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私とメリ子さん初めての実戦その2

軽く残酷な描写が出てきます。

グシャァァァ!!


軽快な音と共に、メリケンサックを装着した私の右の拳がスイカを粉砕する。


スイカの赤い身と種、そして果汁が迸る。


続いてピョンピョンと跳ねながらこちらに近付いてきたスイカをかち割る。かち割ると言うよりも、先程と同様に粉砕したのだが。


「まだまだぁぁ!!」


チート設定というやつだろうか?かれこれスイカを10個は粉砕したのだが、まだ疲れない。


スイカをグシャグシャに粉砕するのは、小さい頃スイカ割りをしていた時に『拳で割れたら気持ちいいのだろうな…』と思っていた、ささやかな幼少期の夢を叶えてくれたようで気持ちがいい。


『勇者様スイカ以外にも希望がありましたら仰って下さいね』


メリ子さんがメリケンサックのまま私の脳内に直接語りかけてくるように話しかけてくる。


そうなのだ、夢の中でメリ子さんに愚痴を言ってから、メリ子さんはメリケンサック状態の時でも、割と私に話しかけてくれるようになった。

なんだか女の子の友達が出来たようで少し嬉しい。


「そうですね、私壁にも穴を開けてみたかったんです。小さい頃アニメで主人公が壁ドンして穴を開けているのを観て憧れたんです」

『壁ですね、解りました』


メリ子さんがそう呟くと、今までこちらに向かってピョンピョン跳ねていたスイカ達が、白い2m位の高さの壁となって迫ってくる。


ピョンピョン跳ねる壁はなかなかシュールだ。

「あたぁぁぁ!!」


某世紀末救世主のように叫びながら白い壁に拳を突き出す。勢いよくいったおかげで、右腕が壁を貫通した。


そして、ボコォという音と共に破片が飛び散っていく。


キモチイイ!!


そのまま次々と壁を破壊しては、新たな壁へと向かっていく。

跳躍力にも自信のある私は(これも勇者補正のチート設定なのだろう)、一気に間合いを詰めると渾身の一撃を放つ。


ちなみに壁に向かって行くのは最初は怖かったが、慣れると体が勝手に動くのだ。私めがけて突進してくる壁を素早く避けて、ガラ空きのボディへと撃ち込む。


壁に体があるのかは知らないが。


そのまま、全てのスイカと壁を倒した後には私の周囲には粉砕された残骸だけが残されていた。


「やった!!やりましたよメリ子さん!!私戦う事ができました!!」

『やりましたね勇者様』


残骸の中心に立ちながら、私はメリ子さんと初めての勝利に酔いしれた。


顔に着いたスイカの果汁を手の甲で拭い、服に着いた破片を払う。


「汚れちゃいましたし村長さんに早めにお風呂を使わせてもらえるように頼んできます」

『そうですね…私も埃や破片で汚れてしまいました』

「綺麗にしますね」

『ありがとうございます』


二人で楽しく話しながら、私はアルに一言後の処理をお願いすると送り届けてくれると言う騎士さんと一緒にこの場を後にし、村の中へと入って行った。






◇◇






俺はミナが先程まで居た場所で、立ち尽くしていた。


辺りにはミナが倒した魔物達の死骸で溢れている。いや、死骸と言ってもよいのか分からないが――元の原型が分からない程、臓腑が飛び散り、血だまりの中死臭を放つ魔物だった物が朽ちていた。


俺と一緒に居る騎士達も驚愕の表情で俺と死骸を交互に見つめてくる。


そろそろ限界なのかもしれない。


ミナが勇者として召喚された異世界人である事を彼らはまだ知らない。

俺が私的に招いた客人という扱いになっている。


今回、医者を派遣する村へと同行させたのだって、王宮から出た事のない(唯一の遠出も神殿位だ)ミナに外の世界を見せる為であった。

彼女にはこれから辛く苦しい戦いを強いる事になる――それを改めて伝える為に。


だが、やって来た村で急遽コボルトと戦う事になった。

その光景を見て彼女は気絶したのだ。

それが先程はどうだ。


「私にも戦わせて下さい」


目が覚めたミナは直ぐに俺の所へとやって来ると、こう告げた。


コボルト相手に気絶するミナが他の魔物相手に戦える訳がない。


そう思い、「ミナにはまだ早い」と伝えると「大丈夫だから」と返された。


あまりにもしつこかったので、脅しのつもりで魔物の巣窟へと連れて行く事にした。


魔物の巣窟と言っても、弱めの魔物だから俺や騎士が居れば問題ない。要はミナに実戦の厳しさを教えようと連れて行っただけだ。


きっとミナの事だから、「やっぱり恐い」と怖じ気づくと思って――。


予想に反して彼女は襲いくる魔物のなかへと突進し、一撃で魔物を地面へと沈めたのだ。


俺達はただ黙って見ているしか出来なかった。


一撃で魔物を倒したミナは、返り血をその身に浴びながら次々と魔物を殺していく。


一瞬で相手の懐に飛び込んだかと思うと、次の瞬間には魔物は臓腑を垂れ流して絶命している。

正に鬼神の如き所業。


俺はそれを食い入るように見つめていた。





返り血を全身に浴びたミナが去ってから、我に返った者達が一斉に俺に質問してくる。


「わかった!!言う!!お前達にも説明するから今はこの死骸を片付けるのが先だ!!」


俺の言葉に騎士達は魔物の死骸を片付け始める。


やれやれ…こんなに速くミナの事を発表する羽目になるとは――。


俺は血だまりの中、天を仰ぐのだった。





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