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既視感あるくない?  作者: むぅむぅ星人


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第89話「奇妙な共闘」

ーーヴァレン峠。


シュヴァルツアドラーを先頭に、部隊は峠を降りていた。


「ここまで敵の反撃が無いのか……」

ミハエルは、あまりに順調すぎる進軍に違和感を覚えていた。

「ベルント、どうだ? 何か感じるか?」

マルティンが気を利かせて尋ねる。

だがベルントは首を振るだけだった。


峠は濃い霧に包まれている。

その先の様子はまったく見えない。

「出たとこ勝負って事か。」

ギデオンが皮肉気味に言う。

「あらゆる想定はしてある。」

ロメロが自信ありげに答える。

「「間違いありませんわ。」」

ワーグナーツインズもそれに続いた。

しかしレティシアが肩をすくめる。

「それでも、”まさか”を仕掛けてくるのかホワイトファングだよ。」

珍しくエミールも同調した。

「その通り。常に不測の事態に備える姿勢は崩すべきではありません。」


ミハエルは頷き、進軍速度を落とす。

しかしそれを妨げる通信が入る。

『ファフナー中佐。進軍が予定より遅れていないか?』

ダミアーノ・カルドーネ少将だった。

ミハエルは小さくため息をつきながら応答する。

「予想以上に霧が濃く、レーダー等の索敵も困難です。

 軽率な行動は控えるべきかと。」

カルドーネは鼻で笑った。

『だからこそ、Ace of ACEsの貴官らを先行させているのではないか。

 君の部隊であれば、どんな相手でも対処は容易だろう?』

その挑発的な態度に、ミハエルの歯がわずかに軋む。

「我が隊は生贄部隊ですか?」

カルドーネは挑発的に言う。

『貴官らの能力を評価してこそだ。

 栄えあるエウロパ軍の英雄の力……存分に発揮してもらいたいものだ。』

通信は一方的に切れた。


「毎度毎度、よくあんな嫌味が言えるもんですね。」

マルティンが呆れて言う。

「この命令……やはりそういう意味だったか。不愉快だ。」

ロメロも怒りを隠せない。

しかしミハエルは二人を制した。

「とは言え、今はカルドーネ閣下の部隊だ。

 軍人たる者、命令は絶対だ。」


やがてレーダーに反応が現れる。

「機影確認。

 峠出口で待ち伏せってか。」

レコン機でもあるギデオンが報告する。

「数は?」

ミハエルが問う。

「一、二……二十七。」

ギデオンが即応する。


ミハエルは足を止めた。

「大隊で歓迎か。戦力は同数……

 峠口で交戦すれば敵の包囲を受ける。」


しばし思案し、決断する。

「シュヴァルツアドラー隊のみで先行する。

 峠口の橋頭保を築く。」

 

シュヴァルツアドラー隊が最大速で峠を下る。

出口付近で、ミサイルと砲撃が降り注いだ。

「敵の遠距離射程に入ったっスね。」

ベルントが先行してシールドを展開する。

「っく!この狭い通りじゃ良い的だな。」

マルティンが回避しながら軽口を飛ばす。

「私が迎撃に回る。」

ロメロが歩調を落とし、ミサイル迎撃に集中する。

「「ロメロ様を援護します。」」

ワーグナーツインズもそれに加わる。

「分かった。

 第三小隊はここで敵攻撃を防げ。

 第一、第二小隊は下る!」

ミハエルは第三小隊に後を預け、先を急ぐ。


シュヴァルツアドラー隊の第一、第二小隊が峠を突破する。

霧が徐々に薄れていく。

そして敵の全容が見えた。


「…白い機体?」

「アスカロンのノーマルカラーじゃないね。」

エミールは不可思議に思い、レティシアが分析する。


峠出口に差し掛かった瞬間。

「な!!!」

「全部ホイワトファングカラーじゃねーか!」

「こりゃどーなってんスか?」

マルティン、ギデオン、ベルントが混乱する。


一方でキースは冷静に考えていた。

(ミハエル達が先行しているのか……

 なら!)


キースはジェイソン・モリス少将に通信する。

「シュヴァルツアドラー隊に橋頭保を築かれる前に、ホワイトファング第一小隊で出口を塞ぎます。」

モリスは驚く。

『第一小隊だけで可能なのか?

 それに、抜けてきたシュヴァルツアドラーの六機は?』

キースは落ち着いて答える。

「問題ありません。

 シュヴァルツアドラーへの対処には、第三大隊の増援をお願いできますか。」

モリスはキースの言葉を信じる。

『分かった。大尉を信じよう。

 第三大隊、出撃せよ。』

通信が終わる。


キースはすぐに第一大隊へ伝える。

『作戦変更だ。

 みんなはシュヴァルツアドラーに集中してくれ。

 俺たちは峠出口で敵後続を止める。

 背中を任せる。頼んだぞ!』


そしてケビンとマリアを見る。

「俺のやりたい事が分かるな?」

「「はい!敵の被害を最小限に、ですね!」」

それだけで十分だった。


キース達ホワイトファング第一小隊は、ミハエル達に向かって突進する。

「来た!」

「でも一個小隊だけだよ!」

エミールが構え、レティシアがミハエルを見る。

「ホワイトファング大隊とでも言うのか…

 その中で突出する一個小隊……」

ミハエルは状況を理解するのに一瞬だけ時間を要した。


その隙をキースは逃さない。

脇目も振らず、シュヴァルツアドラーを抜けた。

「あ!?」

「抜かれたぞ!」

ベルントが唖然とし、ギデオンが焦る。

「しかし、奴ら自分から挟まれに行ったぞ。

 何考えてんだ?」

マルティンは首を傾げる。


キース達第一小隊は、峠出口で立ちはだかった。

「なんだぁ?」

「待て!ホワイトファングだ!」

「出口を塞いでるぞ!」

後続のエウロパ軍は、ホワイトファングの姿を見て驚愕する。


その隙にマリアはスモークグレネードを放つ。

辺りが煙に包まれる。

そしてーー

「どこだ?……ぐぁ!」

「脚部破損!」

「くそ!こっちは両腕を突かれた!」

煙が晴れると、そこにはACEの残骸が転がっていた。

脱出したパイロット達が混乱している。


「中佐!こちら後続部隊。

 敵の一個小隊に進軍を阻まれています!

 ホワイトファングです!」

後続の指揮官が悲鳴を上げる。


ミハエルは静かに考えた。

(ホワイトファングカラー一色の部隊…当然ブラフだ。

 先行したのが真のホワイトファングだろう。一個小隊だが。

 そして彼らは我々を無視して、後続を止めている。

 しかも不殺だ。)


ーーー


答えに辿り着いた瞬間。

ミハエルは珍しく高笑いした。

「ふっふふ……はぁーはっはっはっは!

 なるほどな、キース・ウォレン!」

ミハエルは一旦全通信を切る。

そして呟く。

「いいだろう。その策、乗ってやろう!」

その顔は晴れやかだった。


ふたたび通信を回復させるが、それはシュヴァルツアドラー隊専用だった。

「状況は把握した。

 第一、第二小隊は半包囲状態だ。

 これを突破する。」

エミールが確認する。

「敵のホワイトファング大隊を抜けるのですか?」

ミハエルは頷く。

「あぁ。彼らは偽りのホワイトファングだ。

 相手にならん。

 ゆえに無駄な殺生も不要。

 行動不能に収めて戦場を混乱させてやればいい。」

レティシアは察した。

「なるほどね。

 敵がパイロットを残して混乱させてるなら、こっちもやるってわけね。」

マルティンが腕を鳴らす。

「こりゃ派手に暴れられそうだ。」

「隊長、“倒す”じゃなく“行動不能”ですよ。」

ギデオンが釘を刺す。


ミハエルは続ける。

「第三小隊は遠距離攻撃を迎撃しつつ、後退部隊を援護」

ロメロは言う。

「しかし、それでは進軍が止まってしまいますが…」

ミハエルは首を振る。

「どうせ、カルドーネ閣下にとって、我々は陽動だ。

 本気を出す必要もない。」

ワーグナーツインズがミハエルに同調する。

「「ミハエル様の仰る通り、ここは適当にあしらいましょう。」」



ーー戦場は奇妙な状態になった。

両軍Aceはお互いを無視し、敵部隊だけを確実に叩く。

だが、どちらも殺傷しない。

パイロットは後続に救助され、残った機体はスクラップに変わる。

両Aceの暗黙の共闘。


これこそがキースの”白オオカミの群れ”作戦の真の狙いだった。



モリスはとしては、大敵シュヴァルツアドラーを抑えながら、ヴァレン峠の進軍を阻止する。

人的被害も抑えられているのだから、心持ちも楽だった。

「敢えて直接交戦を避け、数を減らす…か。

 しかし、互いに示し合わせたかのようだな。」


一方カルドーネは計画が狂い、怒りを募らせていた。

「ファフナー中佐!ふざけているのか!

 ホワイトファングを倒す事が貴官の優先任務だろう!」

ミハエルは意に返さない。

『閣下、敵全機がホワイトファングです。

 なので、手当たり次第に叩いているまでです。

 もっとも、一々撃破する余裕もないので、行動不能で留めるのがやっとですが。』

ミハエルなら、真のホワイトファングを見抜けない訳がない。

そう分かっているが、状況が状況なのでカルドーネもそれ以上口を出せなかった。

(…ミハエル・ファフナーめ!)


しかしカルドーネはすぐに冷静になり、カリビア山脈を見据えて不敵な笑みを浮かべる。

(まぁいい。奴らは所詮陽動。それに敵陣にいる。

 本番で効率的に使わせてもらうまでだ。)


そして、本命の二個大隊がカリビア山脈を確実に登っていた。

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