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既視感あるくない?  作者: むぅむぅ星人


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第98話「別れと新たな剣」

ーールーティア基地・滑走路。


臨時司令基地司令のミハエルが、新司令官を出迎える。


輸送機より男が降り立つ。

四十代後半。清潔な軍服に身を包み、威厳を漂わせている。

制服組の典型とも言える出で立ちだが、その眼光には鋭さと冷徹さが宿っていた。


ミハエルは敬礼する。

「ディートリッヒ・クラウセン少将。

 着任お待ちしておりました。」

ディートリッヒ・クラウセン少将は、特に反応も無い。


続いて、また一人自信に満ちた将官が降りてきた。

「クラウセン閣下は、不要な会話を望まん方だ。」

ミハエルは、身構える。

「マクシミリアン・シュヴァイツァー大佐でいらっしゃいますね。」

シュヴァイツァーーーそう、彼は強行派筆頭のアレクサンドル・シュヴァイツァー大将の息子である。

エウロパ軍強硬派は、いよいよ本気を出してきたのだ。


シュヴァイツァーJr.は威圧する。

「父上より、貴官の管理を任されている。

 もう今までの様に自由があると思わない事だ。」

シュヴァイツァーJr.に早々に釘を打たれるが、ミハエルはなんとか反抗する。

「私は軍人です。

 命令違反なども犯しておりませんし、何ら問題はないと自覚していますが?」

シュヴァイツァーJr.は笑って返す。

「ははは。そうやって言葉巧みにカルドーネも封じていた訳だ。

 ……だが、クラウセン様や私はそうはいかんぞ。

 常に父上の影が、貴官を見張っていると思うがいい。」


「そう、脅す事もない。」

クラウセンは言葉少なくシュヴァイツァーJr.を制する。

しかし、ミハエルに向ける目は氷のように冷たく研ぎ澄まされていた。


そして輸送機は続々降り立つ。

前回の作戦で失ったACEの補充……だけではなかった。

規律正しく、感情の見えない兵士たち。

それはロボットのように乱れも無駄口も無く、淡々と降りていた。


「……兵員補充に関して、ここまで必要か?」

呟くミハエルに、シュヴァイツァーJr.が言う。

「兵を交換する。

 戦績をみれば、ここの常駐兵には戦争への意欲を感じん。

 カルドーネは合理的に使ったが、結果があれだ。」

シュヴァイツァーJr.の表情に少し狂気が滲む。

「よって、クラウセン様麾下の兵を使う。

 もはやダラダラと攻防している場合ではなのだよ、中佐。

 本国では、戦争に対する疑問の声が大きくなり出している。

 今の内に戦果を挙げる必要があるのだ。」

クラウセンは息巻くシュヴァイツァーJr.を抑えて呟く。

「戦争は長引くほど死者が増える…

 短期決着。それが唯一の救いだ。」

ミハエルは咄嗟に返す。

「しかし、それが国民の声であれば、我々も立ち位置を改めるべき所にいると言う事では?」


シュヴァイツァーJr.はミハエルを睨む。

「国民感情など戦況で覆せる。

 元より貴官らが、ダラダラ侵攻をしていたから戦争が収束しないのだ。

 これよりは、戦果を優先する。

 ……まぁクラウセン様の手腕を見ているがいい。」


シュヴァイツァーJr.の不敵な笑みを見て、ミハエルは戦慄した。

(ここまで必死に国境線維持をしてきたが……我々には限界があるか!)



ーーケアン基地・滑走路。


ホワイトファングメンバーを先頭に非番の兵たちが、そわそわと待ちわびる。


ミリィとゾーイが仲良く話している。

「なんかアレから随分仲いいな。」

レイが不思議に思う。

「女の友情は一度出来たら固いのよ。ねー。」

「ねー。」

レイが頭をポリポリ掻く。

「ま、仲いい事はいい事だからなー。」

キースも笑顔で頷く。

「ゾーイな、結局普通に俺たちの頼もしい後輩だったわ。」

レイが深堀する。

「ん?じゃあアイツなんでミリィにちょっかい掛けてたんだ?」

キースはばつが悪くなり、空を見上げる。

「え?!それは……まぁ……お!来たぞ!!」


一機の輸送機が降り立つ。


タラップが降り、一人が手を振りながら笑顔で降り立つ。

ヘレンだ。


「お帰りなさい!」「お帰りなさい!」

「おかえり、ヘレン!」

「待ってたぜ!」

「三週間ぶりですね!」

「元気そうだな。」

「また、よろしくお願いします。」

皆の歓迎に、ヘレンも応える。

「みんな、心配かけてごめんなさい。

 でも、もうすっかり元通り!

 またよろしくね!」


ヘレンの笑顔で皆が和む。


ただ一人、キースは複雑な顔でいる。

「ヘレン……」

ヘレンはキースに走って近づくと、ぎゅっと抱きついた。

「ちょ!ヘレン?!」

驚くキースを他所に、ヘレンはそのままでいる。

「ずっと、こうしたかった……」

キースもヘレンを見て抱き返す。

「俺も……」


ーー戦場とは思えない、幸せな時間が二人を包む。


しかし、二人に割って入る空気の読めないボンド大佐がズケズケ入り込んで来た。

「お前たち、ここは戦場だぞ!

 それに、スチュアート軍曹、報告があるだろ。」

ヘレンもハッとして、切り返す。

「す、すみません。大佐。」

レイが興味本位に聞く。

「報告って?」

ヘレンはニコリと笑って言う。

「みんなにお土産があるんだ。」

そう言って、格納庫へ案内した。



ーー格納庫。


増援のアスカロンが並ぶ中、見慣れない機体が九機。

ヘレンとボンドが前に立つ。

「これがお土産よ。」

ライトアップされたその九機。


マリアが一目散に機体に近づく。

「新型だぁ!」

「新しいおもちゃもらったガキみたいだな。」

ケビンはマリアを小馬鹿にしながらも、胸躍らせ触っている。

「こらこら、お前たち。まだペタペタ触るなよ。」

ユアンは落ち着いて、二人を制する。


「ローラーダッシュを標準装備……出力はアスカロンの1.5倍か!」

スペック表を読んで、サイラスが驚く。

「これならシュヴァルツアドラーにも対抗できるな。」

ビルも腕を鳴らす。

キースは静かに機体を見上げた。

(……そうだ、これなら……!)


浮かれるメンバーにボンドが一喝する。

「落ち着け!

 先ずは俺の話を聞け。」

一同は並び直す。


ボンドは咳払いをして続ける。

「見ての通り、お前たちの新機体だ。

 コードネーム<エクスカリバー>。

 我がコロンゴ軍技術陣が総力を結集した最新にして最強機体だ!」

レイが呆れて言う。

「そりゃ、見りゃ分かる事じゃないですか…」

ボンドは話の腰を折られて少し怪訝になる。

「と、ともかくだ。

 この機体は見ての通り新技術も取り込んでおり…」

「私たち専用兼実験機って事ですね。

 もう慣れましたよ。」

ミリィがサラリと先読みして言うので、更にボンドは益々不機嫌になる。

「ウォレン大尉!

 隊員の教育はどーなっとるんだ。」

キースは半笑で返す。

「しかし、大佐が当たり前の事しか言わないから仕方ないですよ。」

怒りで両拳を握り込み、両腕を鋭く”くの字”に固めただすボンド。

それをゾーイが優しくフォローするして、肩を軽く叩く。

「まーまー。大佐の言いたいことは伝わりましたよ、はい。」

ゾーイの笑顔で、ボンドも沸点を下げる。

「ん、ベネット中尉の言う通りだな。

 ともかく、俺が言いたのはお前たちは最新機を回してもらえるが、実績を出せと言う事だ。

 あと、これはオセリス准将から計らいだから、ありがたく思えよ。」

レイが小声で言う。

「それを初めから言えよ…」

ボンドがレイに突っ込む。

「ヒューマン中尉、何か言ったか?」

「いえ!何もありません!

 ありがたく頂戴いたしましす!」

前にもあった同じ事を思い出し、皆笑いをこらえる。


ボンドは一息つき話題を変える。

「で、ヘレン軍曹復帰に伴い、ベネット中尉はホワイトファングより抜ける事になる。」

ゾーイは笑顔で言う。

「残念だけど、仕方ないね。

 みんなと戦えた事、私は誇りに思うよ。」

キースも頷く。

「あぁ。さすがオセリス大佐が”逸材”と言っただけあったな。

 君なら必ず最高の士官になるだろう。」

キースとゾーイは固い握手を交わす。

ゾーイは少し涙目だが、笑顔は絶やさない。

「ローラーダッシュは慣れるのに大変だけど、慣れれば爽快よ!

 みんななら直ぐ使いこなせると思うわ!」

気丈に笑う彼女でも、涙は制御できず、瞳から溢れ出してしまった。

「あー。私もホワイトファングメンバーになりたかったなぁー。

 もう仲間になれないのかぁー。」

上を見て涙を隠すゾーイに、ミリィがそっと手をやり涙を拭う。

「ゾーイならきっと私たちみたいな最高の部隊を作れるよ!

 その時こそ、また一緒に。ね!」

ゾーイは残りの涙を指で拭って、笑顔を直してミリィと握手する。

「ありがと。

 またオセリス准将の元でがんばるわ。」

そして、小声でミリィの耳元に語りかける。

「貴方たちの絆は誰も壊せやしないから、安心してね。」

ミリィは思わず真っ赤になる。


ゾーイはヘレンに近づき、肩に手をやる。

「穴はやれるだけ埋めたよ。

 キースの事、よろしくね!」

「はい!」

ヘレンも笑顔で答える。


名残惜しい空気を変える為、レイは言う。

「それじゃ、今夜はヘレンの歓迎会とゾーイの壮行会だな!」

待ってましたとばかりに、ボンドは威勢よく叱る。

「バカモン!戦時中にそんな呑気な事やっとる場合か!」

二人を見て皆が大いに笑った。


ゾーイ・ベネット。

常に笑顔を絶やさない彼女は、凛々しくも愛嬌がある士官だった。


再会できる日を待ち望みながら、ホワイトファング達は彼女を見送った。


別れと共に、新たな力を得たホワイトファング。

希望を胸に、彼らは新たな剣を握る。


その刃が、何を断ち切るのか――まだ誰も知らなかった。

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