↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
辺境の元英雄と光の癒し手 -共鳴の絆-  作者: もちすけ34


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/88

【第十七話】 身のほど知らずの咆哮と、奇跡のソヨ風

「ひっ……で、出たぞ! 野盗だ!!」


街道の曲がり角。

草むらから、大斧を持った男と長槍を持った男の2人組の野盗が飛び出してきた。


「ヒャッハー! 荷物を置いていきな──」


「しゃあぁぁっ! ぶっ殺してやるぜぇぇっ!」


野盗の決め台詞が終わるより早く、ガレンが「待ってました」とばかりに大剣を抜いて突進した。


「あっ! ガレンさん待ってください! 護衛対象から離れたら──!」


リアナが止める間もない。


「ハハッ、雑魚が二人だけなら一瞬で……うおっ!?」


勢いよく飛び出したガレンだったが、昨日の雨で泥濘(ぬかる)んでいた足元に足をすくわれ、前のめりに派手に体勢を崩してしまった。


「なっ、バカが勝手に転びやがったぞ! ぶっ刺せ!」


槍持ちの野盗が、無防備になったガレンの背中を目がけて槍を繰り出す。


「ガレンさんっ!! 止まって言ったのにぃぃぃっ!!」


半泣きになったリアナは、半ばパニック状態で手を突き出した。


(どうしよう、届かない! でも、助けなきゃ!!)


リアナは無意識に、ガレンの体へ風を叩きつけた。

教わった攻撃魔法ではない。「そっちに行かないで!」と背中を横から突っぱねるような、半ば投げやりな強風だ。


ドガッ!!


「ぶふぇっ!?」


ガレンの巨体が、まるで見えない巨大な手に横から殴られたように、不自然な角度で地面を横滑りした。


直後、ガレンがいた空間を野盗の槍がむなしく空切る。


「な、なんだぁ!?」


「ぶはっ! な、何すんだリア! 酔うだろ!!」


泥だらけになりながら立ち上がるガレンに、リアナが叫び返す。


「文句言わないでください! ガレンさんが勝手に転ぶから助けたんじゃないですか!!」


「威力が強すぎるんだよ! ……って、後ろからもう一人が来てるぞ!」


大斧を持ったもう一人の野盗が、横転したガレンへ上段から斧を振り下ろす。


「危ないっ!!」


リアナが再び「向こういって!」と夢中で風を放つ。

今度はガレンの手元に風が直撃し、勢い余ってガレンの大剣が跳ね上がった。


ギィィンッ!!


「うおっ!? 剣が勝手に……!?」


リアナの風で押し上げられたガレンの大剣が、偶然にも野盗の大斧を根元から弾き飛ばし、そのままの勢いで野盗の胸元へ強烈な柄打ち(ツカうち)となって叩きつけられた。


「ごふっ……!?」


大斧の野盗が白目を剥いて倒れ込む。


「え、えええ……!? たまたま当たった!?」


目を丸くするリアナ。


残された槍持ちの野盗は、泥だらけで大剣を構えるガレンと、必死な顔で手をかざすリアナの「意味の分からない動き」に恐怖を感じ、逃げ出した。


「ひ、ひぃぃぃっ! 化け物どもめーっ!」


「あ、待てコラぁ! 逃げるなっ……って、逃げられたか……」


戦闘が終わると、街道には倒れた野盗一人と、泥だらけのガレン、そして膝から崩れ落ちるリアナが残された。


「はぁ……はぁ……つ、疲れたぁぁぁ……」


緊張の糸が切れたリアナは、その場でへたり込んでしまった。

ガレンは大剣を背中に背負い直し、泥を拭いながらズカズカとリアナへ歩み寄ってくる。


(う、うう……やっぱり『変な風ぶつけるな』って怒られる……!)


ぎゅっと目を瞑るリアナ。

だが、頭上に降ってきたのは、雑で豪快な頭ワシワシだった。


「ひゃうっ!? 髪がぐしゃぐしゃになりますガレンさんっ!」


「へっ……おい、落ちこぼれ」


「落ちこぼれって言わないでくださいって……」


「……悪くなかったぜ、お前のあのソヨ風。おかげで死なずに済んだ」


「え……?」


ガレンは気まずそうに横を向きながら、ニッと八重歯を見せて笑った。


「これからは俺が突っ込む時は、ちゃんと後ろから風で合わせろよな。一回でもタイミングズレたらぶっ殺すぞ」


「そんな無茶苦茶な言い方ありますか!?」


抗議しながらも、リアナは胸の奥が少し温かくなるのを感じていた。

自分の「地味で弱い風」が、破天荒な先輩の命を救ったのだ。


……その傍らで、捕らえた野盗の懐を調べていたウエスが、硬い表情で何かを拾い上げた。


「隊長、何かありましたか?」


ドレイクが歩み寄る。


「……ただの野盗にしちゃ、えらく上質な『官品の硬貨』を持っている。それに、この手慣れていない刃の研ぎ方……」


ウエスは遠くの山並みを見つめ、静かに呟いた。


「最近増えている野盗……どうやら、ただの食い詰め者の集まりじゃなさそうだぞ」


「……裏に、何か大きな動きがある、と?」


「ああ。……だが、今は目の前の任務だ」


ウエスは表情を和らげ、泥だらけで口喧嘩をしているガレンとリアナへ視線を戻した。


「おい、お二人さん! 泥を落としたら出発だ! まだ護衛の途中だぞ!」


「はーい! ほらガレンさん、泥落としてください!」


「へっ、これくらい男の勲章だっつーの!」


たまたま噛み合った(?)奇跡の凸凹コンビ。


二人の賑やかな声が響く中、一行は不穏な影が差し込みつつある街道を、再び進み始めるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。