、二人に声をかけた。
「このボスを倒したら一旦ダンジョンを出てお昼にしましょうか。時間もそろそろお昼だし」
「賛成」
「お腹すいたー!」
駆け抜けてきたとはいえ、かなりの階層を降りてきたのでそれなりに時間はかかっている。
まもなく正午になろうかという頃合いだった。
森林ダンジョンのボスエリアは周囲をツタの絡まる壁に囲われており、正面にある大きな扉から中に入る仕組みになっている。
壁のない上の方から入る事は出来ないのかというと、そこには不可視のバリアが張られていて上から直接入ることは出来ない。
「それじゃ行くわよ」
私は扉に手をかけ押し開く。
扉を開けると中から濃密な魔力が流れてくる。
扉をくぐりボスエリアに足を踏み入れるとすぐに大きな雄叫びが響き渡った。
耳をつんざくようなその咆哮の主を探して奥を見ると、ボスらしき大型の猿が一匹、そしてその周りを取り囲むように小型の猿が複数匹、こちらを威嚇していた。
「木の上にも何匹かいるねー」
シルフィが言う通り、木の枝の上にも数匹の猿が身を潜めていて今にも飛びかかろうとしている。
「大きいのやる」
イルが短く宣言すると、
「じゃあ、あたしは周りのやるねー!」
と言い、シルフィは地面を蹴って駆け出した。
それと同時に木の上から猿がシルフィめがけて飛びかかる。
さらにボス猿の周りにいた取り巻きの猿たちも一斉にシルフィへと向かっていく。
「まとめて吹き飛んじゃえー!」
シルフィが両手を掲げると彼女の周囲に鋭い風の刃が無数に生まれ、飛びかかってきたサルたちを次々と切り刻んでいく。
その光景にボス猿が動揺して目を奪われている隙にイルが一気に距離を詰めていた。
収納魔法から取り出した大きな戦斧を両手で握りしめ、ボス猿の目の前で縦に振り下ろす。
斧はボス猿を頭から真っ二つに割り、地面をえぐるような重い音が響いた。
ボス猿は断末魔の叫びを上げる間もなく崩れ落ちていく。
シルフィの方もすべての猿を倒し終えたようで軽やかにこちらへと戻ってきた。
「終わったよー」
「こっちも」
戦闘が終わるとボスエリアの奥にあるツタが左右に割れて次の階層へと降りる階段と宝箱が現れた。
モンスターの素材と宝箱のアイテムを回収して、
「それじゃ、いったんダンジョンを出てお昼にしましょうか」
と言い、私たちは階段を降りてセーフティエリアに入り、そこにある転送板に手を触れ、ダンジョンの一階へと移動した。




