変な村に迷い込んじまったなー(レイエ視点)
馬車がノロノロと山道を進んでいる。
チビはずっと窓の外を見ているから、俺もそれに付き合って、ぼんやりと眺めている。
そうして、猿型の魔物が現れやがった。
群れで出現し、人を襲う。
俺にしてみれば、クソ弱い魔物だが、よっしゃ、暇つぶし程度ににはなるだろ。
猿の魔法攻撃で、一発かまされた後、窓から放り投げだされたチビはパニックになりながら、走って逃げ出し、魔法をぶちかましやがった。
チビにしてみれば、初級魔法くらいだろうが、その威力たるや凄まじかった。
アホアホアホ!
猿以外に馬車も御者も消し炭にするつもりかよ!
帰れなくなっちまうだろ!
俺は必死にチビの魔法による被害を抑えるために魔法を使った。結界を使ったり、防壁張ったり。
「ありゃりゃりゃー!」
チビは悲鳴を上げながら、森の結構な範囲を吹き飛ばしやがった。
おい!
お前何してくれてんだよ!
魔物の俺が言うのもなんだけど、こいつはこいつで俺とは正反対のベクトルのバケモンだぞ!
「あわわわわー」
ヤバい!
テンパったこいつから、天の波動が強くなってやがる!
今でさえ、山くらい余裕で吹き飛ばすくらいの魔法使えるやつが、今ここで天使に覚醒したら、まずい!
聖なる波動で俺が消えるかもしれない!
ヤバイヤバイヤバイヤバイ!
メリッサは崖から転落。
天使の魔力のおかげでくたばることこそなかったが、変な野郎に見つかった俺たちは里へと連行された。
今の俺は臨時で作られた祭壇みたいな場所に安置されている。眼の前にはフルーツやら豚の丸焼きやらのご馳走が並んでいた。
そして、俺の眼の前で村人たちは歌っている。
「地上をーお滅ぼしーくださいー」
いや……俺、そんな力ねーよ?
そもそも、地上に生きとし生ける俺が、地上を滅ぼすことにどんなメリットがあるってんだ?
シャーマンは村人たちに向かって、
「長い時の中でとうとう闇のご眷属様が現れ給うた!世界を無に帰し、新たなる邪神様がご降臨なさる予兆だ!我々は尊き生贄としてこの身を捧げる栄誉を賜ったのだ」
世界が無に帰したら、邪神様が降臨なさるのか?どこに?世界ねーんだろ?
尊き生贄のつもりなのか、お前ら?
ガキの一人が、
「わーん!死にたくないよー!僕、生きてたいよー!わーん」とでかい声で泣き出した。
そ、そうだぞ!
魔物の俺が言うのもなんだけど、生きてるうちは生きてたほうがいいからな!
良かった。
この村にもまともな人間がいるんだな。
だが、ガキは案の定、大人たちから説教を食らっている。
シャーマンが俺に向かって、
「女でも男でもこの村の者はどうぞお好きになさってください」
おい、イモムシに人間を捧げやがったぞ!
どうすりゃいいんだよ!?
魔物として何が正解なんだよ。
あれか?
こういうシーンによくあるエロ展開が来たのか!?
おい、イモムシと人間のエロってなんだよ!どこ需要だよ!
早く、チビを連れて、この村から逃げ出すぞ!こんなアホくさい場所にいてられっかよ!
でも、チビが覚醒したらまずい。
チビが寝静まってから、魔法で村人を眠らせてから、連れて逃げるか。
クソ、なんで魔物の俺が穏便に済ませようとしないといけねーんだよ!
その時、メルヴェーユからテレパシーが入った。
――とっととこい!
んぁ。
危機感がある声ではあったが、どうせ魔物に襲われたから、ぶっ殺せとかだろ。
あいあい。
俺は村人たちをちょっと眠らせてからメルヴェーユの元へと向かった。




