第二十七話「幕が上がる」.1
アルヴァスの集落には、地球人には馴染み深いようで馴染みのない生物がいた。
『これ、ワイバーン?』
「でもドラゴンっていうより、なんか蝶見たいな色しているわね」
ボクたちの前に並んでいるのは、極彩色のトカゲだ。しかし、トカゲにしては鋭い頭部に、両腕部分には被膜が並び、脇の当たりには昆虫のような翅を三対持っている。
〈ドヘネック、こやつらはそう呼ばれておる。天を巡る星より現れた飛竜。空からやってきた帝国民を、初めて見た時はドヘネックと呼んだため、この天体をドヘネットと呼ぶようになったのだ〉
「へぇ、すごい牙。飛べるのよね?」
〈むろん。こやつらは、数こそ少ないが我らの航空戦力を担っておる。このオクヌスでは生態系の頂点に立つ一種での。この細身だが、我らと弓矢くらいならば軽々と運ぶぞ〉
甲高い声で鳴くドヘネック。この飛竜の数はわずか四頭だが、そもそも捕獲や調教が難しい。そしてこういった珍しい動物というのは、どうしても乱獲の対象となる。
だから、アルヴァス人たちはドヘネックを隠し続けてきた。
『すごい、カッコイイ』
小さいころもそうだけれど、今もカッコイイと思うものには憧れる。ドラゴン、ワイバーンなんて呼ばれるものは、いつだって憧れだ。
両腕の翼で加速し、両脇の翅でホバリングすることもできる。その巨体からは想像もできない速度、旋回能力を持ち、口腔内で発生させた超音波を収束させ、メスのように発射する。
『ルミス、乗っていい?』
――と文字を打つが、答えが返ってくる前にボクの手はドヘネックの顔に伸びていた。鋭い頭骨を撫で、顎の鱗を擦る。
グルルル、と鳴き声を上げるが、嫌がっているそぶりはない。むしろこちらに頭を近づけると、鼻先を触れてくる。
〈鼻先を近づけるのはこやつらの友好の証ぞ。やはりクワハウの友、すぐに気に入られたか〉
「フィオガって、ちょっとはちみつっぽい匂いを漂わせてるから、それで気に入られたのかな?」
『クワハウ人の匂いだね。彼らの遺伝子を持ったことで、体臭が変わったのかも』
ボクに倣って近づいてくるアナト。
彼女も手を伸ばすが、ガチンとドヘネックは歯を鳴らす。
「あ、アタシはダメみたい」
〈ふむ、やはりフィオガの体内にはクワハウの遺伝子があるということだから、やはりその違いがこやつらにはわかるのかもしれん〉
ルミスは慣れているのか、飛竜の首を撫でて背中に飛び乗る。翼を広げ、脇の翅を羽ばたかせて、少しだけ浮き上がる。
すでに森の中を通ってかなりの数が都市付近まで潜伏している。残っているのは、ルミスをはじめとした空挺部隊と、ボクらだけだ。
『行こう、ガイドーを倒しに!』
四頭のドヘネックが飛びあがると同時に、ボクとアナトの乗るモノホイールも走り出した。
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