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「深雪?大丈夫か?深雪」
湯船の縁に倒れ込んでいると、公一の心配そうな声がした。
逆上せてしまった。
そう答えたかったが、くらくらして上手く言葉にできない。
「大変だ。ちょっと待ってろ。すぐ上げるから」
慌てて湯船から出ると、深雪の体を抱き上げてベッドに運ぶ。
「ごめん。まさか逆上せるなんて思ってなかったから……」
バスタオルを巻かれ、額に冷たいタオルが乗せられた。
「気持ちいい……ありがとう」
「頭いたくないか?何か飲むか?」
「大丈夫。ちょっと、逆上せちゃっただけだから……。すぐに良くなるわ」
まさかあの程度の事でダウンしてしまうなんて思っていなかった。
少し休めばきっと大丈夫だろう。
そう考えつつも、いつの間にか意識を手放していた。
「あれ……?」
目を覚ますと、いつの間にか部屋は真っ暗になっていた。
慌てて飛び起きると、くらりと目眩がして頭を抑える。
「痛たた……。いつの間にこんな時間に」
寝るつもりはなかったのに、数時間は眠ってしまったらしい。
時計を見ると20時半と表示されていた。
風呂に入ったのは15時くらいの為、軽く見ても4時間近くは寝ていたらしい。
「公一?いるの?」
リビングの電気はついていた為、声をかける。しかし返事はない。
「公一?」
立ち上がり、全裸である事に気づき、服を着る。なんだか、人の気配がないような気がし、ふと不安になった。
「公一」
リビングに出る。しかしそこにはやはり公一の姿がない。
「うそ……どこ行ったの」
まさか、約束を破って出掛けてしまったのだろうか。
サイドボードの引き出しを開けると、案の定そこには公一のスマホがなくなっていた。
「どうして……私に隠し事をして……約束を破ってまで会いに行くの?」
今日はずっと家にいると、あんなに約束してくれたのに。
それなのに、深雪を1人残して例の男に会いに行ってしまったのだ。
「公一っ……」
悲しさで涙が浮かぶ。
自分の存在は友人以下なのだろうか。
いつから、自分はその友人に負ける存在になってしまったのだろうか。
そもそも、Kとやらは誰なんだろうか。
しゃくりあげながらテーブルを見る。そこには1枚のメモ用紙が置かれていた。
メモ用紙には『コンビニに行ってくる』とだけ書いてある。
だが、そんなのは嘘に決まっている。
メモ用紙を握り締めると、鍵も持たずに部屋を飛び出した。
コンビニはマンションを出て3分の所にある。
もしも本当にコンビニに行っているのなら、途中で会う筈だ。
帰宅時間と重なった為か、道にはたくさんのサラリーマンが歩いている。
息を切らせながら走る深雪を、何事かと見ているのがわかった。
しかし周りの反応なんて気にしていられない。
コンビニの店舗が見えたとき、店の前の喫煙スペースに公一が立っているのが見えた。




