第226話
「色々教えてくれてありがとう」
私がお礼を言うと受付の男性はにかっと笑って手を振った。
「おう!気をつけてな」
彼の見送りの言葉を背に私とフローラはダンジョンの中へ足を踏み入れた。
入ってすぐの広間はアルタニヤ王国のダンジョンと同じように多くの人でごった返している。
壁際には簡易的な露店が立ち並び探索者たちが休憩を取ったり情報交換をしたりしている光景もよく似ていた。
しかし、一つだけ決定的に違う場所があった。
広間の端の方の通路に頑丈そうな鉄製の扉が設置されており、その前に兵士たちが立っている。
彼らは明らかに探索者ではない見た目だった。
全員が同じ規格で作られた鎧を身に着けており胸の部分には何かの紋章が刻まれている。
おそらくこの国の正規兵だろう。
「あそこが地球に繋がっているゲートなんだろうね」
「ええ、そのようね」
私が小声で言うとフローラも小さくうなずいた。
兵士たちの厳しい表情からもただならぬ警戒ぶりが伝わってくる。
国同士が争っているという話は本当のようだ。
私たちはその場でしばらく様子を見てから、来た道を引き返し再び外へと出た。
外へ出ると、先ほどの受付の男性がこちらに気づいて声をかけてきた。
「おう、早かったな。もう戻ってきたのか?」
「地球へのゲートを見に来ただけだからね」
私がそう答えると、男性は「そうなのか」と納得したようにうなずいた。
「そういえばよ、他の国でもこういう争いが起きている国はあるからな。あんたたちみたいにスマートフォンを持っているならギルドのサイトを見ると便利だぞ。どこのダンジョンがどこの国と繋がっているかとか、今どんな状況かとかそういう情報がまとまってるからよ」
「そうなんだ、教えてくれてありがとう」
私が礼を言うと男性はふと遠くを見つめるような目つきになり、ため息混じりにぼやき始めた。
「あっちから攻めてくる国もあれば、こっちから攻める国もある。国の上の奴らは何を考えているんだろうな……俺たちからすりゃ、争いなんて何の得にもならねえってのによ」
その言葉には、現場で働く者ならではのやりきれなさが滲んでいた。
「じゃあ私たちは行くわね。頑張ってね」
「おう、あんたたちも気をつけてな!」
受付の男性と別れて、私たちはダンジョンの賑わいを背に歩き出した。
ダンジョンから十分に離れたところで立ち止まり、私は収納魔法から箒を取り出す。
フローラも大きな鳥型の精霊を呼び出し、その背に跨った。
「それじゃ、帰りましょうか」
「ええ」
二人で空へと舞い上がり、来た道を戻るように魔女の里へと向かって飛び立った。




