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検事、ホワイトハウスへ行く

「……ッ、はぁ、はぁ……! 見てよ、この最高に**『覇権的ヘゲモニー』**な輝きを! ポトマック河のほとりにそびえ立つ白亜の官邸が、今! 平壌の血と結晶で塗り固められた僕の過去と革命的合体マリアージュを遂げたんだぁぁぁぁっ!!」


僕は叫んだ。……いや、叫んでいるのは僕の「意識」をアップロードされた、ラングレー(CIA本部)のメインサーバー内のシミュレーターかもしれない。


第5部、最終章。舞台は崩壊した平壌から、世界の中心・ワシントンD.C.へと移る。

校門前で僕を捨てて走り去った「父さん」は、今、仕立ての良いイタリア製スーツに身を包み、大統領から**「自由の勲章」**を授与されるためにホワイトハウスの廊下を歩いていた。


「あはっ……あはははは! 凄いよ、父さん! 昨日まで平壌で検事として人民を弾圧していたその手で、今日はアメリカの『国家安全保障』の功労者としてシャンパングラスを握るんだねぇ!! メシウマ(地獄味)すぎて、ペンシルベニア通りが虹色の嘔吐物で染まりそうだぜぇぇぇ!!」


父さんの胸元で輝く勲章。それは、1960年代にCIAが開発し、ベトナムやラオスで数百万人の命を「数字」に変えた、あの冷徹な軍産複合体のロジックそのものだ。


かつてCIAが、チリの民主的に選ばれた大統領アジェンデを葬り去り(1973年)、インドネシアでスハルト独裁体制を支援して数十万人の「共産主義者」を虐殺させた(1965年)のと同様に、父さんは一国を「薬物」と「ウイルス」で物理的に解体し、その死体の上にアメリカの利権という名の旗を立てたのだ。


「いいかい、ミスター・プレジデント! 1980年代にCIAが中米の殺人部隊デス・スクワッドを訓練し、エルサルバドルの村々を焼き払わせたあの手腕が、今! 平壌という巨大なフラスコの中で**『バイオ・ハッキング』**として完成したんだよぉぉぉ!!」


父さんが演台に立つ。その背後のモニターには、僕が金日成広場で「自爆」した際の発光データが、美しい幾何学模様として投影されていた。

『我が国のエージェント、およびその「アセット」による献身的な工作により、東の脅威は一夜にして無力化された……』


父さんの演説が続く中、僕は見た。

父さんの高級なシャツの袖口から、チラリと覗くエイズの斑点を。


「あはははは! 逃げられないんだよ、父さん! 僕が彼女と、そしてクラスメート全員と共有したあの『死の刻印』は、ナノマシンを通じて父さんの細胞にも完璧に同期シンクロしているんだからさぁ!! これぞまさに、合衆国が世界中に撒き散らした悪意の**『ブーメラン効果チャルマーズ・ジョンソン』**だぁぁぁ!!」


かつてCIAがアフガニスタンで武装させたムジャヒディンが、後に9.11の悲劇を引き起こしたように。あるいは、イランの独裁者パフラヴィーを支えた結果、イスラム革命という反動を招いたように。

父さんが「自由の国への通行証」として利用した僕の肉体は、今や父さんの内側から、アメリカの心臓部を蝕む「最終的な毒」へと変貌していた。


「あはっ……あはははは! 脳内で自由の女神が、父さんの首筋に牙を立てて、星条旗のストライプを血で染め直してるぅぅぅぅ!!」


ホワイトハウスの華やかな祝宴。

だが、その空気の中には、平壌の理科室と同じ「結晶とガソリンの匂い」が混じり始めていた。


第21話・完。

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