第二十六話「友として」.3
弓を受け取ったアナトは、タウホチャー号の近くで練習していた。他のアルヴァス人たちと歩調を合わせるためにも、すぐに出撃というわけにはいかない。
ちょうどいいと、彼女はアムリット・エンジンのバックパックを借りて、矢を放つ。
「おおっ、すごい。ライフルなんかより格段に威力高いんだけど」
『実弾より速度も威力もあるのは、近接武器ならわかるけど、遠距離武器となると不思議だよね』
「一番不思議な武器を使ってるフィオガが言う?」
クスクスと笑う彼女は、もう一度矢を番える。腕を通して伝わったアムリット・エネルギーが弦と握りから弓全体に伝わり、鏃を鋭く、矢羽根に推力を与える。
「残るの? この星に」
『わからない』
即答はできなかった。数秒おいてから表示した言葉に、すでに矢を放っていた。それは見事に的の中心を射抜き、立てかけていた木に深く突き刺さる。
「ルミスの気持ち、わからないわけじゃないよ。アタシもフィオガが現れて、事件に巻き込まれて、宇宙に行こうってなった時は浮かれたし」
『独立戦争』『そこまで考えていたわけじゃないんだ』
ガイドーさえ、アクシャハラの技術さえと思って、アルヴァスに協力を仰いだ。その結果、単なる講義活動レベルだった話が、独立戦争にまで話が進んだ。
『ただボクは、取り戻したかっただけなのに』
「じゃあガイドー倒すのも諦めて、ヴァーグスに帰ろっか?」
『それはできない』
アナトの問いかけには、即答だった。
コンゴーとの約束、両親の敵討ち、決起しようとするアルヴァス人を見捨てられない。
理由はいろいろある。けれど何より――。
『また動けないボクでいたら、また何もできないままでいたら』
震える指で、文字を起こす。
『ボクは、もう二度と進めなくなる』
声も上げられず、走り出すこともできず、瓦礫の中に埋もれように窒息していく。
それだけは、どうしても受け入れられない。
「じゃあ、ルミスたちとは、しっかり話し合わないと。あのヒトたちが傷ついたら、どうせまたフィオガ、悲しい顔するんだもん」
『そんな顔、したことあった?』
「視てはないけどわかる。アタシがガッソーに掴まった時とか、雰囲気だけでもやばかったんだから」
グワーッ! と彼女は髪を逆立てるようなしぐさをする。怒りと、悲しみがないまぜになったあの時、ボクはどんな顔をしていたのだろう。
「ルミスだって最初に言ってたじゃん。帝国市民を傷つけてほしくないって。独立戦争とかおっきいこと言ってるけど、ここ辺境も辺境。共和国帝国間紛争の端っこなんだから。そこに中立地帯のひとつくらいあってもいいと思うわよ」
『それが、ルミスの言っていた自治独立』
「フィオガはハンターナイト、銀河の平和を守る自由気ままに放浪する狩猟騎士! 小さいことでうじうじ悩まない! 助けたいものがあったら全力で!」
『できるかな。ボクに』
「できなかったらアタシが代わりにやってあげるわよ! これがあれば、アタシだってハンターナイトとして活躍できそう」
ウキウキと喋る彼女の明るさに、何か救われた気がした。
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