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「………どうしよう!」
エレベーターホールに飛び出し、ボタンを押す。
いつもは気にしていなかったドアの開閉や、エレベーターの動きが、やけに遅く感じる。
ぎゅっと両手を強く握り締め、祈る。
どうか、無事でありますように。
最悪の事態にはなりませんように。
体が震え、立っている事ができず、壁にもたれ掛かる。
涙を浮かべながら、じっと点灯している階数表示を見つめ続ける。
1分もしないうちに、エレベーターは1階に到着した。
しかしそれが、妙に長く感じた。
ゆっくりと開くドアに我慢できず、手で無理やりこじ開けると、一直線に玄関ホールに駆け出す。
「どうされたんですか?」
顔馴染みのコンシェルジュの女性が、深雪を見て心配そうに声をかけてきた。
「公一が……旦那が事故にあって、病院から電話が……。もう、どうしたら良いかわからなくて」
泣きながらすがると、コンシェルジュは「えっ」と声を上げた。
「大変……!すぐにタクシーをお呼び致します!ひとまずこちらへ」
近くのソファに腰かける。
コンシェルジュが電話でタクシー会社に電話している声がした。
「お願い、公一……。死なないで。どうか無事でいて」
体が震え、うまく呼吸ができない。
頭を抱えて座り込んでいると、申し訳なさそうな表情をしたコンシェルジュが戻ってきた。
「申し訳ありません。どこのタクシー会社も出払っているらしくて……。私、外で配車の車を──」
「良いわ。私が自分で探してくる」
このままここで待っていたら、パニックを起こしてしまいそうだ。
コンシェルジュの制止を振り切り、外へ出る。
息を切らせながら辺りを見回す。
こんな時に限って、いつもは入居者の交通手段を狙って止まっているタクシーが、1台も見当たらない。
契約している運転手も、今日は休みだ。
「もう!どうしてこんな時にっ」
タクシーは愚か、道には人気がなく、通行人の姿もない。
とりあえず病院に向かいながら車を拾おうと歩みを進めた時、目の前にフルスモークのワゴン車が停車した。
まるで行く手を阻む様な止まり方に眉を寄せ、避けようと迂回する。が、その瞬間、いつの間にか背後から近付いてきた男に、口を塞がれた。
「なっ………!」
その時やっと気付き、振り払おうと体を捩る。
しかし相手の姿を確認する前に、強く鳩尾を殴られ、息が詰まった。
と同時に意識が遠のき、深雪はそのままワゴン車に押し込められてしまった。
素早くドアが閉まると、深雪を乗せたワゴン車は、勢い良く走り去って行く。
「た、大変!」
その一部始終を、追いかけてきたコンシェルジュが目撃していた。
彼女は顔色を変えると、急いでロビーに戻り、電話をかけた。




