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「ぐっ………!!」
突然男は呻き声を上げ、その場に崩れ落ちる。
残された3人は、一体何が起こったのかわからず、目を丸くしている。
「え!?お前!何しやがった!?」
香ヶ崎は倒れた男と深雪を交互に見ると、悲鳴をあげた。
「だから言ったのに」
深雪は口元に手を当てて笑うと、真っ直ぐに香ヶ崎を見据える。
「香ヶ崎。サシで話しましょうよ。それとも、女とタイマン張れないわけ?」
「うるせぇ!」
荒立てた声が、広い倉庫内に響き渡る。
「おい!なにぼーっとしてんだよ!さっさとその女ヤッちまえよ!テメェ等もタダじゃすまさねぇからな!」
鋭い目で睨まれ、残りの2人の男は僅かに体を震わせた。
「は、はい………!すみません!おい、やるぞ」
「あ、あぁ」
すっかり勢いが殺がれてしまったのか、やる気のない表情で振り返る。
しかし深雪は容赦なく、2人の顔面に強烈な右ストレートを食らわせた。
予想外の反撃に、2人は抵抗する間もなく、その場に倒れた。
深雪は小さく溜め息を吐くと、右手を振りながら香ヶ崎に向き直す。
「ほら、これでタイマン」
「はぁ!?なんだよ………なんなんだよテメェは!」
後ろ盾を一瞬で失った香ヶ崎の声は、僅かに震えている。
深雪は気怠げに首を鳴らすと、ゆっくり歩み寄った。
「だから言ったのに。言うことを聞かないから」
「一体何なんだよ!?」
情けない事に、声が震えている。
深雪は吹き出しそうになるのを堪え、小首を傾げた。
「さっきから、語彙力なさすぎ。ま、これでゆっくり話ができるわね。お前だろ?うちのバルコニーに嫌がらせしまくってんのは。相変わらず中学のガキみたいな事しかできないのね。あんなこと、公一に知られたら益々嫌われるわよ」
「うるせぇ!俺は公一に嫌われてなんてねぇよ!公一は俺のだ!テメェみてぇな女は、そこらの男でもくわえ込んでりゃいいんだよ!!」
「っ!?」
突如右腕が伸び、深雪の頬を殴った。
突然の事に避ける事ができず、数歩よろけてしまった。
その時深雪の中で、何かが切れた。
乱れた髪を掻きあげ、香ヶ崎を睨み上げる。
「『公一は俺の』だぁ?気持ち悪ぃ事言ってんじゃねぇよ!!」
仕返しとばかりに殴り返し、バランスを崩した所に蹴りを入れる。
「う………っ!!」
見事に鳩尾に入ったらしく、香ヶ崎は表情を歪め、地面に転がった。
しかし深雪はそれを追い、胸ぐらを掴んで壁に叩きつける。
「やっぱ弱ぇなァ。ま、ちょうどいいわ。今日で勝負つけようや。テメェみたいな口だけの野郎に、最初から勝ち目なんかねぇんだよ!」
「は、はぁ?マジでなんだよ、お前……」
咳き込みながら、香ヶ崎は深雪の顔をマジマジと眺める。
目の奥に見える『怯え』に気付き、深雪はニヤリと笑った。
「まだわかんねぇの?お前鈍いな」
「はぁ?何がだよ……」
「思い出せねぇなら、思い出させてやるよ」
深雪は徐に香ヶ崎の胸ポケットに手を突っ込み、一本の煙草を取り出した。
それに素早く火をつけ、ゆっくりと煙を吐く。
近付くタバコの火を見た瞬間、香ヶ崎の目が見開かれた。
「嘘だろ。お前、まさか、近藤───」
「深雪っ!」
その瞬間、勢い良くドアが開け放たれ、光が差し込んだ。
その奥に立っている人間を見た瞬間、深雪は手にしていたタバコを落とした。




