第二十六話「友として」.2
翌日、アルヴァスたちの工房にボクはいた。
彼らが使う弓には神聖刻術が刻まれ、アンブロス、アムリット、アクシャハラ関係なく、エネルギーを循環させ強化する機能が備わっている。
これは、ボクのプレートブレードと同じ効果を持っており、弓矢でありながら帝国の装甲車はもちろん、打ち込む場所によっては戦艦だって破壊できる。
「こうして聞くと、あいかわらずぶっ飛んでるわよね。クワハウ由来の技術って」
『そりゃ、かつては宇宙を支配しかけた一族だからね』
「なおさら不思議よ。それだけの力があったのに、何も支配せず、ひっそりと暮らして、時々誰かの手助けをする。穏やかだけど、退屈そう」
『退屈じゃない時間が、長すぎたのかもね』
それだけの高度文明。対立する相手も相手で、それを討ち滅ぼしてしまえば、止める者は何もない。その結果、破壊と殺戮の日々に陥ったとしてもおかしくはない。
あふれ出る闘争本能には、覚えがある。
『クワハウの闘争本能は、意図的に抑え込まれている。戦っている間はいいけど、そのあとが怖くてたまらなくなる。あの時、君を巻き込んで殺していたのかもしれないと思うと、余計に』
ガッソーにアナトが人質に取られたとき、ボクは我を忘れ、闘争本能に飲まれた。
幸いすぐに自己を取り戻し、彼女を助けることもできていた。
だからこそ、恐ろしく思う。
クワハウの力は、恩恵だけで済ませていい話じゃない。
〈のう、フィオガ〉
『どうしたの、ルミス』
〈そなたが少なからずクワハウの力を恐れ、自制しているのは、理解しておる。それでなお、頼みたい〉
真剣な面持ちの彼女に、ボクは完成した弓をアナトに預けて居住まいを正す。
〈この先、帝国とアルヴァスが対立することになるのは、もともと時間の問題で、決してそなたには何の責も、負うべき咎もないことを、先に言っておく〉
――わ、わかった。
心の動揺がうまく文字にならず、ひとまず頷いた。
〈それでなお。そなたには、ガイドーを打倒し、アクシャハラの力に関するデータ全てを回収できたとしても、わらわとともに、ここで戦ってほしい〉
『ここで?』
「ドヘネットCに、残ってほしいってこと?」
〈簡潔に言えばそうである〉
その言葉は、全く予想外というわけではなかった。ただ、本当に言われるとは思っていなかった。
同じクワハウの友、技術提供はもちろん――。
〈わらわたちは、これから自治独立権獲得のための紛争状態になりえるだろう。そうなった時、クワハウの友が一緒ならば、心強いことこの上ない〉
『それこそ、惑星単位での、独立戦争になりかねないか』
〈この星は、元はわらわたちしか住んでおらんかった。今更帝国の民全員に出ていけなどということはできぬが、巻き込まぬという保証もない〉
ルミスの神秘的な光を伴った目が、ボクの顔を覗き込む。
〈そなたは、我らと許に残ってくれるか?〉
問いかけに、ボクは答えがなかった。
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