第二十七話「幕が上がる」.2
ガイドーたちが本拠地とするビルは、都市ドヘイディアの中央にある。
クワハウの遺跡の発掘施設から始まったドヘイディアは、今ではこの農業惑星の首都となっている。その中の一番高いビルには、堂々とスペースパイレーツの紋章が掲げられている。
そここそが、この惑星の総督室となっていた。
「おい、お前ら」
「はっ! いかがされましたか、ガイドー様」
クロビアン人、トクハン人らで固められた執務室の護衛を背中に、ガイドーは街を見下ろす。
「今日は、何かイベントでもあったか?」
「イベント……? 公的なものは、なにもないはずですが」
「何か、パレードでも見えましたか?」
大きな窓から見下ろす首都には、都市特有の喧騒と、あまり多くはない娯楽施設の賑わいが見える。住民の大半がそもそも農業従事者であり、いくら自動化が進んだと言っても人間がやらなければならない作業は多い。
その結果、昼間の所業施設は、一般的な居住惑星に比べれば賑わっていない。
「街は、いつもと変わらないようですが」
「そうか。いつも通りに見えるか」
「はい」
ガイドーは、じっと眼下を見下ろしながら部下の言葉を聞く。
確かに、見た目はいつもの街と変わらない。だが、何か違う。誰かが騒いでいるわけでもない。街の中はいつもと変わらない。
「街の……外か?」
奇妙な気配。海賊稼業をやっていると、敵の気配や嫌な予感というものに敏感になる。
それは船を降りて政治家気取りの仕事をやっているときも変わらない。もっとも、ほとんどの政務というのは部下に任せ、武力行使が必要な時の書類くらいしか確認はしていないが。
「今日は遠征任務と拠点構築に関する報告は?」
「ドヘネットEの防衛要塞の建築に関する報告は上がっています。偶発的に侵入した連邦の艦隊と交戦し、要塞の一部に被害を受けつつ撃退に成功したということです」
「衛星軌道艦隊と、侵入者の捜索は?」
「突入軌道から着地箇所を想定し無人探査機を派遣しましたが、発見できませんでした。衛星軌道の艦隊からも、新たな侵入者、脱出者の存在は確認できていないと」
部下からの言葉に、ガイドーは黙って頷いた。
なぜこんな惑星にわざわざスペースシップ一隻で突入したのか。それもアクシャハラ・リアクター反応がわずかに確認された。
リアクターエネルギーを渡した誰かが、エネルギーの秘密を求めて侵入してきたか?
それとも連邦のスパイが無理やりにでも侵入し、ドヘイディア内にあるリアクターエネルギー生成工場を探しているのか。
「ならば、そのリアクターエネルギーはどこから得た?」
クロビアン人の同僚ガッソーが連邦に掴まった。そこから奪われたのだとしても、あまりにも解析と掌握が速い。
ヴァーグスからこの星まで十日、だというのに、ガッソーの逮捕通知からその半分程度の日数で敵は侵入してきた。
ガッソーを捕まえた者と、今この星にいる敵は別なのか。
考えるガイドーの耳に、扉を地下強く開く音が聞こえた。
「ガイドー将軍!」
閣下や総督ではなく将軍と呼ぶのは、武力行使を必要とする連絡が来た時だ。
少しでも気に入っていただけたら幸いです。
評価、感想、ブックマーク、どんなものでも大歓迎ですので、お気軽にどうぞ。




