第225話
ダンジョンに到着すると、空から見た通り探索者たちで賑わっており、ダンジョンの前は活気に溢れていた。
武器を磨く者、仲間と作戦を練る者、そして商人たちの威勢のいい掛け声が飛び交い、まさに冒険の拠点といった雰囲気だ。
私とフローラがダンジョンへ入ろうと入口へ歩いていくとダンジョン入口に受付場所があり、職員が数名立っていた。
私は探索者カードを取り出して提示すると、ギルド職員の男性が探索者カードをじっと見つめ、驚いたように目を丸くした。
「おっ、探索者カードってことはあんたたち他国から来たのか?」
その問いかけに、私は軽くうなずいて、なぜそれだけで他国から来たと分かったのか気になったので、
「どうして、探索者カードを見ただけで他国から来たって分かったんですか?」
と尋ねてみた。
すると受付の男性は苦笑いを浮かべながら肩をすくめた。
「ああ、それなんだがな、ここはまだ『冒険者ギルド』なんだよ。今後は『探索者ギルド』になる予定ではあるんだがな」
冒険者ギルド。
その言葉に私は思わずフローラと顔を見合わせた。
探索者ギルドではなく冒険者ギルド。
アルタニヤ王国ではすでに冒険者ギルドは探索者ギルドという名称に変わっているが、ここではまだ使われていないらしい。
「どうしてまだ冒険者ギルドなんですか?」
私がさらに問いかけると、受付の男性は少し声を潜めて話し始めた。
「それはな、この国とダンジョンで繋がっている異世界が関わってくるんだが……」
受付の男性は周囲を少し気にしながら、声を潜めて話を続けた。
「探索者ギルドって言うのは、異世界にあるギルドの呼び名だろ?」
その問いかけに、私は素直にうなずく。
「そうですね。地球でのギルドの呼び名ですね」
「そうそう、地球!」
受付の男性は頷くと、表情を曇らせてため息をついた。
「実はな、この国とダンジョンで繋がっている地球の国が争いを起こしてるんだよ。仕掛けて来たのは地球の国なんだがな、そのせいでこの国は地球とまともに交流ができていないんだ」
なるほど、と私は思わずフローラを見る。
フローラも難しい顔で聞いている。
「だからここはまだ『探索者ギルド』って呼び名じゃなくて、昔ながらの『冒険者ギルド』って呼び名のままなんだよ。地球の連中と交流があればとっくに変わってたんだろうがな」
受付の男性は肩をすくめて、やれやれと言った様子で続けた。
「それで、探索者カードを持ってるってことはあんたたちはちゃんと地球と交流のある国から来たんだろうって分かったってわけだ」
「ずいぶん詳しいんですね」
私が素直に感心してそう言うと、受付の男性は少し得意げな表情を浮かべて、腰に手を当てた。
「あんたら、探索者カードを持っているって事は地球にも行った事があるんだろ?」
「ええ、まあ」
私がうなずくと男性は「それなら」と言いながら、懐から何かを取り出した。
それは見覚えのある形、スマートフォンだった。
「一応、ギルドは国とは関係の無い組織で成り立っているからな。ギルド職員にはこのスマートフォンが配られているんだよ」
彼は画面をこちらに向けて軽く振ってみせる。
「それだけじゃない。ギルドの支部にはパソコンも配られていてな、全国の支部と情報共有ができるようになっているんだ。この国が地球と交流できていなくてもギルドだけは独自に情報を仕入れているのさ」
なるほど、と私は納得した。
国同士の関係が悪くてもギルドという組織は別のネットワークで動いているらしい。
世界中のギルド支部と情報共有できているというのは心強い仕組みだ。
「それで、あんたたちはどこの国から来たんだ?」
受付の男性はスマートフォンをしまいながら、改めて私たちに尋ねてきた。
「アルタニヤ王国から来たのよ」
と私が答えると、受付の男性は目を大きく見開いた。
「アルタニヤ王国だって!?そりゃまたずいぶんと遠いところから来たもんだ」
彼は心底驚いた様子で何度かまばたきを繰り返したあと、深いため息をついた。
「アルタニヤ王国は地球との交流が盛んなようだから羨ましいよ。こっちは争いばかりでちっとも進まない。いつになったらあんたの所の国みたいに地球の文化を取り入れられることやら」
彼の言葉には諦めにも似た疲れが滲んでいた。
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「魔女会議の場所」と言っていたのを「魔女の里」に変えました。




