必殺技談義その1
下品な単語が出てきます。閲覧にはお気をつけ下さい。
落ち着いた色合いの部屋の中、来客用のソファに私は座っている。
ここはアルバート王子の執務室。
私の横にはアルバート王子、机を挟んで向かい側にはウラディミールさんとセオドア王子が座っている。
薄茶色の髪をキュッと後ろで纏めた、見るからに出来る女のオーラを放つ侍女さんが、全員の前に紅茶とお菓子を並べると、静かに部屋を出て行く。
見るからに興味が沸き起こるであろう面々+客人扱いの私と言う謎のコラボレーションに対しても、「全く興味はありません」という静かな表情で仕事をこなしていった姿は正にプロのそれである。
話が逸れてしまった。
この面子で集まっているのには、理由がある。それは――…
「それでは全員が集まった所で、ミナ様の必殺技を考えたいと思います!!」
高らかにウラディミールさんが宣言した。
事の起こりは些細な出来事だった。
◇◇
焼肉パーティーを終えた二日後、騎士さんの訓練所の裏手で、私は格闘家の先生に基礎的な戦いについて学ぶ事になった。
勿論、傍らにはウラディミールさんが控えている。
「初めましてミナ君…話はウラディミール様から聞いている。君は女だてらに拳を武器に戦う格闘家になりたいのだろう。そんな素晴らしい志を持つ君には、世界的有名格闘家ゴリラック自らが指南しよう!!」
親指をグッと突き立て、キランという効果音がつきそうな程に眩しい白い歯を見せながら、溢れんばかりのムキムキの筋肉を見せつけるように白色のタンクトップにピチピチスパッツを履いたゴリラ…じゃない、変態がいた。
もう一度言おう。
変態がいた。
私は無言のまま180°回転すると、脱兎の如く駆け――。
「捕縛!!」
駆け出す前に捕まった。
この魔法、魔法使いさんしか使えないんじゃないのか!?
「ミナ様…逃げようなどとは思われませんように?」
振り向くと、そこには般若の笑顔で静かに佇む小さな巨人が居た。
擬音付きならば、確実にゴゴゴと言う音が似合うであろう。
私は屈した。得体の知れない恐怖と言う名の感情に屈してしまったのだ。
「私は小さき竜を一撃で仕留めた男。そんな私自らが指導するのだ!!喜べ!!」
上腕筋をピクピク動かしながらゴリラもとい、ゴリラックさんはそう言った。
殺るしかない。
私はメリケンサックを両手に嵌めると、グッと拳を握る。
ついでに、こんなんを連れてきたウラディミールさんもボコボコにしたい。
殺意の衝動に駆られていると、メリケンサックが柔らかく光る。
『勇者様…私の力を使えば魔物はおろか変態もボコボコに――…失礼しました。駆逐する事が出来ますが、如何されますか?』
以前どこかで聞いたような、脳内に直接語りかけてくる優しい声。
「誰?」
思わず呟く。すると、またしても淡くメリケンサックが光った。
『私です聖剣竜殺しの剣です』
まさかの聖剣メリケンサックの声だった。確かに夢で見た女神様と同じ声だ。
『勇者様となられるお方には潜在的な力や強さがありますが、聖剣である私の力を使う事によって更なる強さを手に入れられるのです。もし宜しければ今この場でそれを証明できますが、如何されますか?』
聖剣メリケンサックの言葉に私は無言で頷いていた。
その後、私はゴリラ――…ゴリラックをフルボッコにした。
勿論殺してはいないし、流血もさせていない。
「君の実力が知りたい。どこからでもかかってきなさい」と言われたので、一気に間合いをつめると額にデコピンをお見舞いしてやった。
相当な痛みだったのだろう、蹲って悶えている所に頭上部のつむじを人指し指で「げーりボタン下痢ボタン」と歌うように呟きながら押さえてやった。
これで奴は翌朝激しい下痢に苦しめられる事だろう。
悶えるゴリラックをその場に残し、くるっとウラディミールさんの方へと向く。
若干ビビっているのか、その場に立ち尽くす彼の元へと一気に駆け出すと彼の頭上部のつむじにも下痢ボタンをお見舞いしてやった。
「これが…勇者様の力…」
蹲りながら頭を押さえて悶絶しているウラディミールさんがか細い声で呟いていた。
聖剣メリケンサックと私の勝利である。
メリケンサック使ってないけど。
その後、ゴリラックは「もう私が教える事は何一つない」と、まるで自分が指南でもしたような口ぶりで帰って行った。
だが、彼は知らない。こっそり騎士達が覗き見をしていた事を。
◇◇
そんな経緯があり、実際下痢で苦しんでいたのかは知らないが、数日後こうして四人が集まったわけである。
ウラディミールさん…本当に懲りない人だな、と思いました。
最初の頃の静かで優しげな印象を返して!!
こんなんばかりですみません。




