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彼の友人は彼女の敵  作者: 石月 ひさか
疑心暗鬼
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9

「深雪?大丈夫か?深雪」


湯船の縁に倒れ込んでいると、公一の心配そうな声がした。


逆上せてしまった。


そう答えたかったが、くらくらして上手く言葉にできない。


「大変だ。ちょっと待ってろ。すぐ上げるから」


慌てて湯船から出ると、深雪の体を抱き上げてベッドに運ぶ。


「ごめん。まさか逆上せるなんて思ってなかったから……」


バスタオルを巻かれ、額に冷たいタオルが乗せられた。


「気持ちいい……ありがとう」


「頭いたくないか?何か飲むか?」


「大丈夫。ちょっと、逆上せちゃっただけだから……。すぐに良くなるわ」


まさかあの程度の事でダウンしてしまうなんて思っていなかった。


少し休めばきっと大丈夫だろう。


そう考えつつも、いつの間にか意識を手放していた。


「あれ……?」


目を覚ますと、いつの間にか部屋は真っ暗になっていた。


慌てて飛び起きると、くらりと目眩がして頭を抑える。


「痛たた……。いつの間にこんな時間に」


寝るつもりはなかったのに、数時間は眠ってしまったらしい。


時計を見ると20時半と表示されていた。


風呂に入ったのは15時くらいの為、軽く見ても4時間近くは寝ていたらしい。


「公一?いるの?」


リビングの電気はついていた為、声をかける。しかし返事はない。


「公一?」


立ち上がり、全裸である事に気づき、服を着る。なんだか、人の気配がないような気がし、ふと不安になった。


「公一」


リビングに出る。しかしそこにはやはり公一の姿がない。


「うそ……どこ行ったの」


まさか、約束を破って出掛けてしまったのだろうか。


サイドボードの引き出しを開けると、案の定そこには公一のスマホがなくなっていた。


「どうして……私に隠し事をして……約束を破ってまで会いに行くの?」


今日はずっと家にいると、あんなに約束してくれたのに。


それなのに、深雪を1人残して例の男に会いに行ってしまったのだ。


「公一っ……」


悲しさで涙が浮かぶ。


自分の存在は友人以下なのだろうか。


いつから、自分はその友人に負ける存在になってしまったのだろうか。


そもそも、Kとやらは誰なんだろうか。


しゃくりあげながらテーブルを見る。そこには1枚のメモ用紙が置かれていた。


メモ用紙には『コンビニに行ってくる』とだけ書いてある。


だが、そんなのは嘘に決まっている。


メモ用紙を握り締めると、鍵も持たずに部屋を飛び出した。


コンビニはマンションを出て3分の所にある。


もしも本当にコンビニに行っているのなら、途中で会う筈だ。


帰宅時間と重なった為か、道にはたくさんのサラリーマンが歩いている。


息を切らせながら走る深雪を、何事かと見ているのがわかった。


しかし周りの反応なんて気にしていられない。


コンビニの店舗が見えたとき、店の前の喫煙スペースに公一が立っているのが見えた。

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