お兄様思いの王妃様(アリューデ視点)
王妃アリューデは兄からの命令によって、メリッサと親しくなる必要があったのだが、手紙や贈り物はすべて返され、お茶会の誘いも断られる始末。
「困ったわね……。どうして、兄上は私にメリッサと仲良くするように命じてきたのかしら?」
首をひねるも答えは一向にわからない。魔法通信を使用にも、チシャは忙しいらしく話す時間もないとのことだった。
大陸会議の主催国になったから、それも仕方がないのだろう。
今、メルヴェーユは大陸会議に行ったため、親しくなろうと思えば、できるだろうが、兄の目的がわからない以上、進んでやりたいとは思えない。
「! もしや、メルヴェーユ様はメリッサを使って何か良からぬことを企てているのでは?」
もうそうなったら、自分の国に不利益が……。
これ以上の不利益が起こったら……。
あまりの申し訳なさに、胃がキリキリと痛んでくる。
どうしたものかと考えた結果、
「そうだ! メリッサを今すぐ呼びなさい!」
メリッサは執事に伴われて、すぐにやって来た。
いつもどおり仮面にローブという異質な姿だが、今日はさらに、ポシェットに大きなイモムシが入っている。
ペットかもしれないが、なんと気持ち悪いものを持ち歩いているのだろう。
アリューデのイモムシへの視線に気づいた執事が慌てながら、
「こ、これは陛下から持っているようにと命じられた妖精なのです」
「へ、へー。何のために陛下はそれを持たせたの?」
「メリッサが乗船していた船が海賊たちに襲われた時、海賊たちが彼女をさらおうとしたので、念のため、護衛として持たせているのです」
「そ、そう。その気持ちの悪い緑色の虫は強いわけ?」
「さ、さぁ?私が、適当に一番安かったものを買っただけですから」
「あ、そ、そう」
アリューデは気を取り直して、
「良いこと?あんたはこれから、自分の意志で修道院へと行くのよ!もうあんたが行く修道院は決めておいたから!さっさと準備をしなさい!明日の朝には出発よ」
メリッサは微動だにしない。
「あんた、話を聞いているの?」
メリッサは頷いた。
執事が、
「メリッサは誰とも口を利いてはいけないと命じられておりまして……」
「じゃあ、下がりなさい」
アリューデは手で払う仕草をすると、執事はハンカチで顔を拭いながら、
「王妃陛下。あの、なんとか取り消していただけないでしょうか。陛下が、その……お怒りになるかもしれません」
「メリッサは自分の意志で修道院へと行くの!陛下だって納得せざるを得ないのよ!さっさと下がってちょうだい」
「……かしこまりましたが、どうなっても知りませんよ。行くぞ、メリッサ」
執事とメリッサは王妃の間から去った。
アリューデはにっこりと、
「これで完璧ね!母国への損害を事前に阻止できた!私って天才だわ!お兄様も褒めてくださるわね」




