第229話
「行ってきます」
私、イル、シルフィの三人で声を揃えて言い、後ろから「行ってらっしゃい」と言う声を聞きながら家を出発した。
フォノンのいつものダンジョンは家から近い場所にあるのだが、今から向かうダンジョンはフォノンから少し離れた場所にある。
とはいえ歩いて行けない距離でもないのでのんびりと街道を歩くことにした。
舗装された街道を三人で並んで歩いていると、シルフィが大きく伸びをしながら言った。
「魔の森ではよく歩いているけど、普通の道をゆったり歩くのは久しぶりだなぁ」
「そうね、私もだわ」
日本の街を歩き回ったり、ラキナの空を飛んだりはしていたが、こうやってラキナの街道を歩くのは私も久しぶりだった。
人々が行き交う平原の続く道を歩いてゆく。
冒険者のパーティの歩く音、荷車を引く商人から聞こえる馬の蹄の音。
穏やかで平和な風景が広がっていて、気持ちが良い。
「たまにはこういうのも悪くないわね」
「うん、よい」
私が呟くとイルが頷きながら同意した。
しばらく歩いていると、道が二手に分かれる場所に出た。
看板が立っており、右は街へ、左はダンジョンへと矢印が書かれている。
「こっちね」
私たちはダンジョン方面の道へと足を向けた。
さらに少し歩くと、平原の向こうに大きな建物、ダンジョンの入口を管理する探索者ギルドの支部が見えてきた。
「さてと、中に入りましょうか」
私は二人にそう声をかけ、ギルドへと入る。
ギルドの中に入るとフォノンの街の一番近くにあるダンジョンのギルドに比べれば規模は小さいものの、それでも建物内部はそれなりの大きさがあった。
ざっと見渡してみると、スマートフォンのショップは無いようだが、探索者向けの食事処や衣服のショップは営業しているようだった。
以前このダンジョンに来たことがあるが、その時の記憶と比べるとだいぶ雰囲気が違う。
ここのダンジョンは水棲のモンスターが出るダンジョンで湖に囲まれた道を進んでいく構造になっている。
水面下から突然攻撃してくるモンスターが多く、探索者たちの間ではあまり人気が無かったはずだ。
「人、いっぱい」
「前は誰も居なかったのにねー!」
イルとシルフィも同じ事を思っていたようで、そう言ってきた。
「そうね、結構人がいるわね。日本の森林ダンジョンと繋がったから、トレント目当てでそっちへ行く探索者が増えたのかもね」
私がそう言うと、シルフィが周囲を見回しながら「かもねー」と同意する。
そんな事を話しながら、私たちはギルドの奥にあるダンジョン入口の受付へと向かった。




