表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼の友人は彼女の敵  作者: 石月 ひさか
彼の友人
83/90

3

「嘘でしょ?じゃあ毎週、アイツと会っていたわけ?」


「ち、違う!それは取引先の──」


「まだ嘘を吐くの?」


深雪が会社を辞めたのは半年も前だ。


そして電話に出てしまったのはそれよりも前。


少なくとも、半年以上も前から、笹川との付き合いは続いていた事になる。


「今、思い出したわ。私が前に電話で話した相手は笹川だった。だからあんなに怒ったのね?笹川と連絡を取り合ってたから、私に知られたくなかったんでしょう」


「…………」


公一は言葉を詰まらせると、もう誤魔化せないと諦めたのか「そうだよ」と答えた。


「1回は、本当に縁を切ったんだよ。もう2度と連絡をするなって忠告もした。あの時深雪が出た電話は、その話をしてる最中だったんだ。だけどその後、恭平に聞きたい事があったから、俺から連絡を取ったんだ。初めは、一回だけのつもりだった。だけどアイツ、あの時は色々困っていて……。見捨てられなかったんだよ。親友だったんだから」


困っていたというのは、恐らく金の事だろう。


あのやり取りからわかる。


笹川は定期的に、公一に金の無心をしていたに違いない。


公一が稼いだ金を、誰にどんな風に使うかは自由だ。だが、笹川だけは許せなかった。


「私、お願いしたじゃない。笹川とだけは、手を切ってって。公一は会社の社長なのよ?あんな奴、前に会社に乗り込んできた奴と変わらないじゃない。もしも昔の事を脅されでもしたらどうするの?」


「別にどうもしないよ。俺が昔荒れてたのなんて、社員が知っても何とも思わないだろ。それに、いくら恭平でも、そんな馬鹿な真似なんかしないって」


「私にはあんな事をしたのに、なんでそう言いきれるの!?」


あの時の笹川の目は、間違いなく憎い相手を見る時のものだった。


笹川も『近藤』が女である事は知っていたのに、完全に男の敵であると認識している。



「ごめん……。アイツがまだ、あそこまでお前に恨みを持っていたなんて思わなかったんだ。もう2度とアイツにあんな真似はさせないから──」


「いや。絶対に無理。今すぐに笹川と縁を切って。今度こそ必ず……!」


相手が笹川なら、妥協するわけにはいかない。


公一の親友だから仕方ないと受け入れる事は、もうできない。


「どうして恭平の事は、そこまで嫌がるんだ?アイツが堅気じゃないからか?確かに深雪とはあれだけど、俺との関係は悪くないんだ。だから、心配しているような事にはならないって。金だって、何も毎回渡してるわけじゃないんだ」


「そういう問題じゃないの。私が公一の妻である限り、絶対に笹川との関係は認めるわけにはいかない。金の問題じゃない!アイツが私達の近くにいるだけで怖いの!」


叫ぶと、顔を覆ってその場に座り込む。


深雪の口から初めて『怖い』というフレーズが出た事に、公一は驚愕していた。


「お前が、笹川の事怖いって言うのか?アイツに負けないだろ?」


「私が昔のままだったらそうかもしれないわ。でも今は違うの……私、私……」


確かに近藤──いや、深雪としてでも、いつでも近藤に戻れる状態なら、こんな事は言わない。


だがもうそれはできない。何故なら──。


「私、子供ができたかもしれない」


「えっ……」


呟くと、涙を拭いながら腹に触れる。


「まだ病院には行ってないけど……。もしかしたら、妊娠してるかもしれない」


お腹の中に、公一との子供がいるかもしれない。


そんな状態で喧嘩をする事なんてできないし、笹川の様な男が近くにいる状態で子供を育てる自信もない。


だからこそ浮気の可能性や、自分の知らない人間が公一の近くにいる事に過剰に反応してしまったのだ。


「本当なのか?子供ができたなんて。そんなの、何も言ってなかったじゃないか」


「本当にできてるかはわからないわ。まだ、検査してないんだもの。でも、最近きてないの……。だから、もしかしたらって思って」


「……」


公一がどんな表情をしているのか、見るのが怖い。


夫婦なのに、喜んでくれないかもしれないという不安があった。


「だからお願い……。笹川とはもう付き合わないで。アイツが近くにいる状態で子供を育てる事なんてできない。これは、私達家族の平穏の為なの」


「深雪……」


公一は腰を下ろすと、泣いている深雪の体を強く抱き締めた。


「ごめん……。俺、全く気づかなくて──。そうだよな。子供がいたら、恭平が近くにいるなんて怖いよな」


少し考える様な素振りをすると、体を離してスマホを耳に当てる。


誰かに電話をしているらしい。


呼び出し音が切れ、スマホの向こうから男の声がする。


「恭平。もうお前とは付き合いきれない。万が一俺の家や深雪に近付いたら、次は警察を呼ぶ」


言い放って電話を切ると、深雪の体を抱き上げる。


「取り敢えず、週明けに病院ほ行こう。俺も付き添うから」


「うん……。ありがとう」



正直、検査の結果を聞くのはまだ怖い。


どちらの結果でも不安がある。


だがこのまま、知らないフリをしているわけにもいかないのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ