王子様と一緒
階下の家族達の元にアル達を連れて行ってからが大変だった。
母はどこから出したのか、消毒薬を私に持たせると、アルとセオ王子を浴室へと連れて行かせ、以前の私同様にそれで体を洗って来させるように私に告げた。
弟の睦月は凄く嬉しそうに「俺が一緒に風呂に入るよ」と言って3人で浴室へと消えていった。
3人が消えた後、母は食事の支度を終えると、直ぐ様彼らが歩いた場所に消毒薬を撒いていた。見ていて凄く胸が痛かったのは、まだ私の心の瘡蓋が完治していなかったのかもしれない。
浴室からは男3人とメリ子さんの楽しそうな声が居間にまで届いていた。メリ子さん…ちゃっかり風呂にまで一緒に紛れ込んだんですね。
それから睦月の私服を着たアルとセオ王子が居間に戻ってきたのは数十分後。服が小さいみたいで、ジーパンの裾部分が笑える仕様になっていた。
◇◇
『お父様お母様、異世界からやって参りました私は、聖剣竜殺しの剣改め、メリケンサックのメリ子と申します。その節はミナ様には格別のお力添えを頂きまして、大変感謝しております。こちらに来る事の出来ない国王陛下に代わってお礼申し上げます』
メリケンサック姿のメリ子さんが、テーブルの上で丁寧に言葉を紡ぐ。何このメリケンサック凄い!社会人のような丁寧さ。
メリ子さんを見ながら父と母は「こちらこそ不肖の娘が――」とか言っている。向こうが礼儀正しい態度(?)をとっているせいか、父達も丁寧だ。
「私はガイアスロイのロジナーク国の第4王子アルバートです。」
「僕は第3王子セオドア」
王子らしくない丁寧な態度に私はポカンと二人の様子を見ていた。
「こ…これは王子様がご丁寧に…」
父はしどろもどろである。
「この度は貴女方の大切な娘であるミナさんを私の妻として迎えたくお願いに参りました。私に娘さんを下さい」
アルはどこで知ったのか、日本人男性の名言「娘さんを下さい」を唱えた。父も母も無言だ。思考回路が着いていっていないのだろう。睦月は凄く嬉しそうなんだが。
「こちらは大した物ではないのですが、よろしければお受け取り下さい」
そう言うとアルはどこから出したのか、大量の金貨や宝石をテーブルに広げる。
あ…両親の目が光ってる。
「葵を幸せにできるのか?」
「はい、必ず」
父が急にキリッとした表情で言い返す。おい…おい…金貨を触りながら言うなよ。
「アルバートさん…でしたね。よろしければ一緒に夕食でもどうかしら?今からだったのよ。セオドアさんもご一緒に」
「ありがとうございます」
「僕もいいの?嬉しいなぁ」
イケメン二人の爽やかな笑顔に母は嬉しそうだった。所謂目の保養というやつだろうか。さっきまで消毒よぉぉぉぉ!と叫んでいたとは思えない変わり身の早さである。
ちなみにメリ子さんの加護のお陰で、二人には異世界の菌やら何やらは一切無いので、それをメリ子さんから聞いた母は満足そうにしていた。良かったアオイハザードの二の舞にならなくて…。
それからは私達家族とアルとセオ王子で楽しく食卓を囲った。こちらの世界の食事が物珍しいのか、アルとセオ王子から質問責めに合いながら夕食を食べる羽目になったのだが――。
それにしても、何故かアルの箸の持ち方が日本人並に綺麗な事が気になる。
「アルはね、ミナの世界のミナが住んでいる国について凄く勉強してたんだよー。娘さんを僕に下さいとか、お箸の持ち方とかそれは必死だったんだから、ねぇ」
アルを見ながらニヤニヤとセオ王子がそんな事を言うものだから、アルは顔を真っ赤にするし、両親も生温かい視線を私に向けてくるしでいたたまれなかった。
「葵、愛されているわね」
食器を片付けていると、母にサラッと言われる。なんという羞恥プレイ。
「彼になら貴女を任せられるわね…違う世界に行っても心配しなくていいわね」
母の最後の言葉に胸が熱くなった。
「あ、異世界からたまに金貨を送ってね。今度リフォームする予定だから大変なの」
おい…。全部台無しじゃないか。
◇◇
「セオドア君狭い家だが今日は泊まっていきなさい。酒でも呑みながらそちらの話を聞かせてくれないか?」
「こっちのお酒興味があったんだよねぇ。嬉しいなぁ。お言葉に甘えます」
「俺も話が聞きたい!」
いつの間にか男3人で集まっている。何なんだ…。セオ王子凄い溶け込んでるんですけど。
「えっと…アルも泊まっていって?狭くて申し訳ないけど」
「葵はアルバートさんとホテルにでも行って来なさい。久しぶりなんだし、積もる話もあるでしょう?」
母の爆弾発言にギョッとする。何て事を言いますか。
「だって4年間も葵を想ってくれていたんでしょう彼?こっちは気にしないで貴女達も楽しんでいらっしゃい」
た、楽しんでって。
顔を赤くする私を他所に、アルは母に感謝の言葉を述べると、私の手を握りながら居間を離れた。
「目立たない格好で外に出よう」
アルに弟のコートを着せて頭をフードで隠してから、私も外出の用意を整えて二人で外に出た。
「ミナの母上は話の分かる方だな」
嬉しそうに言いながらアルは私の隣を歩く。
「年頃の娘に対する言葉じゃないよね」
恥ずかしくて下を向きながら言うと、「俺達は婚約したんだからいいじゃないか」と呟かれた。
「ミナの世界をミナと歩ける幸せに俺は感謝してるよ」
顔を上げると、優しい笑顔で私を見つめるアルと目が合う。
「私も…嬉しい…です」
握りしめられている手の力が強まる。
「アオイ、ずっと会いたかった」
「私も…です」
互いに微笑み合うと、そのまま歩いていく。
てか、ホテルって何処に行けばいいのさ――。
その後、二人が泊まったホテルは
①ビジネスホテル
②高級ホテル
③地元の旅館
④いかがわしいホテル
答えはムーンライトで!(18才以上限定です。お気をつけ下さい。18才以上の方しか閲覧出来ません)
※嘘です。決して信じないで下さい。ムーンさんには載せません。ちょっとしたノリです。ごめんなさい。反省は少しだけしています。
◇◇◇
おまけ
「アル、こちらの世界にはいつまで居る予定ですか?」
「魔力が溜まるまではガイアスロイには戻れないから一週間はかかるかな」
マジか。
「アオイも一緒だぞ」
え…。大学は卒業したいのですが。
「大学という学舎と俺、どっちが大切なんだ?」
「大学を卒業したという学歴です」
アルが目に涙を溜めているように見えたが気のせいだろうか。




