第151話
翌日、早くに目が覚めた私は、王宮の庭園を散歩していた。
手入れが行き届いた庭園内は色とりどりの花が咲き始め、木漏れ日が揺れて柔らかな風が吹いている。
「おはよう、クラリーヌ」
「あら?お母様、おはようございます」
しばらく歩いていると木陰のベンチに座っているクラリーヌを見つけたので挨拶をした、私の声に気づいたクラリーヌがこちらを向き挨拶を返す。
「朝早くから起きているのね、いつもこんなに早くに起きているの?」
「はい、朝は早くに起きてキュリちゃんと散歩するのが日課なんです」
クラリーヌがそう言うと右の方を見た。
クラリーヌの視線の先を見るとキュリが花壇に向かって魔法を使っていた。
「ああやって毎日この辺りの植物を育てるのが日課なんです」
キュリは魔法を使っての作業が終わったのか、やり切った顔で手で額の汗を拭うような仕草をしていた。
いや……汗なんてかかないでしょ、とツッコミを入れたくなるが気にしないようにしていると、クラリーヌが私の思っている事に気付いたのか、
「キュリちゃんのあの仕草ですけど、ここの庭師が作業が終わると汗を拭っていたのを見て真似しだしたんです」
なるほど、と思っているとキュリがこちらに走ってきて、
「オハヨー」
と手を上に挙げて全身を伸ばして挨拶してきた。
「おはよう」
挨拶を返すとキョロキョロと周りを見た後、
「レーナサマ、キョウ、イルサマ、イナイ?」
何を探しているのかと思えば家にいるイルを探していたらしい。
クラリーヌがまだフォノンの家にいた頃に、キュリは近い属性のイルに懐いていた。
「会いたいの?」
「ウン!」
元気な声で返事をするキュリに可笑しくなりながら召喚陣を発動する。
私の呼びかけにイルから了承の返事が来たので召喚する。
地面が強く光り、中心からイルが現れた。
「イルサマ、オハヨー」
「ん、おはよう」
現れたイルにキュリが勢いよく挨拶をすると、イルも私たちを見ながら挨拶をした。
「イル、おはよう」
「おはようございます、お久しぶりです」
挨拶が終わるとキュリがイルに自分が育てている花を見せたいのか先ほど魔法をかけていた場所へと案内して頑張って説明を始めた。
しゃがんで話を聞いているイルが時折キュリの頭を撫でている。
撫でられたキュリが嬉しそうにしている。
そんな二人を私とクラリーヌは微笑ましく見守っていた。
説明が終わったのか二人がこちらに戻ってきたので、
「キュリの植物はどうだった?」
「元気があって良い感じだった」
私の質問にイルが嬉しそうに頷きながら答えた。
「ソウイエバ、セイレイオウサマガ、イルサマモ、タマニハ、セイレイカイノ、シロマデキテッテ、イッテタ」
「めんどう」
ふと思い出したのかキュリがそんな事をいうと、先ほどまで嬉しそうだったイルが嫌そうな顔で答えた。
精霊界は精霊達が行ける別の次元の世界であり、精霊召喚の際に通る道でもある。
私の精霊達はメイドをしているが精霊の中で最上位の精霊であり、精霊王の座について欲しいと言われているそうなのだが、私のメイド仕事で忙しいからと断っているとの事だった。
前に料理をしている時にサラに軽く聞いてみたが、
「城の中に住むより、こっちでみんなとこうやって過ごして料理を作ってる方が楽しい」
との事だった。
一緒に過ごす事を楽しいと言われて嬉しかった事を思い出す。
精霊王は属性ごとにいるので一体ではなく複数体いる。
実はリアの契約している二体の精霊が風と水の精霊王なのだがフォノンの家にリアが帰ってくる毎にリアに召喚してもらいアクアとシルフィに、
「お姉様、私より強いんですから精霊王になって下さいよ~」
と泣きついていた。
そんな事を思い出しながら見ていると、
「メンドウ、イッテタッテ、ツタエルネー」
「まかせた」
「マカサレマシター」
イルと楽しそうに会話をするキュリの言葉に精霊王の頭を抱える姿が目に浮かんだ。
そんな二人の様子を見ていた私たちの所にメイドが近づいてきて、
「もうそろそろ朝食のお時間です」
と伝えてきた。
「もうそろそろ朝食の時間のようだから行かなきゃいけないけど、イルってクラリーヌとキュリの配信に使えるような植物って持ってる?」
私の質問に少し考えたイルが、
「これ」
と種を渡してきた。
「これって何の種?」
「セクシーダイコン、まだ地球で知名度は無い」
「なるほどね~」
庭園にダイコンはどうなんだろうと思うが、見た目と収穫時に動く事はインパクトがあるので良さそうだ。
なぜ地球で知名度が無い事を知っているのかは分からないが、スマホで地球の植物を調べるついでに調べたのかもしれない。
「じゃあ食事に行くからイルはケイの事よろしくね」
私の言葉にイルが頷いたので召喚を解除してフォノンへと帰ってもらった。
イルの帰還を見届けた私たちは朝食の準備がしてある部屋へと向かった。




