ただいま(メルヴェーユ&アリューデ視点)
メルヴェーユは馬車の中でメリッサが喜びそうなテントウムシモチーフの帽子とよくわからん動物のぬいぐるみが入った袋を大切に持っていた。
恐らくメリッサは今日の夜、テントウムシモチーフの帽子を被りながら、新しいぬいぐるみでおままごとをするに違いない。
メリッサのおままごとはいつもギャンブル狂の男などが出てくる。
(城の外で変な奴らと知り合いになってしまった)
城に戻ると、執事がいない。
役人いわく、急病で入院中とのこと。
(お見舞いの品を選ばないとな。メリッサと一緒にカタログでも見るかー)
部屋に戻ると、メリッサがいない。
「メリッサ!戻ったぞ。かくれんぼでもしてるのか?」
メリッサの部屋にもいない。
書斎に行くと一通の手紙があった。メリッサからだ。
***
アリューデはメルヴェーユを出迎えたかったが、家臣たちが難癖をつけたり、忙しかったりして部屋から出ることはかなわかなかった。
「もう。いつになったら、メルヴェーユ様に会いに行けるのよ」
部屋の外がなんだか騒がしい。
「何かしら?」
部屋にメルヴェーユがいきなり入ってきて、開口一番、
「メリッサをどこの修道院に送った?」
「え?」
「どこに送った?」メルヴェーユの声は冷たく、その瞳は射抜くように鋭い。
アリューデは動揺しながらも、
「メリッサは自分の意志で……修道院へ行ったと聞いております」
メルヴェーユは一通の手紙を読み出した。
「メルヴェーユ様へ
私は王妃様の命令で、自分の意志で田舎の修道院へ行くことになりました。
修道院に行ったら、どこの修道院なのかお手紙でお知らせします。
メルヴェーユ様がこちらにお引越しされると思うので、快適に過ごせるようにきちんと整えておきますね。
テントウムシさんとくまさんのお世話をお願いします。
王様の召使のメリッサより」
「ま、まぁ」
「早く答えろ」メルヴェーユはいつもよりも低い声で言った。
怒りが滲んでいるのがアリューでにもわかった。
アリューデは背筋に冷たいものを感じながら、自分の女官を呼んだ。
女官は来なかった。いくら呼んでも来ない。
「あ、あら?どうしたのかしら?」
メルヴェーユは彼自身に仕える官僚を呼んだ。
官僚は淡々と、
「メリッサは現在行方不明となっております」
メルヴェーユは冷徹に、
「俺の召使を勝手に移動させた罪は、君の母国へと伝える。以上だ」
そう言って、部屋を出ていった。
アリューデは魔法の通信ですぐに兄のチシャへと連絡を取った。
チシャの怒鳴り声が部屋に響く。
『アホ!バカ妹!仲良くしろって言っただろ!』
「だって、メルヴェーユ様がメリッサを使って、てっきり国に悪いことをしようとしたのかと」
『どう考えたらそうなったんだよ!俺はメルヴェーユにメリッサを通して、鉱山での譲歩を引き出したかったんだよ!そのためには、お前がメリッサと仲良くなって、お前がメリッサに王様にお願いをしてくださいって言う必要があったんだよ』
「あ……」
自分の行いはまさに逆効果だったのだ。
『お前、王の召使に手を出したんだから、そっちの国だと居場所がないぞ。ハア。戻ってきたら、お前は家臣の嫁にするしかないな』
「私、メルヴェーユ様を愛してますの! 戻りたくありません!」
『だって、お前、俺の国にとってもメルヴェーユの国にとってもマイナスのことしかしてないんだぞ。もうお前にはちょっと宮廷の活動は無理そうだから、離婚して戻って、家臣と結婚して、家臣の領地で子ども産んでのんびり過ごすのが一番幸せだぞ』
「そんなー」
『あのなぁ、俺だから、お前を家臣の嫁になんていってるけど、役立たずどころか余計なことばかりするお前を修道院送りにする奴いるぞ。余計なことさせないために』
アリューデは途方に暮れてしまった。
「はあ」
通信終了後、アリューデは一人、椅子に座って頭を抱えた。
メルヴェーユにとってメリッサがそんなに大事だとは思わなかった。
「だって、見た目は子どもで、やってることも子どもで……。メリッサのどこがいいんですの?」




