第227話
魔女の里へと戻って来た私たちは建物に入り、そのまま階段を上って三階のリオヴィシアの部屋へと向かった。
部屋の前に立ち、扉をノックする。
「リオヴィシア、戻ったわよ」
「は〜い、どうぞ〜」
中からのんびりとした声が聞こえてきたので扉を開けて中へと入る。
リオヴィシアは先ほどと同じように机に向かっていたが私たちの姿を見ると、また椅子ごとくるりとこちらに向き直った。
「あら〜もう戻ったの〜早かったわね〜」
「うん、とりあえずダンジョンまで行って中に入って見てきたわよ」
「そう〜、それで〜どうだった〜?」
リオヴィシアは机に肘をついて話を聞く体勢に入ったので、私たちはソファに腰を下ろし報告を始める事にした。
「とりあえず結論から言うと、近くの国のダンジョンからは地球には行けないみたいよ」
「あら〜、そうなの〜?」
「なんでも、受付の人の話だと、ダンジョンで繋がっている地球の国と今争っているみたいでゲートは通れないみたいなの、ダンジョンに入って直接見てきたらゲートの前には兵士が立っていて、受付の人が言うように、とても通れる雰囲気じゃなかったわ」
「なんかギルドのサイトを見るとどこのダンジョンがどこの国と繋がっているか調べられるらしいよ」
私とフローラが代わる代わる説明をすると、リオヴィシアは「なるほど〜」と呟いて少しだけ目を細めた。
「それは〜面倒なことになっているわね〜。地球に繋がっているダンジョンは〜他にもあるから〜どこから行くか〜考えないと〜いけないわね〜」
「そうね」
私は頷き、ソファに背を預けた。
フローラが腕を組みながら、少し考えるような表情を浮かべて口を開いた。
「さらに遠くのダンジョンから地球に行くことになるなら、どうせ飛行できる精霊持ちが行くことになるんでしょ?」
「そうね〜」
「だったら、いっそ日本に行けば良いんじゃないかしら?」
「日本に?」
フローラの提案に私は首を傾げる。
「アルタニヤ王国と日本は交流が盛んだから行きやすいんでしょ?それに私が行く時に受けた講習は分かりやすくて良かったわ。きちんと行き来が整備されている国を知っているんだし、行くならそこで良いんじゃない?」
「たしかにそうね、他の国がどういう事をしているか分からないけど、日本なら行きやすいわね」
「なるほど〜、それなら〜アルタニヤ王国から行くのが〜良さそうね〜」
私がそう言ってリオヴィシアの方を見ると、彼女もゆったりと頷きながら賛成してくれた。
「そういえば〜、スマートフォンって〜契約が必要って〜言ってたけど〜、それって〜一気に何個も〜契約って〜出来るの〜?」
リオヴィシアの質問に私は、
「どうなんだろう……」
と首をかしげる。
「一気に何個も契約できるかは分からないけど、気になるならスマートフォンの販売店に聞いてみたら?アルタニヤ王国側の探索者ギルドの中にも販売店があるから」
「そっか〜。なら〜聞いてきてもらおうかな〜」
リオヴィシアは机の上に置いてあったメモに何やらさらさらと書き込み、
「新しい事が増えて〜楽しいわ〜」
とニコニコしていた。
「さてと、私はそろそろ帰ろうかな」
私がそう切り出すと、リオヴィシアは途端に子供のように口をとがらせた。
「え〜、もう帰っちゃうの〜?」
「やること終わったからね」
私が苦笑しながら言うとリオヴィシアは仕方なさそうに肩をすくめてから、柔らかな笑みを浮かべた。
「レーナちゃんには〜日本のことで〜これから聞くことが〜増えると思うから〜よろしくね〜」
「ええ、分かったわ」
「私もまた遊びに行くからね」
フローラが軽く手を挙げてそう言ってくる。
「うん、いつでも来ていいわよ。それじゃ二人ともまたね」
「は〜い、またね〜」
「ええ、またねレーナ」
私は小さく手を振ってリオヴィシアの部屋を後にした。
廊下を歩き階段を下りて一階へ。
食堂の前を通り過ぎ建物の入口から外へ出ると、もうすっかり日は高く昇っていて森の中は木漏れ日で明るく照らされていた。
私は収納魔法から箒を取り出しそれに座る。
魔力で覆いゆっくりと地面から浮かび上がり高度を上げていく。
眼下に魔女の里の建物を一瞥してから、私は箒を前へと進め魔女の森を後にした。




