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辺境の元英雄と光の癒し手 -共鳴の絆-  作者: もちすけ34


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【第六話】不屈の灯火 ― 繋がれた命と、明日への誓い

完璧な一撃だった。


まさに全盛期を彷彿とさせる立ち回り。


だが、ホブゴブリンの巨体が完全に沈み込んだ直後、ウエスの身体を劇的な異変が襲った。


ガクン、と膝が折れかける。

視界が急激に明滅し、世界がぐにゃりと歪んだ。肺が焼け付くように熱く、心臓が肋骨を突き破らんばかりに暴れる。

(くそ……っ、たった一撃で、これほど息が上がっている……だと!? 体が……脳のイメージに全くついてこん……!)

死の淵から戻ったばかりの肉体は、極限の技術と、それに伴う瞬間的な超負荷に耐えられる状態ではなかったのだ。


そして、その一瞬の「隙」を、生き残っていたゴブリン2体が見逃すはずがなかった。

「ギギィッ!」

ウエスの動きが止まったのを好機と見た小鬼どもが、左右から同時に跳躍する。


鋭く汚れた爪が、無防備なウエスの首筋へと迫る。

(……くそ、間に合わん……!)

ウエスが辛うじて剣を持ち上げようとした、その刹那――。

「――ウエスッ!!」

獣のような咆哮とともに割り込んできたのは、ドレイクだった。


百戦錬磨の重い盾を容赦なく叩きつけ、ウエスの左側から迫っていたゴブリンを強引に圧殺する。

同時に、右側のゴブリンの足元に、鋭い氷の礫が突き刺さった。ミレイユの放った牽制魔法だ。

動きを止められたゴブリンに対し、震える手で剣を構えたユアンが必死に突撃し、リアナが放った風の支援魔法がユアンの踏み込みを加速させる。

連携とは程遠い、だが必死な若者たちの泥臭い一撃が、見事に残党を討ち果たした。


「はぁ……はぁ……っ」

ウエスはドレイクに肩を支えられ、荒い呼吸を整えながら立ち上がった。

かつての相棒に、命を救われたのだ。


「……すまん、ドレイク。助かった」


「無茶しおって。お前はまだ回復してないだろう」


ドレイクは短く返し、ウエスからスッと手を離した。その目は、かつての戦友への信頼と、無理をしたことへの呆れが混ざり合っていた。

一方――。


戦闘が完全に終わった後も、ガレンはその場から動けずにいた。

大剣を握る両手は、細かく刻むように震えている。

先ほど、死の刃を喉元に突きつけられた恐怖。そして、ウエスの神業のような一撃を間近で見た衝撃。

自分の「強さ」が、実戦という本物の戦場では何一つ通用しなかった。その現実を前にして、王都の天才剣士としてのプライドが完全にへし折られ、ただ呆然と立ち尽くしている。


「……ッ、なんだよ、これ……」

ガレンは震える手を隠すように、強く拳を握りしめた。


怪我はしていない。だが、その目には、ウエスの圧倒的な技量に対する敗北感と、死にかけた自分自身の不甲斐なさへの「憤り」が、ギラギラと尖った敵意のように宿っていた。


「……オッサン。俺は別に、あんたに助けてくれなんて頼んでねえぞ」

ガレンは、ウエスを睨みつけるように言い放った。

声は荒く、尖っている。ウエスの神業に圧倒され、恐怖した自分自身を必死に覆い隠そうとする、精神的な未熟さが全面に出た態度だった。


「あんたが勝手に入り込んできて、勝手に足をもつれさせたんだ。危なっかしくて見てられねえよ」


「ガレン、あなた……!」

ミレイユがその無礼な態度を咎めようとしたが、ウエスはそれを手で制した。


「ああ、お前の言う通りだ、ガレン。次は手を出さずともいいように、俺も鍛え直しておく」

ウエスが静かにそう告げると、ガレンは「チッ」と大きく舌打ちをし、ぷいっと顔を背けて乱暴な足取りで歩き出した。


だが、その首筋から耳の裏にかけては、悔しさと気恥ずかしさで真っ赤に染まっている。

それを見送ったドレイクが、ぼそりと呟いた。

「口だけは一丁前だな、あのお坊ちゃん」

「……まだ若い。あれでいいさ」

ウエスは小さく笑い、再び歩き出した。


ガレンの尖った態度の裏にある、底知れない悔しさと、強くなりたいという本能。


確実に、若者たちの心に何かが刻まれた。ウエスは疼く身体を奮い立たせ、その背中を追いかけた。

 

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