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メリッサちゃんは王様のかわいい召使  作者: 桜雨実世


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テレサという女(レイエ視点)

 テレサは俺に向かって、

「レイエさん。てっきり消滅したのかと思いました。随分と魔力も回復されているようで。もしかして、メリッサちゃんから離れたんですか?」


 俺は若い人間の男の姿レイエになって言った。

「ちょっと王様に呼ばれましてね。俺がいない間に何があったんです?」


「さあ。ただ、とてもつもない聖なる波動でこの辺り周辺が包まれたので、もしかしてメリッサちゃんかと思って急いでやって来たんです。もちろん、城から派遣されるであろう調査隊が入れないように、このあたりは結界で囲んでいます」


「へー。とてもつもない聖なる波動……」

 俺は命拾いしたらしい。


 元村だった森は、聖なる力で満ちて、正直、居心地が悪すぎる。一方の村人たちは意識がないが生きているようだ。


 魔法でもかけられているように思う。テレサか。


 こいつ、一体何もんだ?

 単なる酒場のねーちゃんじゃねーのはわかってたが、ますますわからん。


 そして、メリッサの聖なる波動によって、村は浄化され、聖なる森と化したわけだ。


 邪神を降臨させたかった村人たちは、とんでもねーバケモンを降臨させたみたいだな。


 テレサはあたりを見回し、

「ここは元々はなんなんですか?単なる村でいいんですか?随分と谷底にあるからちょっと不思議で」


「どうも、邪神を信仰する連中の隠れ里みたいですよ。なんでも世界を無に帰すとか」


 テレサは納得したかのように、

「あぁ、千年以上前にそういう暗黒教団があって、根絶やしにされたはずなんですけど、こんなところに残っていたんですね」


「歴史に詳しいんですねー」


「えぇ。私もテレマスヴォルグアも暗黒教団と戦いましたから」


「へー。へ?千年以上前の話だとあんたは言ったよな?」


「言いましたけど。レイエさん、口が悪くなってますよ。今はお城の召使の男性に化けているのでしょう?」


「ハハハ。そうでしたそうでした。今はそんなことはいい。あんたはナニモンだ。俺が地上に出て数百年経った。俺は千年以上生きてんだぞ。これだって魔物としては古株だ。あんたはそれ以上だってーのかよ」


「確かに。こちらはレイエさんの正体を知っているのに、こちらの正体を明かしていないのは不公平ですよね」


 テレサは一人頷いてから、

「神と魔族のハーフです。正確には神と魔族の魂の欠片の融合体なんですけど。この体も魔法で作っています」


「な!?」俺は目を見開くくらいには驚いた。


「神にも天使にもなれず、魔族にも魔物にもなれない。天はすでになく、神も魔族も天使も滅びた。ただ、なりぞこないだけが生き残った。そういう物です」

「テレマスヴォルグアもか?」

「えぇ。彼は魔族と魔物と天使の魂の欠片をくっつけて生まれました」


 信じられねー。


「お前、前に私の死後はテレマスヴォルグアが魔石を守るとか抜かしてたじゃねーか!」

「えぇ。人間のふりをしているので、寿命があるフリをしないと」

「なーるほど」


 魔界では神は魔王と魔族たちとの戦いで、両者ともに滅びたと言われていた。

 魔界は今、小さい地下世界しか残っておらず、魔物だけがいる世界だ。


「帰る場所がないのは寂しいですね」テレサは微笑んだ。「あなたは帰る場所があるのに帰らないのですか?」


「ハハハ。俺はそういう郷愁はないんでね」


 帰れるわけねーだろ。


 魔物を食いすぎて、他の魔物どもから狙われるようになっちまったんだぞ。

 地上にいる魔物は食ってもまずいし、魔力も少ねーから、腹は満たされねー。だが、生きることはできる。


 俺は生きたい。


 テレサは村人たちを見回し、

「この人たちの記憶を元に、服と建物だけは修復してあげますか。食べ物は森の木の実がたくさんあるから困ることはないでしょうし」


「随分な芸当ができるもんですねー」


「ええ。これくらいは。私の魂は創世神から作られていますから。まあ、世界は作れませんけど」

 テレサは村人たちの記憶を魔法で読み取り、衣服や建物を修復していった。


 修復が終わると、やつは、

「メリッサちゃんの力が人を傷つけるものじゃなくて良かった。村人たちは全員、息があるし、どうも病気の類も治ってしまったみたい。強力な癒やしと浄化という天使らしい力ですね」


「やつの初級魔法は森一つ吹き飛ばしますけどね」


「それは天使だから仕方ないわ。やはり魔力の量が人間とは違うんです。さあ、メリッサちゃんを連れてもう一つお猿さんの芝居を続けなきゃ。行きましょうか、イモムシさん」


 俺は舌打ちした。

 猿芝居ってなんだよ。

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