嫌になっちゃいますね。(テレサ視点)
テレサはある人物に出会うために教会へと赴いていたが、入口からも窓からも入るつもりは毛頭なかった。
件の人物は仕事を一段落させ、一人自室で寛いでいた。
テレサはその人物――司祭の背後から話しかけた。
「本当に嫌になっちゃいますね。貴方がたという人たちは」
司祭は驚きの表情で振り返ると、声を荒げた。
「なぜ、お前がここにいるんだ!」
「貴方がたは自分たちこそ正義だと疑わず、一方で汚れ仕事はスラムの人間たちに押し付ける。もっともスラムの人間たちもそれでおまんまを食べることができるので万々歳なのですが」
司祭は警戒心を露わに、
「な、なんの用だ!お前如き下賤な女が来れる場所じゃないぞ!」
テレサは冷ややかに司祭を見つめつつ、懐から聖石の欠片を取り出した。
欠片とはいえまばゆいばかりに光り輝くそれを、司祭は驚愕の表情で吸い込まれるように見入っている。
「この聖石素敵だと思いません?」テレサはほくそ笑みながら言った。
「その石はどこで手に入れた!」
「ダンジョンですよ。この間、スラムで発生したダンジョン」
司祭は唾をゴクリと飲み込んだ。
「こちら側の本題に入りましょう。メルヴェーユ王の召使が王妃によって、修道院に送られました。その召使が送られた修道院はこちら側ではわかりません。でも、貴方ならすぐわかりますよね?修道院入りを拒否してください。そうしたら、この石を差し上げますよ」
「王にもコネクションがあるのか」
「そうなんです。権力者というものは常々、汚れ仕事はスラムに押しつけるものなのです。もしあなたが私の言葉を聞き届けてくださらないのなら、今後、教会の仕事は引き受けません。教会のお仕事があってもなくてもスラムの人々が救われることは一切ありませんので」
司祭はゆっくりと頷いてから、
「王の召使の修道院入りを拒否して、送り返せばいいのだな?」
「えぇ。その通りです。そうしたら、献上いたします。この聖石は欠片とはいえ、これさえあれば出世間違いなしですわね」
テレサはそう言って、司祭の部屋から出ていったが、教会の人間は誰も彼女の存在に気づくものはいなかった。




