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メリッサちゃんは王様のかわいい召使  作者: 桜雨実世


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帰るぞ(レイエ視点)

 俺はチビが起きている間はチビのポシェットにつっこまれ、チビが寝る時は抱き枕になっている。ちなみに、チビはテレサと一緒に寝る。


 チビもバケモンだが、よくガチのバケモンと一緒に寝ていられるなと感心する。


 チビはふきだまりの仕事を真面目にこなしていた。無給だぞ。よくやるもんだ。

 それに比べりゃ、エチカっちゅーアマは日がな一日酒場に入り浸ってやがる。どうしようもねーな。


 クソつまんねー日々が続く中、メルヴェーユからテレパシーが入った。


(メリッサを連れて城に戻ってこい)


 あいあい。


 チビの頭を掴んで、魔法で城まで飛行してもいいが、こいつは多分、今、行方不明扱いだよな……。


 ということは、いつの間にか城にいただとおかしいな。どうやって帰ってきたんだとか散々つっこまれちまうだろ。


 ってーことは城に正面から堂々と帰ったほうがいいな。


 俺はポシェットから飛び出し、ふきだまりの外へと行った。


 チビの、「あー、イモムシさん!どこ行くの!?めでしょ!」という叫び声が聞こえる。


 俺はイモムシからレイエに化け、ふきだまりに入り直した。


 すると、チビは涙をこらえながら、

「イッ、イモムシさん……」


「メリッサ嬢。イモムシは無事ですよ。それよりも、王様がお城に戻ってきたみたいなので、戻りましょう」


「イモムシさんがいないから戻れないの!イモムシさんを肌見放さず持っていろって王様に言われたから。あーん」

 そう言いながら、メリッサはテレサにしがみついた。


 そして、メリッサは俺に顔だけ向け、得意げに、

「そうだ。レイエさんに言わなきゃいけないことがあります。借金は内臓で払うといいですよ」


 お前、本当に言いやがるんだな、それ。


「ハハ。俺に借金なんてありませんよ」


「あるじゃない」「あるわよ」エチカとテレサが同時に言った。


 テメーら……。


「嘘はだめです!」チビがつけあがってんじゃねーか。


 エチカが、「テレサさん。紙とペン貸してよ」


 奴は紙に何事かを書いてから、メリッサに、

「メリッサちゃん。私、実はイモムシさんから書き置きを預かっているの」


「イモムシさんは字が書けるんですか?」チビは驚いて言った。


「多分、無理だけど。なにせまも、あ、妖精だったわね。そこはほら、以心伝心ってーの?」

 エチカは俺をちらっと見ていった。


 無理じゃねーよ、俺だってこっちの世界に数百年いりゃ文字の読み書きくらいできるに決まってんだろ。


 チビはエチカから紙を受け取り、読み出した。

「メリッサちゃんへ。僕がいなくなった時は大きなうんちをしたくなった時です。この間は失敗して町中でうんこをしてしまったので、今度は失敗したくないんです。だから、うんちをするためにはお城に戻らないといけません。お城に僕のトイレがあるからです。僕に先にお城に戻っています」


 おい、クソアマ!

 なんぼなんだって、そんなのを信じるわけなーだろ!


「あー、それなら仕方ないです。我慢はよくないです」

 信じやがって。


 チビはテレサを見て、

「王様にお土産を持っていきたいですが、私はお金を持っていません」


 あー、黒ジュースな。


 テレサは笑顔で、黒ジュースを取り出そうとしたが、チビは間髪入れずに、

「私の内臓で払うので黒ジュースをください!」


 おま、おまっ!なんぼなんだって、ジュースと内臓だと全然見合わねーぞ!もっと自分の内臓大事にしろよ!


「メリッサちゃんはずっと頑張ってくれたから、ご褒美としてあげる。ついでに、お小遣いもちょっとあげる。いっぱい頑張ったからね」


「お小遣い!わー。初めてもらいました」

 メリッサは目を輝かせて、テレサからジュースと小銭を受け取った。


 こうして、無事に城へと戻れることになった。


 メリッサは歩きながら、壁に向かって叫んでいるおっさんに向かって、

「おじ――」


「メリッサ嬢行きますよ!話しかけても見てもいけませんよ!」


 おい!怪しいやつかどうかくらいわかれよ!

 あいつ、昔、官僚として城務めしてたはずなんだよな。あいつ、一体、何あったんだよ!


 道を歩いていると、子どもがノグソを見ている。お前、前も見てたよな。いつまで他人のクソ見てんだよ。


 スラムのガキならどうせお前はクソ貧乏なんだろ。なら、働けよ。クソ見てたって一銭にもなんねーぞ!働いた金で、今日の飯でも手に入れろ。


 チビもチビで足を止め、クソを見だした。

「これは……ハエがたかってますね」

「うん。うんこの魔物のうんこを食べたハエだから、すごいハエになってる最中」

「わぁ。すごいハエ。うんこ」

「うんこの魔物のうんこの魔物のうんこの」

「魔物のうんこの魔物の」


 何言ってんだ、オメーら!

 そのクソ俺のじゃねーからな!


「行きますよ!メリッサ嬢」

 俺はチビの手を引き歩き出した。


 チビはとある露店の前で足を止めた。魔石屋だ。

 つってもスラム街の魔石屋だから単なるクズ石屋だな。


 メリッサはそこで黒い魔石の欠片を手に取った。

「これをください!」


「メリッサ嬢。そんなかけらどうするんですか?」

 その魔石はごくごく微量の邪気を放っており持っていると、人間に多少の不幸を発生させる。もっとも誤差の範囲内だけどな。


「イモムシさんへのお土産にします!イモムシさんはこういう黒くてばっちい石が大好きなんです」


 いらねーよ、んなもん。魔力もほとんどねーよーなもんを食ってもまずいだけだ。


 だが、チビはニコニコしながら、大事そうに、ハンカチに包み、懐にしまった。


 馬鹿だな、――こいつ。


 俺は城に戻るまでの間に、メリッサに城についたら言わないといけない言葉を教え込む。


 城の入口には、一人の騎士がいた。

「メリッサ!無事だったか!王様に言われて、君を待っていたんだぞ」


「ウィル様!お元気そうで何よりで」

「それはこっちのセリフだ!今までどこに行っていたんだ!」


「はい。レイエさんに保護されてから、ずっと二人で歩いてきました!」

 教えたとおりに言った。


 ウィルという騎士は俺を見た。

「私はしがない城の召使でございます」

 城のどこを探しても俺はいないんだけどな。だが、召使の名簿には乗っている。俺はそういう存在だ。


「そ、そうか」

 騎士は単なる召使のことなんてどうでもいいから、すぐにメリッサを連れて場内へと歩き出した。


 俺も後ろをついて行く。


 廊下を歩いていると、王妃もやって来て、メリッサに対して、

「あ、あんた、無事だったのね、良かった……」


 だが、すぐに騎士が王妃とメリッサの間に割って入った。

 そして、メリッサに口を開かせることなく、連れて行く。


「バイバイ、レイエさん!」

 チビは去り際に俺に向かって、無邪気に言った。


 俺は王妃を一瞥してから、その場を後にした。

 王妃は困ったような顔をしている。

 人間っちゅーもんは面倒なもんだよな。

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