お別れ
部屋に戻ると、執事様はとても暗い顔をしています。いつものことです。苦労が耐えないのです。
私はお部屋から、テントウムシさんとクマさんのぬいぐるみを持ってきました。
クマさんをフリフリしながら、
「あんた、今日は給料日でしょ!お金どうしたのよ!」
今度はイモムシさんをフリフリしながら、
「うるせー!俺には尊厳があるんだよ!金を使う尊厳がなー」
「あんた、またギャンブルに使ったねー!ギャンブルばかりしてるとレイエさんになっちまうよー」
「俺はそこまでじゃねーよ!ババアー」
イモムシさんをフリフリ!
「メリッサ!メリッサ!」執事様が言いました。
「?なんですか?」
「メリッサ。もう会えないかもしれないから、そのイモムシさんにお願いして、行く時も戻ってくる時もお城の人たちに見つからないように、お城の外にいる大事な人たちにお別れの挨拶をしてきなさい」
「イモムシさんはそんなことできないです。イモムシさんができるのは、黒いばっちい魔石を食べるだけです」
「いや、できると思うんだよ。本当は、すごい妖精だと思うんだよ」
私はイモムシさんをじっと見ました。
「やっぱりできなさそうな形です。だって、テントウムシさんみたいに可愛くないもん。それに、今、私は忙しいです。だから、レイエさんになったら駄目ごっこが終わったら、手紙を書くので、ポストに投函してきます」
「お前、お城の外で変な人たちと知り合いになっちゃたなー」執事様が頭を抱えました。
イモムシさんは私の手から離れて、私の頭を鷲掴みにして、窓の外へと飛び出ました。
私とイモムシさんは今、お空を飛んでいます。
これはもうお城の皆にバレにバレちゃってますよ!
でも、無事に酒場ふきだまりがある町へとやって来れました。
おっぱいとおパンツが見えそうなお洋服を着たお姉さんがお兄さんの袖を掴んで、「ちょっと気持ちよくならない?」と誘っています。
違うところだと、お兄さんたちがお兄さんをボコボコにしていて、
「おいおい!金が払えねーってどういうことだよ!内臓で払ってもらうぞ!」
内臓で払えるんですか!
私はイモムシさんに向かって、
「イモムシさん!これがお城の外です。いわゆる社会です!そんなことよりもレイエさんに内臓で払うといいって教えてあげなくちゃ」
もう会えないかも知れないから、執事様にお手紙を託そうっと。
男の子が一人しゃがんで、何かをじっと見ています。
私は近づいて尋ねました。
「何を見てるんですか?」
「うんこ」
視線の先には、すごく大きな山盛りのうんこが落ちていました。
男の子は言いました。
「このうんこをしたのはきっと魔物。そうじゃないと、説明できないくらいのうんこの量だ」
私もしゃがんで、うんこを見つめます。
「魔物のうんこ」
「そう。うんこの魔物」
「うんこの魔物!」
「この間、黒い巨大なイモムシの魔物がダンジョンに出たらしい。そいつがうんこの魔物だと思う」
心当たりがあります!
やっぱりうんこしたがってたんだ!
「そいつの子どものうんこだと思う!そいつは巨大だから、もっと巨大なうんこをするはず」
確かに!
ポシェットから飛び出したイモムシさんが、私の頭を掴んで、また空を飛びました。
ちょっと飛んだら、見覚えがある人がいたので、私は叫びました。
「あ、イモムシさん!降ろして!」
降りたのは、酒場ふきだまりの近くの道です。
この道ではいつも通り、おじちゃんがギラギラのお目々をしながら壁に向かって、
「うぉい、こりゃ!お前どっちにいるのはわかってんだぞ!お仕置きだぞ!」
と叫びながら、布団たたきで壁をベシベシしています。
私はお別れの挨拶をしようと、
「おじ――」
と言った瞬間、イモムシさんが私の頭を再度掴んで、酒場ふきだまりまで飛びました。
ふきだまりではいつも通り、テレサさんとエチカさんがいたので、私はお別れの挨拶をしました。
「私は王妃様の命令で、私の意思で修道院に行くことになったので、もう二度とお二人には会えないので、お別れの挨拶に来ました」
「ねえ、命令ってことは、メリッサちゃんの意思じゃないってことよね?王様は?」
エチカさんの言葉に、私は、
「私の意思で行くって命令されたから私の意思なの!王様は大陸会議に行ってるから、留守です」
「ふーん。留守につけ込んで王妃は地雷を踏みにいったわけだ。で、ポシェットに入ってるのが、イモムシなんだ」
「そうです!イモムシさんご挨拶してください!」
「きゅーきゅー」イモムシさんがやる気なさそうに言いました。
「いつもはもっと元気がいいのに……」
テレサさんが、
「ねえ、メリッサちゃん。どこの修道院に行くのかわかってるの?」
「わかんないです」
エチカさんが、
「メリッサちゃん。イモムシに王様へ直談判してもらいなさいよ。そいつ、多分、王様のところへテレポートくらいできるわよ」
「イモムシさんはそんなすごい魔法多分使えないです。キューキューしか言えないし。ねえ、イモムシさん!」
ふきだまりを出る時、テレサさんが最後に笑顔で、
「メリッサちゃん。ちゃんと守ってあげるからね」
「大丈夫です!修道院にお引越しするだけですから!」
私が修道院に行ったら、王様もきっと来るから大丈夫です。
お城に戻ったのですが、誰も私が外出したことに気づいてはいないようです。
もしや、本当にイモムシさんは偉い妖精さんなのでは?




