被害の酷さと王子と私
珍しくシリアスっぽい感じです。
私は今、アルバート王子や騎士団の皆さん達と一緒に医者を派遣する村まで来ていた。
道中は魔物達に蹂躙された痛々しい痕跡が幾つも残っており、胸を痛めた。
着いた村はそれは酷い有り様だった。
一部の家屋は潰れていて、畑もぐちゃぐちゃ、家畜は食い殺されたのだろう姿を見かけなかった。
村人達が必死で家やとおり、畑を建て直していたが一向に進んでいないようだ。
村の中で呆然としていた私達を、村長自ら邸宅へと恭しく案内してくれた。
◇◇
「お見苦しい所をお見せしてしまい申し訳ございません」
私とアルバート王子、そして王子の護衛の騎士さん達は邸の客室に通されると、村長に頭を下げられる。
突然の村長の態度に私が唖然としていると、アルバート王子は村長に頭を上げるように言うなり「我々こそ国を、たくさんの人々を守れずすまなかった」と謝る。
この国の王子が民に謝罪するなどあり得ない出来事だ。村長を含め、騎士さん達も驚いて固まっていた。
コンコンというノックの音に皆が一斉に我に返ると、村長は私達にソファを勧め、奥様だと紹介してくれた女性が紅茶を並べてくれる。
奥様が部屋を出て行くと、アルバート王子が口を開いた。
「ここと近隣の村に派遣する医者を連れてきた。神聖魔法が使えない分、治療に時間は掛かるかもしれないが怪我人の治療に関しては折り紙付だ」
アルバート王子の言葉に村長は何度も礼を述べる。
魔物達による被害により、村に通いでやって来ていた医者が来れなくなり、診療所には薬も無く、録な手当のできないままで苦しんでいる入院患者がかなり居るらしく、話を聞いた王子は直ぐに医者を向かわせると必要な医療品の手配を騎士さんに伝えた。
「何から何まで本当にありがとうございます。狭い家ではありますが、よろしければ本日は我が家にお泊まり下さい。できうる限りのおもてなしをさせて頂きます」
村長の必死な頼みに王子が「そうさせてもらおう」と伝えると、邸の使用人らしき人に私達は客室へと案内される。
◇◇
「何で私とアルバート王子が同室なのでしょうか?」
「村長が気を利かせてくれたんだろう」
そこそこの広さの客室にアルバート王子が通されたのを確認した私は、自分が休ませてもらう部屋を聞く前に、何故かアルバート王子と同じ部屋に押し込まれたのだった。
「気を利かせて…って」
言葉の意味を理解して顔が赤くなる。
「私はアルバート王子の情婦ではありませんし部屋を変えてもらいます」
「え、そっち?」
微妙な顔をしているアルバート王子に一礼して部屋を出ようとしたら、捕まってしまった。
「折角の機会だ。ミナとはゆっくり話もできないでいたし、何か話さないか?」
「…そうですね…」
確かに、いつも一緒に居るのはウラディミールさんばかりで、アルバート王子とはあまり話をしていない。
アルバート王子が腰掛けているソファの向かい側に座る。
「酷い有り様だろう?」
村の事なのか、ここへ来るまでの道中の事なのか――多分両方なのだろう。
「お城や城下町と全然違って驚きました」
「ああ…王都にはまだ魔物の襲撃は来ていない…だが離れた町や村は何度か襲われている。国王も国を守る為に前線に立ったのだが――後はミナも知っているだろう?」
無言で頷く。国王様には今だに面会できてはいない。
「神聖魔法で傷自体は何とか塞がったんだが年も年だからな。なかなか回復しない」
「はい」
アルバート王子は神妙な表情だ。
「この世界のいざこざに巻き込んでしまってすまない。だがミナの力が必要なんだ…改めて言う、我々に力を貸してほしい」
気が付かない内に両手を強く握りしめられていた。
アルバート王子の強い視線が真っ直ぐに私を見つめてくる。
全身が熱い。
「私も只の人間です。怪我をしたら痛いし血は流れるし、お腹が空けば食べないと動けないし、魔物は怖いし、死ぬ時は死にます。だから、私が懸ける物と同等の対価を支払って下さるならば――」
「対価を支払うのであれば勇者となります――だろ?」
思わずアルバート王子を見つめ返す。どちらからともなく、笑みが浮かんだ。
「俺も出来る限りの手助けはする…ミナにだけ辛い思いはさせない」
「ありがとうございます」
その後、夕食の用意ができたと食道へ案内された私達は村長と話をしながら食事をした。
王子が位のない一般人と同じ席にいるのは、向こうも落ち着かなかったようで、村長はじめ使用人さん達はかなり動揺していたようだった。
浴室で体をすっきりさせたので、早めに就寝しようと寝台に潜りこむ。
ちなみに隣の寝台にはアルバート王子。
どうしてこうなった。
落ち着かないで寝返りを何度か打っていると、アルバート王子から声が掛けられた。
「ミナ起きているか?」
明らかに起きてます。
「そのままで聞いてくれ。お前と出会ってから少しずつだが俺は考え方が変わってきている。以前は下の者に対して礼も詫びも言う事はなかった。だがミナは誰に対しても同じように礼を言うし、いけない事には謝る。誰に対しても平等というか――」
そこまで言うと、アルバート王子息を吐く。静かな部屋に吸い込まれそうだ。
「お前のおかげで、今すぐには無理だが少しずつ俺も変わりたいと思えるようになった。ありがとう」
「アルバート王子…」
恥ずかしくてどうしたらいいのかわからない。確実に今私の顔は真っ赤だろう。
「お…俺の事はアルと呼べ!!おやすみ」
そう言うと静かになる。
ツンデレのデレッか!?ツンは無かったが。
「アル」
そっと呟くとブホと何か呻き声が聞こえてきた。




