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「全く、何なんだよあいつは!?信じらんねぇ」
無事自宅に戻った深雪は、足の治療をしてもらいながら、苦笑いを浮かべた。
馬鹿で無謀な香ヶ崎のおかげで、久しぶりにスリルのある日常と、大きなイベントを体験できた。
それ自体は楽しめたが、また、新たな問題ができてしまった。
「アイツは、強ければ誰でもいいみたいね」
あれだけ恨まれていた香ヶ崎に求婚されるなんて。
「くそっ!アイツに、お前が近藤だって気づかせなきゃ良かった!」
公一は包帯を巻きながらぼやく。
「そうね。でもまさか、こんな事になるなんて予想外だったわ」
香ヶ崎の様な馬鹿な男は一途であり、ずっと公一に想い続けると思っていた。
この状態は、誤算だ。
公一はまだ不満らしく、包帯を巻き終えると、深雪に向かって厳しく言った。
「いいか!香ヶ崎には近づくんじゃないぞ。なんかあったら、すぐに俺に言えよ!」
「わかったわ。所で、どうして居場所がわかったの?」
あの時は答えてもらえなかったが、どうしてもそれが引っ掛かる。
公一は「あぁ」と呟くと、テーブルに置いてあるスマホを見た。
「コンシェルジュから連絡もらったんだ。今みたいなことがあったらと思って、深雪に何かあったら、真っ先に俺に連絡するように言ってあるから」
「そんなことしていたの?知らなかったわ。でも場所は?なんでわかったの?」
確かにあの場所にいたのはコンシェルジュだけだ。
しかし、普通は頼まれても断るか、真っ先に警察に連絡するものではないだろうか。
それに、どんな連絡を受けたのかはわからないが、あの倉庫に辿り着いたのも驚きだ。
公一は気まずそうな表情を浮かべたが、隠し通せないと観念したのか、素直に答えた。
「GPS」
「は?」
「それ、GPSがついてるんだよ」
「嘘!?」
慌ててポケットを探り、鍵を取り出す。ぱっと見、特におかしな所はない。ただのカードキーだ。
「このマンションの鍵には、みんなGPSがついてるの?」
「いや、深雪のだけだ。……正しくは子供用のだけ。最近物騒だから、誘拐とかの為に、子供用にはGPSが内蔵されてるんだよ」
「えっ、これって子供用のなの?」
確かにカードキーには、公一のとは違い、オシャレな花模様が刻印されている。
最初に鍵を見た時に、可愛いからこれにすると選んだのは深雪だ。
まさかこれが子供用だったなんて。
「じゃあ私の行動はみんな公一に筒抜けだったってこと?」
「まぁ、なんかあった時にしか確認しないけど」
「どうして今まで黙ってたのよ」
行動を把握されるのは構わない。どうせ深雪が出掛けるのは買い物くらいだ。
だが、問題は今までそのことを黙っていたということだ。
何か隠したい理由があったからだろう。
公一は目を反らすと、聞こえるか聞こえないかほどの小さな声で答える。
「浮気防止とか」
「はぁ!?浮気防止?私が浮気するとでも思ってたって言うの!?」
それはさすがに心外過ぎる。
毎日毎日公一の為に家事をこなし、暇なのを耐えて家でずっと待っているだけなのに、そんな可能性を心配されていたなんて。
香ヶ崎の件もあり、深雪の怒りは一気に爆発した。
「ふざけた事言いやがって!だったらお前も明日から同じやつ持てよ!それでお互い監視しあってやるからなっ!」
「まぁ、俺はそれでもいいけど……」
「良いわけねぇだろ!よりにもよって浮気防止だァ?ふざけたこと言いやがって……!土下座しろ!」
床を指差すと、公一は渋々手をついて頭を下げた。
「ごめん。疑ってたわけじゃなくて、心配してただけなんだよ。それに今日はそのお陰でお前を助けに行けたんだし──」
「言っとくけど助けられてないからな。私は自分で香ヶ崎を倒したんだよ。大体、お前が来なきゃ、あんな野郎に怪我させられる事もなかったんだ!」
「は?それはないだろ!こっちは無理矢理早退して助けに行ったんだぞ!?」
「来てくれなんて、誰も頼んでない!」
「あぁ、そうか。わかったよ。じゃあお前がどこにいようが、もう知らないからな!」
そう叫ぶと、公一はリビングを出て寝室にこもってしまった。




