じゃない方と伯爵 (2)
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「あ、あの領主様。お言葉ですが贋金問題は一介の通訳が関わる問題ではないと思うのですが...」
それこそ国レベルの問題である。未亜がどうこう言える話ではない。
ディオゴも身構えたのか、未亜の前に立って厳しい目で領主様を見る。
当の本人はそんな二人の視線をひょうひょうとした態度でかわし、
「いや、なに。別に解決しろとか、出何処がどこか探れとか、密偵みたいな仕事をしろとかは言わないさ。何か気づいたことがあれば言って欲しいだけで」
そう言って肩をすくめながら
「それに王国と国教からの預かりものだ。おいそれと危ないところにおけはしないさ。」
そう言って未亜の方を見てにやりと笑う。そこでようやく未亜は自分が領主様にとってどのような存在であるかに気がついた。
「あ、あの、私は『じゃない方』なので、預かりものでは...」
「ミア嬢。あなたが教会や王宮でどのように扱われたかは聞き及んでいる。そしてこの町に来たのも体よく追い払われたと思っているだろう。それは半分あっていて、半分間違っていると言える。」
未亜は柄にもなくちょっと不服そうな顔をした。その表情を受けて領主様は、
「あなたが『じゃない方』として不当に扱われたことは、本当に申し訳なく思う。俺が謝って済むことでもないが、それは謝罪させてくれ。」
そうやって椅子に座りながらではあるが領主様は頭を下げる。
未亜は慌てて
「領主様。頭を上げてください。」
うむ。そうか。そう言いながらもたっぷり1分ほどあたまを下げてから領主様は頭を上げた。
「不当に扱われたからと言って、ミア嬢の価値が低くなったわけではない。ましてやここは私の領土。私の愛すべき街であり、愛すべき領民達が暮らしているところだ。そして私は自分の懐に入ってきたものは、仲間としてとことん守り切るつもりで領主をやっている。無意識だとしてもこの領を選んでやってきたんだ、損はさせないさ。」
異世界にきて初めて誰かにここにいてもいいと言われて、未亜は不覚にもちょっとうるっときてしまう。その涙を隠すように未亜はへへへと笑う。
「つまりは、俺たちはこの街を守る仲間同士と言うわけだ。頼りにしているぞ、ミア嬢」
そうやってポンっと肩をたたく。そしてここで未亜は自分が丸め込まれたことを悟った。
(あーもう!私のお人よしー)
そう思いながら、はーっと大きな息を一回吐くと、気を取り直して
「分かりました。私もこの街の仲間として最大限お手伝い致します。」
と伝えた。ディオゴがいいのか?と目で訴えてくる。こくん、と未亜はうなづく。
「さて、話がまとまったところで、先程の贋金の話だ。ヴィセンテが来る前にここまでの概要を先に伝えておこうじゃないか。」
領主様の言葉を受けてディオゴは頭をかきながら
「なら、俺から話そう。未亜には伝えていなかったんだけど、3週間前にマレビィア王国の商人と魔石の取引をした際に受け取った金貨の中に若干手触りに違和感があるものがあったんだ。なんか表面がザラザラしていると言うか...そう言う疑いの目でみると若干軽い気もした。で、秤にかけてみたら案の定、他の金貨よりほんの少しだけ軽いことが分かったんだ。で、おやっさんに報告しつつ、俺たちは俺たちで他に贋金がないか調査していたんだ。」
ディオはピンと指でコインを弾くとそのコインはクルクルと回転しながら未亜の手に収まった。
「それが贋金だ」
未亜はそれを触ってみるもあまり差が感じられない。この微妙な差が分かるディオゴはさすがだ。
「わずかだけど金の含有量が少なくなっていてね...」
そう言ってちょっと残念そうに微笑む。ディオゴの発言を受けて領主様は、
「問題なのは、この贋金がもうどれくらいこの国に入っているか分からないところだ。ディオゴ、お前が見つけてくれなかったら、今ごろまだねずみ算式に増えていただろう。この町で食い止められているといいがな...いかんせん、本物とそっくりだからな、見ただけでは判断できないのが痛い。」
未亜は先程渡された贋金を色々方向を変えて触りながら領主様のお話を聞く。
「そして今あるより大きな懸念はその噂が一人歩きした時のことだ。その場合はもうそこにあるのは贋金だろうと本物だろうと関係ない。そう民に思わせるだけでいい。この国の金貨の価値は暴落し、経済に大きな打撃を与える。現にすでに一部の為替レートが大きく動き出そうとしている兆候があると報告を受けているし、パニックになるのも時間の問題だ。」
それはかなりまずい事態だろう。と未亜は思った。かと言ってやっぱり未亜が役に立てそうなことはない。文字でも書いてあれば別だけど...そう思いながら贋コインをじっと見つめる。
(ん?あ、あれ?)
もう一度見つめた後、未亜はパッと手を上げる。
「なんだ?」
領主様は訝しげに未亜を見る。
「領主様、それは、どれが贋金か見分けがつくとおさまりますか。」
領主は少し怪訝そうな顔をして未亜を見つめ続けた。
「すぐに沈静化とはならんだろうがな。簡単に見分けられる方法が分かるだけでもパニックにはなりにくいだろう。」
未亜はうなづき、
「それなら私、多分見分け方わかっちゃったかもしれません。」
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