再会
「 アルバート…えぇっと、アルバート、レイヴンクロス…らんぐえっじ…チェスター、うーむ…確かフォーてんビス=ロック、ロックエッジ…?だったような気がしない事もない事もない…ような…」
昔の記憶を掘り起こしながら、読めないルーズリーフの紙を見ながら呟く。ちなみに、これで言い直し回数は35回目だ。何度も間違えながらも、我ながらよくもまぁ言えた物だと感心する。合っているかどうかは知らないが…アル、ごめんね。
そんな事を思っていると。
「熱!?」
突然、ルーズリーフが熱を持ったかのように熱くなり、思わずルーズリーフから手を離す。それから次いで、身体が――胸の辺りが熱くなる。
「何で?胸がドキドキする」
急に起こった現象に疑問を感じていると、目の前に円形の淡く白い光が現れていた。
驚いてその光を呆然と見つめていると、光の中に何やら動く気配があった。
次の瞬間には、私の体は光の中から現れた手に腕を取られたかと思うと、抱きしめられていた。
「ーーー」
顔は確認出来なかったが、私を抱きしめているのは人間のようだった。何やら聞き慣れない言葉を発しているのだが。
まさか、これが噂の宇宙人と言うやつなのか!?
人体実験と称して殺されるのだろうか?尚も何かを言い募る相手に、私は為されるがままだ。手で首をトントン叩きながら「我ワレは宇チュウ人だ」と片言で話すべきなのか。
てか、言い加減顔を見せて下さい。
「ミナ」
え!?
その言葉に私の心臓は大きく跳ねる。ドクンドクンと鼓動を打つ心臓に、何かを期待しながら、私を抱きしめる相手の顔を確認すると、その相手は――。
「セオ王子!?」
セオ王子だった。
「離れろ」
乱暴な言葉を発しながらセオ王子の身体を引き離そうとするが、なかなか離れない。くそっ…インドア派の研究機関引きこもり王子のくせに結構な力があるじゃないか、全然離れてくれない。
「ーーーー」
セオ王子が尚も何かを言っているが、分からないのでひたすら引き離そうと必死になっていると、セオ王子が後ろに引っ張られていた。
「ミナから離れろセオドア」
聞き覚えのあるその声に、体が、心が震える。ドクンドクンと、ありえない程響く鼓動が煩い。
胸を押さえながら声のする方へと視線をずらすと、そこには最後に見た時よりも大人びた姿となったその人が、セオ王子を掴みながら立っていた。
「アルバート!」
興奮のあまり思わず抱きつきかけて思い止まる。私とアルの間にはセオ王子が居るのだ。
ここで抱きつけば感動の再会となったものを…。
「ミナ」
動かずにアルを見つめていた私に、彼から懐かしい声で名前を呼ばれた。あの頃よりも少し声が低くなったかもしれない。
「アル…セオ王子?本物?」
「確かめてみるか?」
そう言って、目の前の彼が手を差し出す。逸る心を押さえて、恐る恐るそれに手を触れるとギュッと握りしめられた。
「本物だ…」
「先にセオドアがミナに触れたのは許せないけどな」
苦笑いしながらアルが返してくる。セオ王子を見るとニヤニヤしているし。
「ーーーー」
セオ王子が何か言っているが、分からない。そういえばアルの言葉は分かるのに、何でセオ王子の言葉は分からないのだろうか。
『セオドア王子は私の加護を受け取っておりませんから、ミナ様には言葉が理解できないのですわ』
疑問を口にする前に、聞き知った声がアルから握りしめられているのとは反対の手の
辺りから聞こえた。
「メリ子さん!」
アルの手の甲には聖剣竜殺しの剣改め、メリケンサックのメリ子さんが装着されていた。
「ちょ!?え?あれ?何で?」
聖剣は勇者にしか装備出来ない筈では。なのに何でアルが装着しているの?
「何でメリ子さんとアルが一緒なの?」
恋人の浮気現場を目撃した彼女のような台詞を口にする。ちなみに今回の場合、メリ子さんが私の恋人でアルが浮気相手に相当する。だってメリ子さんを装備していいのは今の時代では私だけなんだもの。
「ミナ様、これには深い理由がありますの。決して浮気などではありません。今代の私のお相手はミナ様以外には居ないのですから…」
「良かった!メリ子さんが浮気したのかと思ったよ」
アルの手に装着されたメリ子さんの言葉に私は安堵の声を漏らす。
「………」
アルの視線が痛い気がするのは何でだろう。無言で睨まれている気がする。セオ王子はニヤニヤしながら傍観しているし。
「4年振りの再会で、聖剣の浮気を心配するとか――感動の再会の筈が――」
アルが何やらブツブツ言っているが、小さすぎて聞きとれなかった。




