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彼の友人は彼女の敵  作者: 石月 ひさか
疑心暗鬼
80/90

10

「公一!」


名前を呼ぶと、公一と、隣でタバコを吸っていた大学生らしき青年が反応した。


道路を渡って駆け寄ると「深雪!?」と声を上げた。


「どうしたんだよ、一体」


「だって、起きたら姿がなかったから……」


泣きながら抱き付くと、公一は戸惑いながら背中を撫でる。


「コンビニに行ってくるって、メモ残しただろ?」


「そうだけど、でもっ……」


涙目で見上げると、唖然としている大学生の表情が見えた。公一もそれに気づいたらしく、慌ててタバコを消し「早く帰ろう」と肩を抱いて歩き出す。


「ごめんなさい。……目が覚めたら公一がいないから、出掛けてしまったんだと思って」


「だから、コンビニに買い物に来ただけだって。腹へったかなって思って……。何も、泣きながら探しに来ることないだろう?」


苦笑いを浮かべ、軽く頭を撫でる。


また、疑ってしまった。


しかも今度は知らない人に恥ずかしい所を見せてしまった。


いつもはそんな事はないのに、どうして『K』に関してはこんなにムキになってしまうのだろうか。


公一に、自分が知らない人間関係がある事に嫉妬しているのだろうか。


そんな事はないと思うのだが、それ以外思い付かない。


それほどまで、『K』に関しては存在に執着してしまう。


いっそ公一を問い詰め、誰なのか教えてもらおうか。


そうすればすっきりするのに。


マンションに戻り、無言でエレベーターに乗り込むと、公一は心配そうに顔を覗き込んだ。


「もう、具合は大丈夫なのか?」


「え、えぇ。心配させてごめんなさい」


「昨日から、なんか変だよ」


「そうね。……帰ったら聞きたいことがあるの」


公一は黙ってエレベーターのボタンとロックナンバーを押す。


無言で乗るエレベーターは、いつもより長く感じた。


エレベーターを降りると、公一はぽつりと言う。


「取り敢えず、話は飯食ってからにしよう。腹減っただろ?」


「うん。あの、でも大した事じゃないのよ」


「深雪の顔を見てると、そうは思えないよ。さっきの様子も変だったし──あれ。鍵開いてるけど」


このマンションの部屋のドアはオートロックではない。先程部屋を出るときに、うっかり鍵をかけるのを忘れていた事を思い出した。


「ごめんなさい、鍵持たずに出てきちゃって」


「危ないな。俺に会わなかったら閉め出される所だったぞ」


「うん……」


1度は誤魔化されたのだ。


果たしてちゃんと話してくれるだろうか。


『K』という登録を見たと伝えても、喧嘩にならないだろうか。


それが心配でならない。


靴を脱いで部屋に上がり、リビングへ向かう。


ドアを開けると同時に中からあり得ない言葉が聞こえた。

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