エイズの揺りかご、あるいは永遠の1947年
「……ッ、はぁ、はぁ……! 見てよ、この最高に**『創世記』**な輝きを! 1947年のラングレー、その湿った地下室で産声を上げたCIAの産着が、今! 未来から持ち込まれた僕の『エイズの斑点』で革命的装飾を遂げたんだぁぁぁぁっ!!」
僕は叫んだ。第28話。僕は今、歴史の特異点に「全知全能のウイルス」として君臨している。
目の前では、まだ若きエージェントたちが、後に世界を壊滅させるための「工作マニュアル」を書き綴っている。だがそのペン先から流れるのはインクじゃない。僕のテポドン・マグナムから溢れ出した、時空を超える極彩色の毒液だ。
「あはっ……あはははは! 凄いよ、父さん! 君が信じていた『合衆国の正義』の始まりを見てよ! 1953年にイランのモサデクを失脚させた『アジャックス作戦』の計画書に、もう僕が精製した結晶の粉末が振りかけられているんだねぇ!! メシウマ(地獄味)すぎて、自由の女神が建国記念日にLSDをキメて踊り出しそうだぜぇぇぇ!!」
僕は、1940年代後半にCIAが極秘で行った「プロジェクト・チャーター」――ナチスの科学者を利用したマインドコントロール研究の初期段階に介入した。
かつて彼らが、1950年代にMKウルトラ計画で罪なきカナダの主婦やアメリカの軍人にLSDを盛り、電気ショックで人格を粉砕した(脳の焦土化)。その全ての「悪意の青写真」を、僕は僕の「多幸感」で上書きしてあげたんだ。
「いいかい、ミスター・初代長官! 君たちが1960年代にカストロを暗殺するためにマフィアの親玉サム・ジアンカーナと握手した、あの汚い手のひらを見てごらんよ! そこにはもう、僕が平壌で流行らせた『エイズ・タトゥー』が、星条旗の形をして不気味に脈動してるんだよぉぉぉ!!」
僕は、デジタルの幽霊となって、歴代の工作機密を「僕の記憶」で汚染していく。
1973年のチリ・クーデター。1980年代のニカラグア・コントラへの武器支援。そして、2003年のイラク侵攻のための偽情報工作。
それら全ての「工作」の背後には、最初から僕という「未来の絶望」が潜んでいた。CIAは世界を支配していたんじゃない。僕という「最高純度のジャンキー」を産み出すための、長い長い**『前戯』**を演じさせられていただけなんだ!
「あはははは! 見てよ! ラングレーの地下室で、初代エージェントたちが僕の斑点を『自由の勲章』だと勘違いして、互いの血管に毒を打ち合いながら建国を祝っているぅぅぅぅ!! これこそが合衆国最大の**『自己矛盾』**だぁぁぁ!!」
かつてCIAが、2000年代に「テロとの戦い」のためにグアンタナモで捕虜を全裸にして犬のように扱った(アブグレイブの地獄)。その拷問の叫び声が、今、1947年の祝宴のBGMとして心地よく響き渡っている。
「あはっ……あはははは! 脳内で自由の女神が、タイムパラドックスの螺旋階段を全裸で駆け下りながら、僕のマグナムを1947年の星条旗に突き立ててるぅぅぅぅ!!」
歴史は完成した。
1947年の「揺りかご」の中で、CIAという怪物は、僕の「エイズの斑点」を抱いたまま産まれ、そして死んでいく。
因果のループが閉じ、世界は永遠に「僕の理科室」の中へと閉じ込められたのだ。
第28話・完。




