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「疲れた。酒が飲めないっていうのは、なかなか辛いな」
部屋に入ると、とたんに公一はネクタイを緩め、ソファに倒れ込む。
「車なんだから、仕方ないでしょう」
その様子を苦笑いを浮かべながら眺め、着替えるために寝室へ向かった。
「なぁ、お腹空かない?」
「え?もう?」
リビングから聞こえた声に、耳を疑った。
ご飯を食べてから、まだ1時間と経っていない。
「なんだかんだで、酒のつまみばっかり頼んでただろう?あんなので、腹いっぱいになんてならないさ」
「仕方ないわねぇ。じゃあ、軽く何か作るわ」
多少はアルコールが抜けたのか、先程よりは気分が良かった。
軽食を作るためにリビングへ戻る。
「?」
ふと、水の様なものが滴る音がし、足を止める。
蛇口が緩んでいるのかと思い視線をやるが、きっちりと閉められており、水一滴落ちていない。
もしかしたらバスルームだろうか。
しかし、やはりそこもキッチンの蛇口と同じ状態だ。
「なに?どうかした?」
訝し気な顔で戻って来た深雪を見て、公一は呑気に問いかける。
「なにか、変な音がしない?」
「変な音?」
呟き、耳を澄ます。しかし、公一には何も聞こえないらしい。
「別にしないよ。どんな音?」
「なんだか、水か何かが落ちてる音みたいな」
「じゃあきっと、雨でも降ってるんじゃない?それより腹減ったよ」
そう言い、公一はリモコンを手にしてテレビをつけた。
電源が入り、音声が届く僅かな間に、再び同じ音がした。
それは水周りではなく、外からしたように感じた。
だが、そのかすかな音は、テレビの音声によってたちまち聞こえなくなった。
帰る時には、雨が降りそうな気配はなかった。
が、公一があまりに腹が減ったとうるさいので、これ以上音について追求するのはやめ、キッチンに戻る。
その間、音は確実に数を増し、ポタリポタリと鳴り響いている。
しかし2人は、これ以上気付く事はなかった。




