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その晩、2人は早目に就寝した。
公一の腕に抱かれながら、深雪は恐る恐る問う。
「もし、本当に妊娠していたらどうしよう……」
「どうしようって?俺は凄く嬉しいよ」
「嬉しいには嬉しいんだけど……。私、子供をちゃんと育てられるか自信がないの。だって、私自身、ちゃんと育てられなかったし──どうすればいいのか全くわからなくて」
今まで親の愛情というものを感じた事がない。
その為、どうやって愛し、どうやって育てていけば良いのかが全くわからないのだ。
公一は小さく笑うと「そんなの、みんな同じだよ」と言った。
「俺だって両親に育てられたけど、子供の育て方なんてわからないよ。だから夫婦で協力するんだろ?大丈夫だ。俺と深雪の娘なら、絶対美人だし気が強いから」
「娘って……。まだ検査もしてないのに」
思わず笑ってしまう。息子の可能性だってあるのに、なぜ最初から娘だと決めつけているのだろうか。
もしかすると、公一は娘が欲しいのだろうか。
「俺は男世帯で育ったから、娘に憧れるんだよなぁ。家に帰ったら深雪と、深雪に似た娘とで、可愛い女が2人いるんだろ?それってすげー幸せな気がする」
「女の子は父親に似るって聞いたことあるけど」
「そうなのか?じゃあ俺似の可愛い女。どっちにしても最高だろ。息子ならイケメンだな。大きくなったらキャッチボールしたり、キャンプに行ったりもしたいし。で、成人したら一緒に酒を飲みたい。跡も継がせたい」
「気が早すぎるわよ。そんなに楽しみにされると……もし妊娠してなかったらどうしようって不安になるわ」
まだ、生理が2ヶ月程ないだけで、それ以外の自覚症状は全くないのだ。
もしかしたら、ただの生理不順かもしれない。
「妊娠していなかったら、本格的に子作りしようか。まぁ、今までも避妊してたわけじゃないけど……。一応検査とかもして」
「け、検査?それってまさか……不妊治療とかでよくあるやつ?」
ドラマで何度か見た事がある。具体的にどんな治療をしているのかは知らないが、あまり気分が良いものではないだろう。
それに、いくら医師でも他人に下半身を見せるのは嫌だ。
もし妊娠していたら、そうも言っていられないのだろうが。
「不妊治療って。何も不妊だと決まった訳じゃないだろ?ただの検査だよ。俺の体のこととか、妊娠しやすい周期とか」
「……」
幸い深雪には、不妊になるような女としての心当たりはあまりない。
何せ男として過ごしてきたのだから、深雪を女として見て、求める男など皆無だった。
初めての相手だって公一だ。
だが喧嘩で怪我は何度も負っている。
腹を殴られる事は当たり前だし、そのせいで生理の出血が止まらなくなった経験もある。
もしそのせいで不妊になっていたら。そう思うと怖い。
「やっぱり私、怖い。病院に行きたくない」
「なに言ってるんだよ?だから、俺はどっちでも構わないって。それに、まだきてないんだろ?それならなおさら、一度診てもらわなきゃ」
「……」
まさか病院に行くのが、こんなに怖いと思うなんて。
恐らく今日は、眠れる気がしない。
ふと顔を上げると、公一はいつのまにか寝息を立てていた。
小さく息を吐くと、目を閉じる。
どうか子供ができていますように。──できていませんように。
考えてしまうと、矛盾した考えばかりが浮かんでしまう。
公一の寝息を聞きながら、ずっとその事ばかりを考えていた。




