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彼の友人は彼女の敵  作者: 石月 ひさか
ライバル
33/90

13

「ぐっ………!!」


突然男は呻き声を上げ、その場に崩れ落ちる。


残された3人は、一体何が起こったのかわからず、目を丸くしている。


「え!?お前!何しやがった!?」


香ヶ崎は倒れた男と深雪を交互に見ると、悲鳴をあげた。


「だから言ったのに」


深雪は口元に手を当てて笑うと、真っ直ぐに香ヶ崎を見据える。


「香ヶ崎。サシで話しましょうよ。それとも、女とタイマン張れないわけ?」


「うるせぇ!」


荒立てた声が、広い倉庫内に響き渡る。


「おい!なにぼーっとしてんだよ!さっさとその女ヤッちまえよ!テメェ等もタダじゃすまさねぇからな!」


鋭い目で睨まれ、残りの2人の男は僅かに体を震わせた。


「は、はい………!すみません!おい、やるぞ」


「あ、あぁ」


すっかり勢いが殺がれてしまったのか、やる気のない表情で振り返る。


しかし深雪は容赦なく、2人の顔面に強烈な右ストレートを食らわせた。


予想外の反撃に、2人は抵抗する間もなく、その場に倒れた。


深雪は小さく溜め息を吐くと、右手を振りながら香ヶ崎に向き直す。


「ほら、これでタイマン」


「はぁ!?なんだよ………なんなんだよテメェは!」


後ろ盾を一瞬で失った香ヶ崎の声は、僅かに震えている。


深雪は気怠げに首を鳴らすと、ゆっくり歩み寄った。


「だから言ったのに。言うことを聞かないから」


「一体何なんだよ!?」


情けない事に、声が震えている。


深雪は吹き出しそうになるのを堪え、小首を傾げた。


「さっきから、語彙力なさすぎ。ま、これでゆっくり話ができるわね。お前だろ?うちのバルコニーに嫌がらせしまくってんのは。相変わらず中学のガキみたいな事しかできないのね。あんなこと、公一に知られたら益々嫌われるわよ」


「うるせぇ!俺は公一に嫌われてなんてねぇよ!公一は俺のだ!テメェみてぇな女は、そこらの男でもくわえ込んでりゃいいんだよ!!」


「っ!?」


突如右腕が伸び、深雪の頬を殴った。


突然の事に避ける事ができず、数歩よろけてしまった。


その時深雪の中で、何かが切れた。


乱れた髪を掻きあげ、香ヶ崎を睨み上げる。


「『公一は俺の』だぁ?気持ち悪ぃ事言ってんじゃねぇよ!!」


仕返しとばかりに殴り返し、バランスを崩した所に蹴りを入れる。


「う………っ!!」


見事に鳩尾に入ったらしく、香ヶ崎は表情を歪め、地面に転がった。


しかし深雪はそれを追い、胸ぐらを掴んで壁に叩きつける。



「やっぱ弱ぇなァ。ま、ちょうどいいわ。今日で勝負つけようや。テメェみたいな口だけの野郎に、最初から勝ち目なんかねぇんだよ!」


「は、はぁ?マジでなんだよ、お前……」


咳き込みながら、香ヶ崎は深雪の顔をマジマジと眺める。


目の奥に見える『怯え』に気付き、深雪はニヤリと笑った。


「まだわかんねぇの?お前鈍いな」


「はぁ?何がだよ……」


「思い出せねぇなら、思い出させてやるよ」


深雪は徐に香ヶ崎の胸ポケットに手を突っ込み、一本の煙草を取り出した。


それに素早く火をつけ、ゆっくりと煙を吐く。


近付くタバコの火を見た瞬間、香ヶ崎の目が見開かれた。


「嘘だろ。お前、まさか、近藤───」


「深雪っ!」


その瞬間、勢い良くドアが開け放たれ、光が差し込んだ。


その奥に立っている人間を見た瞬間、深雪は手にしていたタバコを落とした。


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