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灰と灯火のグリモワール  作者: みむらす
第二部 雪の降る日 中編【女神様の加護】
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5話 ヴェルディアスの街

 おじさんと別れた僕たちは、ヴェルディアスの中央にある魔術学院へと向かって歩いていた。

 宿に行こうと言ってきたローゼンを説得して学院を一目見ておきたかったからだ。

 もしかしたら偶然アリスに再会できるかもしれないという期待もあった。


 その道、大きな通りの周囲には様々な露店が並んでいる。

 魔道具や武器を扱ったお店もあれば、食べ物を扱った店など、内容は様々だ。

 多くの人が行き交い、それぞれの店も繁盛していることが見て取れる。

 

「カイン、気づいたか……?」

 振り向くと、ローゼンが神妙な顔をして足元を見つめていた。

 なんだろう? 周りの様子に気を取られていたせいか、何も気が付かなかった。

 そんな僕に、ローゼンはスッと地面を指差す。


「もしかして、この街の道――」


 僕の中に、ピリッと緊張が走った。

 そこにはただ規則正しく並べられた石で舗装された道が続いているだけにしか見えない。


 罠か何かだろうか?

 いやいや、ここは街中だ。


 いったい何が――。


「――全部舗装されているんじゃないか……?」


「あー……」

 なんだ、そんなことか。

 確かに北域圏のグラティアは、中央広場と広場と門を繋ぐ道以外は舗装されていなかったっけ。


「僕が前に住んでいたオルスタッドもこんな感じだったよ」

「なんだと! この貴族め!」


 この街に来てからというもの、ローゼンはグラティアとの違いを楽しんでいるようだ。

 小さい頃に一度来たことがあるらしいが、あまり記憶に残っていないのだろう。


 ふと、ローゼン越しに遠くに聳える建物が視界に入ると、ドクンと心臓が高鳴った。

 まるで城のように屋根が尖った建物。

 きっと、あれが――。

 その建物を指差す僕の手は少し震えていた。


「あれが――、魔術学院かな?」

「お。そうだ、あんな感じの建物だった気がする」


 あそこにアリスが――。

 ようやく会える!

 そんな僕の気持ちの高鳴りを掻き乱すように、通りに悲鳴が響き渡った。


「誰か、助けて――!」


 人混みを掻き分け、一人の男が僕たちの前を横切り駆け抜けていく。

 それから少し距離を置いて、泣きそうな顔の少女が男の後を追っていた。


毎週日曜の20時に更新しています。

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