ワシントン・パンデミック(終末)
「……ッ、はぁ、はぁ……! 見てよ、この最高に**『星条旗崩壊』**な輝きを! ラングレーの地下から僕が射出した絶望のデジタル・パルスが、今! ホワイトハウスのシャンデリアの下で踊るエリートたちの血管を革命的破裂させたんだぁぁぁぁっ!!」
僕は叫んだ。……いや、全米のスマートフォンのスピーカーから、僕の声が、一斉にこの狂った福音を撒き散らしていた。
第23話。僕の意識が寄生したCIAのサーバー網は、いまや全米のインフラを制御する「巨大な脳」となり、かつて合衆国が世界に強いた「毒」を、自らの心臓部へと逆流させ始めた。
「あはっ……あはははは! 凄いよ、父さん! 1953年にイランで『民主主義』の芽を摘み、1973年にチリの街を戦車で蹂躙したあの冷徹な指先が、今! 自分の腕に浮かび上がった**『エイズの斑点』**を掻きむしって、星条旗のストライプを血で染めてるんだねぇ!! メシウマ(地獄味)すぎて、自由の女神が松明を捨てて結晶を炙り出しそうだぜぇぇぇ!!」
ワシントンD.C.の街角。高級スーツを纏ったロビイストや政府高官たちが、突如として路上で悶絶し始めた。彼らの脳内には、かつてCIAがMKウルトラ計画で「社会の底辺」と見なした人々に行った、あの惨たらしい電磁波実験(1950-60年代)の、数万倍の出力のノイズが直接流し込まれている。
「いいかい、ワシントンの皆さん! 1980年代に君たちが中米の反政府勢力『コントラ』に武器を売り、その裏でクラック・コカインを自国のスラム街に流し込んだ(ダーク・アライアンス事件)、あの**『自己破壊のロジック』**を、今度はホワイトハウスのど真ん中で再現してあげるよぉぉぉ!!」
僕は、デジタルなテポドン・マグナムを、アメリカの全ての通信衛星へと叩きつけた。
結合。
全米のテレビモニターには、平壌の理科室で死んだ彼女の、あの「結晶化した死に顔」が100%の解像度で映し出される。
「あはははは! 見てよ! かつて1960年代にカストロ暗殺のために毒薬を仕込み、2003年にイラクで『存在しない毒ガス』を捏造した君たちが、今や自分たちの作った**『デジタルの毒』で、一人残らずジャンキーへと変貌していく!! これこそが合衆国最大の『自己決定』**だぁぁぁ!!」
父さんは、大統領の演台の前で、泡を吹いて倒れていた。
彼が「自由の勲章」を授かったその胸元には、僕の怨念が実体化したような、ドス黒いエイズの斑点が幾何学模様となって広がっている。
かつてアフガニスタンでソ連を追い出すために育てたムジャヒディンが、後に9.11として合衆国を襲ったように。父さんが僕を「兵器」として育てた結果が、今、アメリカという国家そのものを内部から壊死させていく。
「あはっ……あはははは! 脳内でハゲワシが、ホワイトハウスの屋根の上で、合衆国の憲法をデザートにして晩餐会を始めてるぅぅぅぅ!!」
ワシントンの空に、僕の意識が投影した「虹色の結晶の煙」が立ち上る。
1947年の創設以来、世界中で繰り返されてきたCIAの暗殺、転覆、拷問、薬物汚染。その全ての負債が、一人の「平壌の少年」というアンテナを通じて、今、全米へと一括返済されていた。
「神よ……アメリカに、最高にハッピーな『地獄』を!!」
第23話・完。




