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私とメリ子さん初めての実戦その1

残酷な描写が出てきます。閲覧にはお気をつけ下さい。

騎士さん達が次々に数多いる魔物を切り伏せる姿を茫然と見ていた。


切れ味の鋭い剣で一気に首を跳ねると、首と首から下の胴体を繋いでいた部分から勢いよく紫色の血が噴き出す。


断末魔の呻き声も一瞬で、魔物がいたその場は、辺り一面紫色の血溜まりと化している。


私はその光景をぼんやりと眺めていた。胃の辺りがキリキリする。口内に酸っぱい物を感じ、手で口許を押さえながら木の影まで走ると、魔物を倒した騎士さんが叫ぶ。


「今日はコボルトの焼き肉パーティーだ!!」


うおぉぉぉぉ!!という歓声をどこか遠くで聞きながら、私は吐いていた。






事の起こりはこうである。


一夜の宿を提供してくれた村長にお礼を言って、村を去ろうとしたら遠くから「魔物が現れたぞ!!家に逃げろ!!」と叫び声が聞こえてくる。


声のする方へと私やアル、騎士さん達が駆けていくと村の出入口から離れた場所に沢山の魔物が居るのを確認した。


「あいつら畑を狙ってるんだ!!」


騎士の一人に村の人が言っている。

何でもあの魔物達は極稀に人里に現れては野菜畑を食い荒らすのだそうだ。


だが、現状の村で僅かに残る畑を食い荒らされては堪った物ではない。村人が頭を抱えているとアルが「俺達が討伐するから安心しろ」と伝えると、騎士さん達を引き連れて魔物達の元へと進んだのだった。


私もどんな魔物か気になったので、聖剣メリケンサックを両手に装着すると、アル達の後ろを着いて行った。






そこには沢山の愛らしい小型犬がいた。


チワワ、ポメラニアン、ミニチュアダックス、小柴犬等々犬好きには堪らない光景だった。


二本足で立っていたけど。


「ナニコレ可愛い!!」


あまりの愛らしさに私がコボルトの群れに突進しようとした所をアルに止められた。


そのままアルは腰に提げた剣を引き抜くと、それを降り下ろす。

真っ二つにされたコボルトからは大量の血が噴き出し、アルの衣服を紫色に染め上げていった。


それを合図に騎士達はコボルトに斬りかかる。

紫色の返り血を浴びながらコボルトを倒していく姿は、正に鬼神そのものだった。


あまりの凄惨な光景に足が震え、座り込む。その内に、独特な血の臭いに吐き気が押さえられなくなる。

震える足を叱咤しながら魔物達との戦いに巻き込まれない木の元まで行くと、私は盛大に吐いた。


目からは涙が止まらなく、血の臭いが更に胃酸を刺激し、胃の中の物を全て吐き出させた。


息を乱しながら戻ると、既に戦いは終わっていたらしく、私に気が付いたアルが駆け寄ってきた。


「ミナどうしたんだ!!顔色が悪いぞ!!」

「動物愛護団体からクレームが…きます…」


その言葉を最後に私は気を失った。





◇◇






「勇者よ――…」


声が聞こえる。優しくて慈愛に満ちた――。


「勇者ミナよ」


ゆっくりと目を開くと、そこには腰まである黄金の髪を下ろした美しい女神様が立っていた。


「メリ子さん!!」

「えっと…メリ子?」


女神様が怪訝な顔でこちらを見つめてくる。


「メリケンサックのメリ子さん」

「私は竜殺しの剣(ドラゴンスレイヤー)なのですが…」

「ならスレ子さん?」

「スレ子はちょっと…」

「ならドラ子さん?」


………


「メリ子でいいです」


暫しの沈黙の後、女神様の姿をしたメリ子さんはそう呟いた。


「お久しぶりですねその姿は。お元気でしたか?」


メリ子さんが女神様の姿で現れるのは夢の中。私は声だけの登場ではない久々のメリ子さんの姿に見惚れていた。


「ええ…私は元気ですよ。ですが私よりも勇者様の方が大丈夫でいらっしゃいますか?」


メリ子さんの言葉に、じんわりと涙が溢れてくる。


「メリ子さん…私…私」


その場で泣き始めた私をメリ子さんは泣き止むまで抱きしめてくれていた。


メリケンサックのはずなのに、夢の中なのに、抱きしめてくれるメリ子さんは温かかった。





「つまり、コボルトが愛らしい小型犬の姿の為殺すのが辛い――と仰るのですね?」


抱きしめられたまま私は頷く。


あれからひとしきり泣きはらした私は、メリ子さんに己の胸の内を吐露した。


メリ子さんは優しく聞き役に回ってくれた後口を開いた。その声音は温かく心地好い。


「はい。あんな可愛い姿をした魔物さんを倒す事なんて私には出来ません」


勿論コボルトだけではない。


蜘蛛の形をした魔物が出てきたら全力で逃げるだろう。人間よりも大きな体格で、八本の足でカサカサ動く――想像するだけで阿鼻叫喚である。(居るか居ないかは知らないが妄想)


ましてや日本に居た時の天敵G。奴が万が一にもこの異世界(ガイアスロイ)にまで居たら、小さくても脅威の的だったと言うのに、ましてや人間よりも大きかったりした日には――あの黒光りする奴が触角をユサユサさせて突進してきたらと思うと――。(これも妄想)


吐くだけではすまないだろう。

トラウマ物である。


そう、私は甘かった。甘あまだったのである。


魔王暗黒竜がドラゴンだからといって、魔物達全てが幻想種であるなどと何故そう考えていたのか!?


犬が魔物の世界だ。コボルトだけども。

いつ地球上の生物もどきが魔物として現れるか解らないのだ。


コボルトの殺戮で震えて吐いてしまう自分には魔物退治はおろか、暗黒竜討伐など夢の又夢。


「でしたら私の力を使いましょう」


私の心情を知ってか知らずかメリ子さんがそんな事を言ってきた。





続く。

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