第104話「聖剣の力」
ーーエウロパ領・ベルドセーヌ平原。
ここはヴァレン峠からカリビア市を結ぶ地域である。
戦前では島有数の穀倉地帯として知られ、黄金色の麦畑が地平線まで広がっていた。
だが今、その面影はない。
鋼鉄の巨人たちが大地を踏み荒らしていた。
ホワイトファングは、哨戒部隊を発見次第しらみつぶしに行動不能にしていった。
「こちらL4哨戒部隊!敵機を…」
「P6 、敵機発見!ぎゃ!」
エクスカリバーの速度に対抗できるACEは、エウロパに存在しない。
行動不能に陥ったACEは、機体を残しパイロットが一目散に退避する。
残った機体をスクラップにする。
ACEの性能が戦場を変える。ーー彼らは縦横無尽に平原を駆けた。
「で、いつまで引っ掻き回すんだこれ?」
敵の攻撃も無く爽快に走っていたレイも、流石に飽きてきた。
「今頃ヴァレン峠で橋頭保を建造してるはずだ。
俺たちはココで哨戒兼牽制行動を続ける。」
ーーヴァレン峠。
ホワイトファングの快進撃で峠を掌握したジェイソン・モリス少将。
彼はカリビア山脈越境部隊をチャーリー・トンプソン大佐に任せ、ここに布陣していた。
「宣言通りだな。
ホワイトファング…いやエクスカリバーの力か。」
兵の一人のが笑う。
「でも、エクスカリバーはホワイトファングにしか扱えませんよ。」
兵の一言でモリスも笑う。
「と言う事は……やはりホワイトファングの力だな。」
やはり、彼ら無しには勝てんな。」
モリスたちは笑いながら、峠から続々と工兵を送っていた。
そんな工兵たちを見ながらモリスは一人呟く。
「いよいよエウロパ領侵攻か……」
モリスの中で様々な感情が入り交ざっていた。
そこへ、キースから通信が入る。
『こちらホワイトファング大隊。
哨戒行動継続中。
………敵部隊を確認。
迎撃に入ります。』
ーーベルドセーヌ平原。
シュヴァルツアドラー隊が、ついにホワイトファングを捉えた。
ギデオンが言う。
「ライブラリ……照合無し。
アスカロンではありませんね。新型だ。」
ミハエルは頷く。
「未知の敵か。
しかし戦闘ログを見る限りホワイトファングで間違いない。
全機、出し惜しみ無しだ。全力で当たれ。」
「「了解。」」
ホワイトファングもシュヴァルツアドラーの存在を確認する。
サイラスが叫ぶ。
「この九機…シュヴァイツァーです!」
ビルが肩を鳴らす。
「リベンジマッチだ。」
ユアンがいつもと違う気迫をみなぎらせる。
「今日は負ける気がしない。
絶対勝つ!」
ケビンがユアンを褒める。
「いつも弱気なアンタがそこまで強気なんだ。
やりましょう!隊長!」
キースも頷く。
「あぁ。
だが無駄にトドメを刺すな。
今の俺たちなら出来るはずだ。」
ヘレンが頷く。
「敵にも命はある。
守れるなら彼らも…ね!」
「よーし、じゃあ私から派手に始めるよー!」
マリアが景気よくマルチランチャーからロケット弾をばら撒く。
弧を描くロケット弾。
ロメロが皮肉る。
「歓迎の花火か?笑止!」
着弾までにすべての弾を迎撃する。
ロケット弾と迎撃ミサイルが空中で爆発する。
ーーAce of ACEsの戦いの開幕である。
「ホワイトファング隊!行くぞ!」
ローラーダッシュで速度を上げ、ホワイトファングがシュヴァルツアドラーに迫った。
シュヴァルツアドラーはそれに冷静に対応する。
「敵は小隊で向かって来る。
ならば、我々もそれに呼応する。
こちらは防戦だ。焦らずとも敵を消耗させる事を優先せよ。」
「「了解。」」
ホワイトファングは三機一個小隊でシュヴァルツアドラーを半包囲する。
対するシュヴァルツアドラーもスリーマンセルで迎撃態勢を取っていた。
奇しくも各三個小隊は、前回の上陸戦と同じ対面となった。
ーー先んじて動いたのは第三小隊。
気迫漂うユアンは頭も冴えわたっていた。
「速度を活かすんです。
ビル、突貫して下さい!」
ユアンの一言に驚くが、ユアンを信じるビルに迷いは無い。
「どんな作戦か知らんが、あの二機を釘付けにすりゃいいんだな!」
ビルは高速で特攻するが、ワーグナーツインズが遮る。
「「やらせませんわ。」」
しかし、ビルは速度を活かして交互にツインズにマシンガンパンチをかます。
「こ、これは!」
「わ、私たちがたった一機に圧されてる!」
「サイラスは右、僕は左から攻める!」
「!ーー了解!」
ユアンの策を察したサイラスは、大きくワーグナーツインズの右を迂回。
ユアンもまたツインズの左に大きく出る。
「私の寵姫をやらせはせん!」
ロメロが即座にマルチロックでユアンとサイラスを捉え、ミサイルを一斉射する。
ユアンはニヤリとする。
「そう、それを待ってた!」
ミサイルは左右に分散している。
つまり、ロメロの得意とするマニュアルロックが出来ない。
しかも標的は高速機。
「く、オートに切り替えても……!」
ロメロが即座にオートロックに切り替えても、高速機を捉える事は出来ない。
ロメロの危機に、ワーグナーツインズが叫ぶ。
「「あぁ!ロメロ様!」」
しかし、敢え無くロメロはサイラスとユアンに挟まれる。
「くっ!こんなバカな!!」
ロメロはロケット弾をばら撒き牽制するも、ユアン達はジャンプする。
「と、飛んだ?!………ぐぁぁあ!!」
ユアン達の飛翔に驚愕するロメロに、ユアンは脚部銃撃、サイラスは両腕にトマホークを投げる。
両腕、脚を砕かれたロメロのガルム。
「「ロメロ様!!」」
ワーグナーツインズが向かうが、ビルに背を見せた事が仇となる。
ビルのマシンガンパンチが二人の頭部に交互連続ヒット。
ツインズのガルムが倒れ込む。
そこへ、戻ってきたユアン、サイラスが向かう。
「「く!」」
死を覚悟するツインズのミハエルから通信が入る。
「二人はロメロを連れて退け!」
指示通り、ツインズはボロボロのロメロのガルムを抱え撤退した。
「やった!」「勝ったな、俺たち!」「隊長の作戦勝ちです!」
三人は宿敵を退け、互いに笑いあった。
ーー一方、第二小隊はミリィの突撃から始まっていた。
ベルントの硬いガルムが立ちはだかる。
しかし、ミリィは相手にしない。
「あなたは後。先ずは奥の隊長機よ!」
そう言って、大きくジャンプし、ベルントを飛び越える。
「そーはさせないっス!」
ベルントは咄嗟にラウンドシールドを飛ばすが、銃弾で軌道が変わる。
「んーーー。またあの勘がいいのかぁ。」
ベルントは鈍速ながら、ラウンドシールドを振り回しながらレイへ突撃する。
「はいはーい。おいでおいでー。」
レイがおどけて銃撃しながらベルントを誘う先に、ドローンが。
ベルントはまんまとNジャマーにかかる。
「うん。これで大人しくなった。ーー来たよ、レイ!」
ギデオンだ。彼はベルントの危機に即座に勘付きヘレンを狙う。
「ベルントをやらせんぞ!」
そこへレイが割って入る。
「それはこっちのセリフだ!」
「はん!、無謀にもスナイパーが接近するのか。」
ベルントは笑ってアサルトライフルを撃つが、レイのエクスカリバーを捉えられない。
「くそ!速いな。しかし、その速さで狙撃はーー」
高速走行しながらのレイの狙撃は、ギデオンの右腕を吹き飛ばした。
「なっ、んだと!」
動揺するギデオンに、追い打ちでヘレンが左腕を削り取る。
「やった!」「オーライ!」
ヘレンとレイはACEでハイタッチする。
そして、マルティンもミリィに苦戦していた。
速度が専売特許だったマルティンのガルムは、ローラーダッシュのミリィに勝てなかったのだ。
「この俺が速さで負ける?!」
「隙は見せない、焦らない!」
落ち着いたミリィは二刀ショートソードすれ違いざまにマルティンを切り刻む。
動きが捉えられないマルティンに成す術は無く、ガルムは両腕を失った。
そこへミハエルの通信が入る。
「防御型のベルントだけではもう無理だ。
退け、マルティン!」
マルティンはギデオンと共に撤退する。
ベルントもヘレンがNジャマーを解いてくれたので、一礼して逃げた。
「っよし!」
ミリィは興奮の中で大きくガッツポーズを取った。
ーーシュヴァルツアドラーは第三、第二小隊と敗れた。
しかし、ミハエルたち第一小隊はいまだ粘りを見せていた。
キースは息を飲む。
(そろそろ頃合いだ……)
キースは何を思うのか。
戦いはホワイトファング優勢。
しかし、地平線の彼方から、無数の機影がゆっくりと現れ始める。
それはまるで、冷たい鉄の壁。
新たな兵団が、平原を埋め尽くそうとしていた。




