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対価と対課その1

「やぁやぁこの紋所(もんどころ)ならぬメリケンサックが目に入らぬかぁー」

「こちらにおわす御方は先の勇者様、ミナ=ロックエッジ様であらせられるぞ控えぃ」


メリケンサックのメリ子さんを装着した手の甲を頭上に掲げると、私の右に立つ青年が口上を発する。すると、すかさず左に立つ青年が続けて次に続く口上を述べてくれる。


「グルルル」


そんな私達の台詞を一切無視して、目の前の魔物はジリジリと距離を詰めてくる。


「聞く耳もたぬか…仕方がない。ルドさんテオさんやっておしまいなさい」

「御意」

「了解です」


私の言葉にルドとテオが腰に下げた剣を抜くと、飛びかかってくる魔物にその剣を降り下ろす。


「グギャアァァァァ!!!」


断末魔の叫びを発して、一瞬の内に魔物は息絶えた。






「ミナ様、今日も良い仕事をしましたね」

「そうですね、お疲れ様です。ありがとうルド、テオ」

「ミナ様こそお疲れ様でした」


倒した魔物をテオが炎の魔法で燃やすと、辺りは木々のざわめきしか聞こえない静寂に包まれる。


ここはロジナーク国の外れにある森の中。この森の中に最近になってから狼型の大きな魔物が住み着くようになり、森に入った何人かの人々が怪我を負わされ、今の所死人は出ていないがこのままでは何れ魔物に殺される人が出てくるかもしれない、という事で私とルドとテオの3人が赴く事となった。


森の奥深くに、魔物の棲みかを発見した私達は、テオの魔法で魔物の棲みかの入口に炎の魔法を放ち、熱風と煙で魔物をいぶりだした。

その後、棲みかから出てきた魔物に向かって先程の口上を述べ、聞く耳を持たない魔物に鋼の制裁を加えたのである。


これぞ正に水○黄門の世直し旅ならぬ、ミナの世直し旅である。まぁ、世直しと言っても、魔物討伐だけど。


私がこのような世直し旅(別に旅ではないけど)をするのには、理由がある。






◇◇






無事に大学を卒業した私は、異世界(ガイアスロイ)に移り、めでたくアルと結婚した。

王子であるアルと結婚した私は、アルを手伝ったり王族らしい生活をする事になったのだが――。

無理だった。


一般人の私が、内政チートだの社交界デビューだの出来る訳もなく、かといって王族に嫁いだのに何もせず日々をニートのように暮らすだなんてもっての他だ。

ガイアスロイで私に出来る事はないか、穀潰しにならないようにするにはどうしたら良いか、考えた結果がこれである。


『対価を頂いて魔物退治をしません課』


略して『対課』。


暗黒竜を倒したとはいえ、ガイアスロイ自体に魔物が居なくなった訳ではない。暗黒竜が居ない分、魔物達は幾分か大人しくなったが、大なり小なり人間を害するものはいる。


そんな人に仇なす魔物を倒して、対価を貰うというギルド的な事を王宮の騎士団の一角で細々とやらせてもらっているのだ。


最初は私一人でやるつもりだったのだが、アルに相談したら止められた。メリ子さんと一緒に戦うから大丈夫とひたすら説得して、最終的な妥協案として騎士団でも腕の立つルドと魔法のスペシャリストのテオを入れてならば――と双方合意の上で話が纏まり、現在に至るという訳だ。


本来ならば、魔物退治はギルドに依頼をするのだが、極稀に王宮騎士団に直接依頼をしてくる者がいる。そういう依頼は大抵ギルドだと取り扱い皆無な内容だったり、あまりにも条件が酷くてギルドに依頼しても誰も目を通してはくれない。そういう物が騎士団に回ってきた場合、私達が引き受けるのである。

依頼料金は適正価格にして、任務を遂行する。


今回の狼型の魔物討伐もその一つだ。田舎の外れの村からの依頼だから討伐料金も少なく、移動に数日かかるが、交通費諸々は一切出ない。転移魔法が使えない人間では寧ろマイナスである。


そんな訳で騎士団に依頼が来たので、私達が討伐に出掛けたのである。


ちなみに、どうせなら楽しく魔物討伐をしてルドとテオとも仲良くやりたいので、水戸○門の世直し旅風にしている。私は結構楽しんでいるのだが、ルドとテオは微妙そうだが…。最初の頃は本気で嫌がっていた。勇者の私の頼みにも関わらず、物凄く拒否られた。

最終的にはメリ子さんがメリケンサックのままで二人を説得して、了承してもらった。


何でや!勇者の私の頼み位聞いてくれてもいいやろ!


そんなこんなで細々と『対課』を運営している。

地味に依頼が増えてきているし、そろそろ事務員さんを雇いたい所である。その辺は今夜にでもアルに相談してみよう。


ルドとテオのお給金は今は騎士団が支払ってくれているが、ある程度『対課』だけで賄えるようになったら、『対課』から出さないといけないし、私一人で経理関係まで手が回らなくなってきた。やはり何としても事務員さんを雇わせてもらおう。


ひっそりと心に誓うのだった。


騎士団の一角に造ってもらった執務室兼事務所で二人と別れると、私も自分の住む部屋へと戻る。もう夜だし、アルも戻っているだろう。


早くアルに会いたいな…。


自然と私の足は早くなっていた。







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