表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/53

聖剣が抜けてしまいました

殆ど会話だけで終わります。

還ってきた左手からの情報で、手紙とその他一式が容れられた箱が家族の手に渡った事を確認したので、選定の岩に刺さっている聖剣を抜く事になりました。


左手が消えてもくっついても冷静な辺り、哀しいかな、こちらの世界に順応してきているのだろう。


話が反れてしまった。

万が一抜けなかった場合を考えて、立合人はアルバート王子とウラディミールさんだけにお願いした。


「不安になられなくても大丈夫ですよ」

「召喚されたのはミナなのだからそんなに心配するな」


二人に声を掛けられながらも、内心は心臓バクバクです。


もしも聖剣が抜けなかったら?

人違いで喚ばれたのだったら?


考えるとキリがありません。


まぁ考えるよりも、先ず行動…と誰かも言っていたし、やるだけやってみましょうかね――






そっと聖剣の元まで近付くと大きく深呼吸をする。

精神を落ち着けなければ、この後の事態について行けないかもしれないのだから…。


そっと聖剣の柄部分を手に取ると、緊張のあまり生唾を飲み込む。

後ろで見ている二人の視線が痛い。


どうか抜けますように――


あれ?もしかして抜けなかったら私、魔王暗黒竜討伐に行かなくてもいいのではないのか?


聖剣を見つめたまま、今更ながらその事実に気が付く。


そうじゃないか!!抜けなかった場合は、私は単なる人違いで喚ばれた事になる。その場合は、喚んだ側が悪いだけであって私に非はない。


そうしたら、暗黒竜と戦わなくてすむし、代わりの人間を喚んでもらって私は「はい、さようなら」でミッションコンプリート。


再召喚や再送還でアルバート王子やウラディミールさん達は大変な目に合うだろうけれど、日本に還る私には関係ないわけで――


しかも、送還してもらった金貨や宝石類は手元に残る…。


ナニコレ美味しい!!


気楽になった私は、笑顔になると両手で柄を握りしめ盛大に引き抜いた。


瞬間、辺りが一面真っ暗になったかと思うと、聖剣竜殺しの剣(ドラゴンスレイヤー)が淡く光り輝いている。






◇◇






『貴女が神に認められし今代の勇者ですね』


多分…そうだと思います。


『ありがとうございます。どうぞこの世界をお救い下さい勇者よ』


はい…抜けてしまったからにはガンバリマス。


『…片言…ですね』


ソウデスネ。


『コホン…えぇと、私は貴女が望む形に形状を変える事が出来ますが、貴女は私をどのように使いたいですか?』


え!?形状を変える!?使いたい?どういう意味ですか?


『私は持ち主の思考によって、その形を変えるのです。歴代の勇者達、初代勇者クリスは騎士団所属だった為、愛用のロングソード形状のままでした。二代目は両手で持てる大剣(クレイモア)を希望しましたね。何でも「格好良さげだから」と言っていた気がします。三代目は弓術に長けているとかで、ロングボウでした。四代目は貴女の世界の伝説上の武器である長槍(グングニル)でした。何でも厨二病が疼く…とか。五代目は拳銃と呼ばれる物でしたね。異世界では崇高なる自宅警備員(おうきゅうきしだん)として、迫り来るゾンビや怪物から自宅(おうきゅう)を守っていた早打ちガンマンだったそうですよ?』


あまりの内容にこめかみを押さえる。


前半の勇者達は置いておいて、問題は後半二人だ。四代目と五代目…貴方達絶対日本人でしたね…。しかも限りなく現代っ子な…。


何よりも五代目はどう考えてもバイ○ハザードだろ!!しかも自宅警備員(おうきゅうきしだん)と格好良く言っても、ニートのそれではないのか。


溜め息を吐きつつどうしようか思案にくれる。


持ち主によって形を変えるのならば、何故剣として選定の岩に刺さっていたのだろうか?


『聖剣が本来の私の姿だからです。ですが、幾ら勇者といえど得意不得意はあるでしょうから、その相手に合わせるのも私の役目なのですよ。私を私として使ったのは初代勇者クリスだけですね』


成る程。では私も剣でお願いします――とは無理だな。剣道やら剣術やら習ってなどいないし。弓も槍も斧も無理となると――…何も思い付かない。


『ではとりあえずと言う事で、グローブ系にしてみませんか?』


聖剣さんのとんでも発言に驚く。


『覚えておいでですか?この世界に喚ばれた貴女は、王宮に着くなり逃げ出そうとした事を』


勿論覚えている。城門の扉に思いきりぶつけて、物凄く痛い思いをしたのだから。


『あの時の貴女は素晴らしい跳躍力で一気に距離を詰めました。あれは常人には真似の出来ない物です。あの跳躍力を生かして敵の懐に一瞬で踏み込み、拳を使って一撃の元に殲滅するのが得策かと思われますが――…いかがでしょうか?』


恐ろしい事をさらりと言われた。


仮にも女性に格闘家の提案をしてくるとは…。


『仮の姿としてグローブになりますから、やはり違う形状を望まれるのでしたら変わりますので』


そう言われては仕方がない。私自身何が自分に合うのかわからないので、それならば今だけでも仮でグローブになってもらう方が良いのかもしれない。



上手く言いくるめられた感は否めないが、過去にも己の拳を武器に戦う格闘家美少女ヒロインがゲームに居たのを思い出し、ぐっと耐える。


聖剣との会話が終了すると、暗かった辺りが明るくなった。


両手を見ると、そこにはメリケンサックが装備されていた。



グローブと違う!!






アルバート王子とウラディミールさんへの説明を考えると頭が痛いが、私が勇者だと証明された一日だった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ