表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼の友人は彼女の敵  作者: 石月 ひさか
ライバル
35/90

15


「引く度胸があったのは誉めてやるよ。だけどな、隙ありすぎんだよ」


「は?」


深雪は香ヶ崎の顎を下から掴み、地面に叩きつけた。


ナイフが引かれる瞬間、腕からすり抜けたのだ。


「く、くそっ……!テメェっ……」


気絶はしなかったらしく、まだなお捕らえようと手を伸ばす。


「しぶとい奴。馬鹿がナイフ使ってんじゃねぇよ」


胸ぐらをつかんで頭突きを食らわせると、両足で奴の腹を蹴った。


「ぐあっ!!」


悲鳴を上げ、後ろに吹っ飛んで行った。


仰向けになった香ヶ崎はピクリとも動かない。


今度こそ気絶したらしい。


それを見届けると、深い溜め息を吐き、全身の力を抜いて、倒れ込んだ。



「深雪!!」


頭上から、悲鳴の様な声が響き、公一が駆け寄って来る。


息切れをしている深雪の体を抱き上げると、泣きそうな顔で覗き込んだ。


「大丈夫か!?深雪っ……」


「大丈夫よ。ちょっと、しぐしっちゃったけど」


公一の顔は、今にも泣き出しそうだ。


両手を上げ、頬に触れる。


「泣かないで。私は大丈夫だから。少しだけ、怪我をしただけよ」


傷を負いながらも、なんとか自分で倒すことができた。


あとはこのまま、公一の怒りを香ヶ崎に向けない様にしなければならない。


ズキズキと痛む足に耐え、精一杯の笑みを浮かべ、優しく囁く。


「ねぇ、早く帰りましょう。疲れちゃったわ」


「あぁ……。そうだね」


深雪の努力により、公一の怒りが和らいでいる。


このまま香ヶ崎が余計な事を言わなければ、事なきを得られる。


そう思い、安心していたのだが。



「うぅ………。畜生っ」


奴はしぶといらしく、目を覚ましてしまったのだ。


蹴られた腹を抑えながら身を起こすと、2人を睨みつける。


とたんに公一は怒りを取り戻し、拳を握って立ち上がった。


「テメェ、生きてやがったのか!」


「ちょ、ちょっと!」


せっかく丸く収まったと思っていたのに。


これではまた、海外逃亡の危機だ。


しかし香ヶ崎は、自分がおかれた状況に全く気付いていないのか、ふらふらとこちらに近付いて来た。


「来るんじゃねぇ!殺されてぇのか!?」


臨戦態勢をとり、公一は怒鳴る。


この調子では、もう一戦おきてしまいそうだ。


そう思ったが、深雪にはもう、体力も気力も残っておらず、止めに入る事ができなかった。


「──お前、近藤だったのか。気付かなかった」


眉を寄せ、香ヶ崎はポツリと呟いた。


その表情には、先ほどの様な殺意はない。


彼もまた、気力も体力も使い果たしてしまった様だ。


その様子に、公一も拳を下げ、溜め息を吐いた。


「……あぁ、そうだよ。お前は近藤に喧嘩を売ったんだぜ。この、身の程知らずが」


「だって、気付くわけないだろう」


どうやら、本当に再戦の心配は無さそうだ。


香ヶ崎は初めから、自分が『近藤』に勝てるとは思っていなかったのだろう。


だからこそ昔も、小さな嫌がらせしか仕掛けてこなかったのだ。


そっちの怪我は内々で処理してもらおう。


そうすれば、無事に済む。


そう思ったのだが。



「俺と結婚しよう!」


突然香ヶ崎がこちらに駆け寄り、深雪に抱き付いてきた。


あまりに突然の事で、公一も、何がなんだかわからないらしく、その場に立ち尽くしている。


「はぁ!?な、何言ってんのよ!」


最後の力を振り絞って暴れるが、香ヶ崎は全く引かない。


「お前が好きだ!公一なんかとは別れて、俺と結婚しようぜ!」


「なっ……おい!?」


それにはさすがの公一も声をあげ、深雪から香ヶ崎を引き剥がす。


「テメェは俺が好きなんじゃなかったのかよ!?」


ついさっきまでは、公一を手に入れる為に、深雪を殺そうとしていたのに。


しかし香ヶ崎は、軽く鼻で笑った。


「なんで俺が、男なんか好きになんだよ。気持ち悪ぃな。俺、わかったよ。公一なんかより断然、お前の方が強いんだって!おい、公一。近藤と別れろ!」


「はぁ!?」


どうやら香ヶ崎は、性別関係なく強い人間が好きらしい。


そして今現在、彼の中でのナンバーワンは、深雪になったようだ。


「なんで私が、お前なんかと結婚するんだよ!」


「公一なんか捨てて、俺と結婚しようぜ!」


「………はぁ」


あまりのしつこさに心底呆れ、言葉が出ない。


げんなりしていると、目の前にある香ヶ崎の顔に、公一の堅いパンチが決まった。


再び深雪から引き離され、吹っ飛んで行く。


「テメェみたいな奴に、深雪をやるわけねぇだろ!ほら、行くぞ」


そう言うと、有無をも言わさず深雪を抱き上げ、逃げる様にその場を去った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ