表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
既視感あるくない?  作者: むぅむぅ星人


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

101/110

第100話「クラウセンの兵」

ーーエウロパ軍第八艦隊空母ガロア・艦橋。


第八艦隊の旗艦は再び空母ガロア。

その艦橋で、ファビアン・レド准将は新たな指揮権に酔っていた。


レドの元へディートリッヒ・クラウセン少将から通信が入る。

『提督、どうかな新生第八艦隊は?』

“提督”と呼ばれた瞬間、レドの口元がわずかに緩む。

「ヨルムンガンドとクラーケンを失った事は痛手です。

 ですが、第七艦隊の足止めは約束しましょう。

 もっとも要請が通れば第七艦隊など……」

『クラーケンか。』

クラウセンの一言でレドはクラウセンの能力を高く評価する。

「左様です。

 ミドガルズオルム級は所詮ハッタリ艦。

 クラーケンこそ運用次第では一機で艦隊を殲滅出来る。

 ……それをあのバカ…失礼。ルニエ提督はヨルムンガンドの護衛としてしまった。」

クラウセンは特に感想も無く続ける。

『そうだな。私のルートからもクラーケンの補充を催促しよう。』

レドは笑顔で返す。

「少将とはウマが合いそうだ。

 今後ともよろしくお願いしますよ。」

しかし、クラウセンは無反応で一言だけ言う。

『要件は以上だ。』

無機質に通信が切れる。


(随分淡泊な男だな。

 が、カルドーネのように煩くないのも良い。

 あの方が推挙される理由が分かる。)

レドは上機嫌で指揮を執る。

「第七艦隊の動き、寸分でも目を離すな。

 あれに貸しを作れば私としても、海軍としても大きな功績になる。」



ーールーティア基地・司令室。


レドとの通信を終え、クラウセンは基地整備状況に目を落とす。

「海に関しては懸念は無いだろう。

 現状、基地の整備も不十分。

 先ずは敵の侵攻に備える。」

マクシミリアン・シュヴァイツァー大佐は少し苛立ち気味に言う。

「クラウセン様、それは敵も同じではありませんか?

 ここで敢えて打って出る事もーー」

クラウセンはシュヴァイツァーJr.を遮る。

「ならん。兵を無駄にするだけだ。

 地盤が固まらぬ内に浮き足立つのは、愚将のすることだ。

 たとえ敵が攻めて来ようと、確固たる守りが今は重要だ。」

シュヴァイツァーJr.は即座に身を下げる。

「す、すみません。」

クラウセンは無表情でシュヴァイツァーJr.を見る。

「父君へのアピールはいつでも出来る。

 焦らぬ事だ。」

シュヴァイツァーJr.は笑顔で敬礼する。

「は!では、私は基地内の整備に注力致します!」


走り去るシュヴァイツァーJr.をクラウセンは冷ややかに見る。

「愚かな…」


そこへ、通信士が走り込んで来る。

「急報!

 敵大部隊に動きアリ。」

クラウセンは顔色一つ変えない。

「詳細を。」

通信士は、クラウセンの様子に驚きながら報告する。

「は、は!

 敵およそ一個大隊がカリビア山脈へ向かって移動。」


クラウセンは後ろを向き一考し、指示を出す。

「EWACグリフォン三機にヒポグリフ編隊を護衛に付け出せ。

 敵の動向を探りたい。」


グリフォン偵察部隊はカリビア山脈へ向かった。



ーーコロンゴ軍・カリビア山脈部隊。


ジェイソン・モリス少将指揮の下、一個大隊はアスカロン・クライマー装備で前進していた。

「さて、今頃敵に察知された頃か。」


上空ではアルテミス編隊が、先導するかのような飛行を行っている。

『敵航空戦力を確認。

 少し追い払ってきます。』

アルテミス編隊の隊長は報告すると、加速し山脈頂上へ向かった。


モリスは空を見る。

「先ずは、探り合いだ。

 確か司令官がクラウセンとやらに交代したんだったな……

 どこまで食いつくか。」



ーーカリビア山脈山頂。


先の作戦で山頂はやや形を変える程の、砲撃の痕が残っている。

しかし、依然として雪に覆われている。

更に、山肌には雪崩の跡の雪が積層され、氷の壁となっていた。


『ルート確保は困難だな。

 クライマーによる強行登山しかないな。

 これで敵が、このルートを信じるのか……」

アルテミスパイロットは山脈の状況を見て呟く。


やがて山頂に向かって来るグリフォン編隊が姿を現す。

「敵機確認。迎撃行動に移る。」

ヒポグリフ編隊のパイロットは落ち着いた口調だった。


アルテミスパイロットが報告する。

「敵機にEWAC機を確認。

 優先的に落とすぞ。」


再度カリビア山脈山頂で、両軍の空戦が始まった。


幾条ものミサイルの排気煙が山頂の空を覆う。

チャフの反射光が散り、フレアの閃光が空を裂いた。


空戦はミサイルではカタが付かなかった。

アルテミスのパイロットは、敵の能力がかつてのソレとは変わっている事に驚く。

「敵のスキルが上がっている?」

「と言うより、まるで別の軍の様だ。」


膠着する空戦に、痺れを切らしたアルテミスはEWAC機を狙う。

「隙をついて、攻撃をーーーーぐぁ!」

逆に、ヒポグリフに隙を見せる結果となる。

「一機撃墜。」

ヒポグリフのパイロットは無表情で撃墜報告する。


奇妙である。

ACEは感情によって、その性能を活かすも殺すもしてきた。

感情を現さないクラウセン兵は、本来ならACEに不向きであるはず。

しかし、彼らは覇気あるアルテミスパイロットと互角に渡り合っている。


そのカラクリはーー彼らに”迷いが無い”点にある。

訓練された動作を、ただ正確に繰り返す。

クラウセンは彼らをその様に練兵していた。

ーーそう、”感情より精度を選んだ兵”たちなのだ。


与えられた命令を実行する事に集中する。ーーその信念とも言えるモノが彼らのACEの原動力だった。


今まで戦った事の無い異質なACEパイロットに、アルテミス編隊は戸惑う。

「何だこいつら……無人機と戦ってるみたいだ……」

「いや、相手は人間だ。ただ…迷いがない。」


アルテミスの隊長が叫ぶ。

「恐れるな!

 ツーマンセルだ!二機で追い詰めれば隙は生まれるはず!」


アルテミスはツ―マンセルで、ヒポグリフに迫る。

しかし、不利と悟った瞬間にヒポグリフは迷いなく突っ込んできた。

回避ではない。相討ちすら辞さない、一直線の攻撃だった。

「こ、コイツ死ぬのが怖くないのか?!」


アルテミスの隊長はモリスに訴える。

「敵のパイロットは異常です!

 死を恐れない!

 このままでは、こちらが全滅します!」


モリスは予想とは違う展開に、背中に冷たい汗が流れる。

「これまで空戦では数で圧倒されなければ、負けなかったはずだ。

 クラウセン……一体どんな練兵をしてるんだ……」

沈みゆく気分を切り替え、モリスは言う。

「分かった。

 アルテミス編隊は一旦退却せよ。

 立て直しを図る。」


山脈越境部隊はまもなくカリビア山脈麓に差し掛かる。

モリスの表情は一層険しくなる。

「これはフリすら本気でやらねばならんな。

 兵に多大な被害が出るか……」


モリスは不安を抱えつつ、部隊を展開させた。



ーー第七艦隊旗艦サーエヴァンス・艦橋。


『これよりカリビア山脈越境部隊は、越境行動に移る。』

モリスからの通信を受け、ジャスティン・ネルソン中将は頷く。

「では、そろそろ我々も動くか。

 全艦、微速前進。」


第七艦隊は予定通り、囮行動を開始した。



ーー空母ガロア・艦橋。


この第七艦隊の僅かな動きをレドは見逃がさなかった。


観測士が声を上げる。

「敵艦隊に動きアリ!」


レドは立ち上がる。

「やはり動いたか!

 またしても、地上との共同戦線と言う訳だな。

 全艦、動くぞ。」

(ルニエの負の遺産……ここで全て処分してやる。)


レドはルニエの散々な失態を返済すべく、第七艦隊を抑え込まんとしていた。


再び始まったエウロパ領侵攻作戦。


地上では、クラウセン兵の前に苦戦。

海上では、指揮権を手にしたレドが反攻の機会を伺っている。


作戦は始まったばかりだ。

だが、その空にはすでに暗雲が立ち込めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ