第224話
フローラの部屋の前に着き、扉をノックする。
「フローラ、いる?」
「レーナ?入っていいわよ」
中から聞こえてきた声に扉を開けて部屋へ入ると、フローラは朝早くからゲームをしていたようで、私の姿を見ると手を止めて振り返った。
「どうしたの?」
「実はリオヴィシアに頼まれちゃって。ここの一番近くのダンジョンまで一緒に行ってほしいの」
「ダンジョンに?」
フローラは少し驚いたように目を丸くした。
「うん。この辺りのダンジョンがどこの国と繋がっているのか調べてほしいって。森の中にはないみたいで森を出たところにあるから、フローラに教えてもらってって」
「なるほどね……リオヴィシアがそう言うなら、一緒に行くわよ」
フローラの了承を得たので出発の確認をする。
「さっそく出発しようと思うんだけど、フローラは朝食食べてきた?」
「ええ、もう食べてきたからすぐに出発しても大丈夫よ」
「そう、じゃあ行きましょうか」
フローラはゲーム機を片付け立ち上がると、身支度を整えて二人で部屋を出た。
建物の廊下を歩き階段を下り食堂の前を通り過ぎて入口へ向かう。
外に出ると、朝の木漏れ日が優しく地面を照らしていた。
「ダンジョンまでどのくらいかかるの?」
「森の出口からそう遠くない場所にあるわ。歩いたら数日はかかるから、空を飛んで行きましょうか」
「そうね、そうしましょう」
私はフローラの言葉に頷き、収納魔法から箒を取り出し、それに跨って浮かび上がる。
フローラも大きな鳥型の精霊を呼び出しその背中に軽やかに飛び乗った。
「こっちよ」
フローラは振り返り私にそう言うと、大きな鳥型の精霊を空へと向かわせた。
鳥型の精霊は力強く翼をはためかせ、森の木々の上を滑るように飛んでいく。
「あっちよ」
フローラが前方を指差しながら、ぐんぐん先行して飛んでいく。
私も箒で空を蹴るように加速する。
風が心地よく髪を揺らして流れていくのを感じながらフローラの後ろを追って空を進んでいく。
眼下には深い緑の森がどこまでも続いており、その先に森が途切れる場所が見えてきた。
「あの森が途切れた場所から少し行くとダンジョンが見えて来るわ」
フローラはそう言うと鳥型の精霊の向きを変え、森の切れ目へと向かって飛んでいく。
私も箒を傾けてその後を追った。
やがて眼下の森が途切れ、草原が広がり始める。
その先にぽっかりと口を開けた洞窟のようなものが見えてきた。
「あれよ」
フローラが指を差す。
その方向に目を向けると、ダンジョンの入口前には何人もの人々の姿があった。
武器を手にした探索者たち、そして彼らを目当てに露店を広げる商人たちだ。
しかし、その光景を見た私は違和感を覚えた。
アルタニヤ王国のダンジョン前で見かけたような地球の文化の影響を受けた建物などが全く見当たらない。
何かおかしいと思いながらも、私とフローラはダンジョン入口から少し離れた場所に静かに降り立った。




