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彼の友人は彼女の敵  作者: 石月 ひさか
ライバル
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9

「疲れた。酒が飲めないっていうのは、なかなか辛いな」


部屋に入ると、とたんに公一はネクタイを緩め、ソファに倒れ込む。


「車なんだから、仕方ないでしょう」


その様子を苦笑いを浮かべながら眺め、着替えるために寝室へ向かった。


「なぁ、お腹空かない?」


「え?もう?」


リビングから聞こえた声に、耳を疑った。


ご飯を食べてから、まだ1時間と経っていない。


「なんだかんだで、酒のつまみばっかり頼んでただろう?あんなので、腹いっぱいになんてならないさ」


「仕方ないわねぇ。じゃあ、軽く何か作るわ」


多少はアルコールが抜けたのか、先程よりは気分が良かった。


軽食を作るためにリビングへ戻る。


「?」


ふと、水の様なものが滴る音がし、足を止める。


蛇口が緩んでいるのかと思い視線をやるが、きっちりと閉められており、水一滴落ちていない。


もしかしたらバスルームだろうか。


しかし、やはりそこもキッチンの蛇口と同じ状態だ。


「なに?どうかした?」


訝し気な顔で戻って来た深雪を見て、公一は呑気に問いかける。


「なにか、変な音がしない?」


「変な音?」


呟き、耳を澄ます。しかし、公一には何も聞こえないらしい。


「別にしないよ。どんな音?」


「なんだか、水か何かが落ちてる音みたいな」


「じゃあきっと、雨でも降ってるんじゃない?それより腹減ったよ」


そう言い、公一はリモコンを手にしてテレビをつけた。


電源が入り、音声が届く僅かな間に、再び同じ音がした。


それは水周りではなく、外からしたように感じた。


だが、そのかすかな音は、テレビの音声によってたちまち聞こえなくなった。


帰る時には、雨が降りそうな気配はなかった。


が、公一があまりに腹が減ったとうるさいので、これ以上音について追求するのはやめ、キッチンに戻る。


その間、音は確実に数を増し、ポタリポタリと鳴り響いている。


しかし2人は、これ以上気付く事はなかった。

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