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「それはレッドストライプ。ジャマイカのビールだよ。アンタみたいな女にはその辺のやっすいのがお似合いだけどな」
公一がいなくなったとたん、この豹変ぶりだ。
やはりこの男は昔から変わらない。
眉を寄せながら溜め息を吐く。
すると香ヶ崎は、足を組み、まるで値踏みするかの様に深雪を一瞥した。
「こんなのが公一の妻とはねぇ。あり得ねぇわ。まぁ、アイツは昔から胸のデカイのが好きだったからな。何がいいんだか。あんなのただの下品な脂肪だろ」
頬杖をついてニヤニヤしながら、大きく開いた胸元を指差す。
深雪は黙って香ヶ崎を見ていた。
「アンタそれ豊胸じゃねぇの。中に入ってんのシリコンか?」
「ホウキョウってなんですか?」
聞きなれない言葉に、キョトンとしながら首を傾げる。
香ヶ崎はアテが外れたのが癪だったのか、少し眉を寄せたが、すぐにまた笑いだす。
「ははは。やっぱり頭ん中も軽いみたいだな。言葉知らなさすぎ。学も教養もねぇバカ女なんか、公一には不釣り合いだ。さっさと離婚しろよ、整形女。どーせその顔も弄ってんだろ。見りゃわかる」
「ひどい。私整形なんかじゃありません」
わざと悲し気な声をだし、瞳を潤ませる。
何かにつけて人をこきおろす性格も、女の様に嫉妬深くてネチネチした所も全て昔のまま変わらない。
できれば今すぐブン殴ってやりたいが、ここでカミングアウトをするわけにはいかず、ぐっと耐える。
それをどう判断したのか、香ヶ崎は鼻で笑い飛ばした。
「ふん。まさか泣くのか?やめろよ。こんな場所で泣かれるとメーワクなんだよ。嫌なら帰れ。もともとさ、俺は公一だけを誘ったわけ。なんでアンタも一緒にくっついて来るかなぁ。空気読めねぇのかよ。邪魔なんだよ」
「そんな言い方……。酷いわ」
俯き、テーブルの下で拳を握って耐える。
殴ってやりたい。この根性曲がりの男を。
香ヶ崎は身を乗り出すと、先程までとは別人の様に鋭く凄む。
「オイ、よく聞け。公一に何か言ってみろ。犯すからな。いや、それだけじゃ済まさねぇ。俺の仲間に言って、マワしてやるよ。それが嫌なら黙ってろ。余計な口叩くんじゃねぇぞ」
何が犯すだ。やってみろよ。
思わず笑い出しそうになった。
が、脅えた表情を作り、小さく「わかりました」と返した。




