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まさか、また怪我をすることになるなんて。
ソファに座りながらテレビを見つめ、深雪は何度目かのため息を吐いた。
先日香ヶ崎につけられた傷のせいで自由に歩き回る事ができず、ただでさえ退屈な日々が余計に暇になってしまった。
後ろでは公一が期間限定で雇ったハウスクリーニングの中年女性が、忙しそうに掃除や洗濯をしている。
手伝おうにもこの足ではただの邪魔になるだけの為、仕方なくソファに座ってテレビを見ているしかない。
「奥様。こちらの洗濯物はいかがいたしますか?」
声をかけられ、松葉杖を使って立ち上がる。
「あ、それは脱衣所の引き出しに」
「あ、立ってはいけませんよ!座っていて下さいね」
女性は無理矢理深雪を座らせる。
「旦那様から言い遣っておりますから。決して奥様に無理はさせませんように」
「無理だなんて。少し歩くくらいなら何も──」
「いえ、いけません。もし傷が開いたら大変ですから。なにか必要なものがありましたら遠慮なくお申し付けください」
洗濯物を持って脱衣所へ向かうと、その足でキッチンへ向かう。恐らく夕食の下拵えだろう。
こんな感じで足の傷が治るまでは、ただ座っているしかない。その為、深雪のストレスは徐々に増えつつあった。
「あの、バルコニーはどうなってますか?」
「問題ありませんよ。先程洗濯物を干しに出ましたが何も」
「そう。よかったわ」
ほっと安堵する。あのあと何日かは香ヶ崎の公一への嫌がらせが続いた。
初めの何日かは例の投下に気づいていなかったが、公一が洗濯をする様になり、休みの日にバルコニーに出て発覚したのだ。
激怒した公一は香ヶ崎に電話で脅しをかけ、マンションの自治体にもセキュリティについてのクレームを入れた。
それ以降は侵入できなくなったらしく、嫌がらせもぱったりと止んだのだ。
「前より退屈だわ。傷が治るまで続くなんて耐えられない……」
思えば以前も、会社に乗り込んできたチンピラに腕を怪我させられた。
しかし幸い利き手ではなかったことと、動き回る事はできた為、そこまで生活に不便はなかった。
だが足は違う。
ハウスクリーニングの女性は良い人だが、家の中に他人がいるのも落ち着かない。
彼女の契約時間は公一が帰ってくるまでだ。
食事は勿論、公一の帰りが遅いときは夜中まででも一緒に居て世話をしてくれる。
ありがたい事ではあるが、息が詰まってしまう。
これはいい加減何とかしてもらわねば。
今日でも公一が帰ったら頼もう。
面白くもなんともないテレビを見ながら、そう決心した。




