某有名台詞、異世界人は○○だぁ
本来ならば勇者としての役目を終えて帰還した人間は、二度と両方の世界に関わり合うことは出来ない。
異世界人との間には何も絆がないからだ。
だが、例外がある。
異世界の人間と身体を繋げる事。
互いの世界の住人の血を享受する事。
互いの真名を交換する事。
これら全ての事を交わし終えた暁には、異世界人である私と、異世界の人間との間に絆が生まれ、召喚に必要な魔力量が満ちていた場合、互いの真名を唱えると絆が復活し、異世界へと召喚されるのだと言う。
あれ?私が異世界に行くのではなく、アル達が来たんですけど。
『アルバート王子達がミナ様の世界に喚ばれたのは、ミナ様の魔力量がアルバート王子達のそれよりも強かったのでしょう』
私の疑問にメリ子さんが素早く解説してくれた。あれ?声に出していたのかしら。
『ミナ様、元の世界に戻られてからアルバート王子の真名を口に出されたのは何回ですか?』
「今日が初めて…です」
アルの視線を感じつつも素直に答える。
『通りで、幾らアルバート王子が満月やら新月の夜中にミナ様の真名を言われてもうんともすんとも言わない訳ですわ』
慌ててメリ子さんの口を閉じようとアルがメリケンサックを押さえているが、メリケンサックだから口はないと思う。
「ち、違うんだ!そんなに頻繁には呼んでいなかったぞ!ちょっと…結構、かなり寂しい時にこっそり…」
何やらブツブツとアルが言っている。語尾が小さすぎて聞き取れないが。
『互いの想いの感情が召喚魔法に直結しますので、今まで1度もアルバート王子の真名を口にされなかったミナ様の力が大きく、王子達をミナ様の世界に導いてしまわれたのですわ』
勇者を召喚するには何の関係もない人間を喚ぶから、それに見合った相当量の魔力が必要だから、私を召喚した際は大掛かりだったようだ。
アルと、セオ王子との間に絆が出来た私は、互いに魔力が高まっていた時に真名を口にしたら召喚魔法が発動していた――と。
てか何でセオ王子まで居るんだ?
『セオドア王子は「僕も会いたいから一緒がいい」と常々言われておりましたので、こちらに召喚される時についでに巻き込みました』
メリ子さんパネェっす。
「でも私、魔力なんてありませんよ?」
ガイアスロイでも魔法が使えず、近接戦闘派だったのに。
「僕の血を飲んだからだよー」
いつの間にか言葉が通じるようになっていたセオ王子が割って入る。
「僕にはそこそこの魔力があるからねぇ。それがミナの中で何年も掛けて蓄積されていったんだと思うよ?ミナの世界には魔力なんて無いし。ちなみに魔力の無い人間だった場合でも潜在的には魔力があるから誰の血を飲んでいても一緒だったと思うよ」
ドヤ顔で説明するセオ王子に、納得してしまった。
何となくアルを見ると、凄く不機嫌そうだ。眉間に皺を寄せている。
「アルってばヤることやってるのに、血の享受だけは嫌がってたよねぇ」
「下品だぞセオドア。ミナに嫌な思いをさせたくなかっただけだ」
確かに、当時の私は紫色の血にかなりドン引きしていた。それを気にしてくれていたのか。
「まぁ他にも理由がありそうだけどねぇ」
尚もニヤニヤしながら言うセオ王子の頭を小突きながら、アルが私を見つめる。
「ミナが俺の事を想って名を呼んでくれたのだと思ってもいいだろうか?ただ名を呼ぶだけでは召喚魔法は作動しない」
アルの言葉に小さく頷く。きっと私の顔は真っ赤になっているに違いない。
「ミナ…ミナの事を思って我慢してきたが俺には無理のようだ。俺の傍に居てほしい。死が二人を別つまでミナを愛していきたい。俺はミナが好きだ、いや愛している」
真剣な眼差しで見つめられ鼓動が早くなる。涙で目が霞む。
だって私もアルが好きだったから――ずっとアルが好きだった。
「唯のミナでもいいですか?」
「ミナがいいんだ。それ以上でもそれ以下でもない」
「アルに他に好きな人ができたら――」
「それを言うならミナもだろう?仮にミナに他に好きな相手が出来ても離してやれない」
もう限界だ。こちらに戻ってからの4年間、誰も好きになれなかった。アル以外好きになれる人はきっといない。
「貴方の傍に居させて下さい」
アルの手が私の頬に触れる。ずっとずっと触れたかった。そっと目を閉じるとアルの気配を直ぐに感じていた。
「はいはーい。じゃあミナの家族に説明しないといけないねぇ」
正に唇が触れるか触れないかの絶妙なタイミングでセオ王子が割って入ってきた。途端、羞恥で死にたくなる。
恋愛脳ではないか自分。
そんな自分にげんなりしていると、アルがあからさまに舌打ちをしていた。あかん、アルも恋愛脳に汚染されている。
セオ王子のナイスカットインに冷静さを取り戻すと、アルとセオ王子を階下に案内する事にした。
時計を見ると、夜もいい時間だ。これなら家族全員が揃っているだろう。
◇◇
「お父さんお母さん睦月、ガイアスロイからお客様が来たんだけど…」
居間で寛いでいた父と睦月、そして台所で料理を作っていた母の動きが止まる。
「いやぁぁぁぁぁぁ!!消毒よぉぉぉぉ!!!」
あれ、何かデジャヴが――。




