必殺技談義その2
「私は過去の勇者様達が使われたような、意味は解りませんが格好良い長い台詞の必殺技が良いかと思います」
「え〜叫んでる内に舌を噛んじゃうんじゃない?」
ウラディミールさんのアピールに、セオ王子が嫌そうな顔をする。
話は主にウラディミールさんの提案を、ことごとくセオ王子がかわして進んでいた。
進んでいないが。
それを横目に私とアルバート王子はのんびりと出された紅茶を飲んでいる。
「この会議…会議なのだろうか?いつまで続くんだろうな」
本当ですね。
「明日までに提出しなくてはならない書類があるんだよな…」
本当にすみません。
「提出する書類とは何なのですか?」
何となく興味があったので聞いてみる。
「あぁ…魔物に教われた村の幾つかに医者を派遣出来る事になったんだ。それの手続きに必要な書類を明日までに兄上――…第二王子にサインをもらわなければならないんだ」
アルバート王子!!
「ほら…この前牛達を狩っただろう?その時に一部の肉を売ったんだが、その資金で医者を派遣できる事になったんだ」
「そうだったんですか…」
「と言っても、情けない事に十数人しか雇えなかったんだがな」
バツの悪そうな表情で話すアルバート王子に、私は首をブンブン振って否定する。
「そんな事ありません!!アルバート王子のおかげで医者に診てもらえず苦しんでいる人達が救われるんです!!だからそんな顔しないで下さい」
柔らかく微笑んだアルバート王子に、膝の上に置いていた両手を王子の両手で包み込まれる。
「ミナ…ありがとう」
ウラディミールさんとセオ王子が討論をしている横で、私とアルバート王子は甘ったるい雰囲気を醸し出していた。
「ミナ…」
「何ですかアルバート王子?」
「俺の事は――」
「アルバート王子ミナ様!!我々の話は聞いておられましたか!?」
アルバート王子が何かを言いかけた所に、ウラディミールさんが割って入る。
「すみません…途中から聞いていませんでした」
素直に謝っておく。ウラディミールさんは溜め息を吐きつつ、「仕方がありませんね…ではもう一度」と、最初から話し始めた。
◇◇
「エターナルフォースなんちゃらは先々代の勇者様が好んで使われていた魔法です」
「確か先々代は槍使いであり、魔法の腕もかなりの物だったんだよね?」
「はい。何でも左目が邪気眼と呼ばれる物だったらしく、口癖は『今夜は満月か…俺の邪気眼が疼くわけだ』でした。満月でない時でもよく言われていたそうですが」
止めたげて!!
「王宮にいらっしゃる時は『この邪気眼は強すぎる。無関係の者にまで力が及んでしまうだろう』と言って常に眼帯をしていらっしゃったようです。旅に出てからはあまり眼帯をしていなかったようですが」
止めたげて!!
溢れでる廚ニ病の先々代があまりに可哀想で耳を塞ぎたくなったのは言うまでもない。
「あのぉ…ちなみに先代勇者さんもそんな感じの必殺技をお持ちだったのですか?」
居たたまれない気持ちを隠しつつ聞いてみる。
「先代勇者様は拳銃と呼ばれるこの世界では見ない武器でしたので、あまり詳しくは記されてはおりませんが『乱れ撃ち』『エネミーボム』などの新しい攻撃手段を用いておられたようです」
一息で喋ったかと思うと、更に話は続づく。
「特に乱れ撃ちは後の魔法技術に多大な貢献をしましたね。様々な魔法使いが一度の詠唱で複数の魔法を構築し発現させる術を作った切っ掛けとなった画期的な技でした。先代勇者様は王宮の魔法研究機関でそれに尽力されたそうです」
自宅警備員はこちらの世界では、本当の意味で自宅警備員になったようだ。
自宅じゃなくて王宮だけど。
それから数時間、ひたすらウラディミールさんは必殺技の素晴らしさ、言の葉による魂の具現化などについて熱く語ってくれた。
結果として幾つか廚ニ病全開な必殺技の名前、使用方法、利点などを記した羊皮紙を渡され会議はお開きとなったのだが――…。
途中から反論するのも面倒くさくなったのか、セオ王子も私達同様にウラディミールさんの話は半分以上は聞き流していたのだった。
三人はひたすら紅茶を飲み、お菓子を食べつつウラディミールさんにバレないように互いに愚痴を言い合っていましたよ。
本当に何で神官やってるんだろうこの人。
今回も短くてすみません。




